毎年2月頃になると「確定申告」という言葉を聞くことが多くなります。しかし、そもそも確定申告とはどのような手続きなのかわからないという人もいるかもしれません。今回は、確定申告とは何か、申告が必要なケースや申告のしかたなどをわかりやすく解説します。
確定申告とは? 概要をわかりやすく解説!
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に仕事などで得たお金の合計額を計算し、自分が納めるべき税金を申告する手続きのことです。自分が得たお金から必要経費を差し引いたものを「所得」といい、会社からもらった給料(給与所得)や事業で得たお金(事業所得)などがあります。
確定申告をするには、自分で申告書を作成し、納税地を所轄する税務署へ提出する必要があります。ただし、確定申告は所得がある全員が対象ではなく、確定申告が必要な場合と不要な場合があるため、自分が必要かどうか把握することが大切です。
確定申告が必要なケースと不要なケース
確定申告は所得があれば必ず必要というわけではありません。会社員の場合は年末調整により1年間の税金が確定するため確定申告が不要なことが多いですが、状況によっては確定申告が必要になります。ここでは、どのような場合に確定申告が必要で、どのような場合に不要になるのかを解説します。
確定申告が必要なケースとは?
確定申告が必要なケースは、個人事業主やフリーランスなどが事業により所得を得た場合です。ほかにも、家賃収入などの不動産所得がある場合も該当します。
ただし、会社員でも以下のようなケースでは確定申告が必要です。
・給与の年間収入金額が2,000万円を超える場合
・給与や退職金以外の所得が20万円を超える場合
・2ヶ所以上の会社から源泉徴収された給与を得ている人で、年末調整していない給与収入と給与や退職金以外の所得との合計が20万円を超える場合
そのほかにも、高額の医療費がかかり医療費控除を受けたい場合や、災害や盗難などの被害に遭い雑損控除を受けたい場合などは、確定申告をすることで一定の金額の所得控除が受けられます。
また、初めて住宅ローン控除を申請する際にも初年度のみ確定申告が必要です。2年目以降は、会社の年末調整で手続きできるため確定申告の必要はありません。
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確定申告が不要なケース
会社員の場合、確定申告が不要になるケースが多いでしょう。また、個人事業主やフリーランスでも課税所得がゼロになる場合は確定申告が不要です。次のようなケースでは確定申告が不要になります。
・一つの会社から給与を得ていて給与以外に収入がなく、会社が年末調整を行った場合
・二つ以上の会社から給与を得ていて、メインとする本業の会社で年末調整を済ませ、副業として働いているもう一つの会社の給与が20万円以下の場合
・会社員が副業によって得た事業所得や不動産所得などが20万円以下の場合
・個人事業主やフリーランスで、所得の合計額から48万円の基礎控除額を差し引いた金額が0円以下の場合
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確定申告には「青色申告」と「白色申告」がある!
事業所得や不動産所得がある場合の確定申告の方法には、「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。ここでは、それぞれの申告方法の違いを解説します。
65万円の特別控除が受けられる「青色申告」
青色申告とは、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表が作成可能なレベルの複式簿記の原則に従って正しく記帳することで、さまざまな税務上の特典が受けられる制度のことです。ただし、青色申告をするには、事前に納税地の税務署に「開業届」と「所得税の青色申告承認申請書」の提出が必要です。
青色申告で受けられる主な特典の一つに「青色申告特別控除」があります。貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付して期限内に申告すれば、最高55万円の控除が受けられます。さらに、e-Taxによる電子申告を行えば65万円の控除が可能です。
そのほかにも次のような特典があります。
・赤字の場合は以降3年間繰り越して所得から控除できる
・生計を一にする家族や親族に適切な金額の給与を支払った場合、必要経費に算入できる
・令和4年3月31日までに取得した30万円未満の減価償却資産を、一定の要件を満たせば一括経費に算入できる特例制度が適用される
簡単な記帳で手続きができる「白色申告」
青色申告を申請していない人が行うのが「白色申告」です。白色申告は、青色申告に比べて収支の記帳を簡単な方法で済ませられます。以前は、所得金額により記帳や帳簿保存が不要だったため、手軽な申告方法として知られていました。ところが、現在では所得の金額にかかわらず記帳や帳簿の保存義務があります。
白色申告は事前に税務署に届出方法の申告をせずに済むため、副業で一時的な収入があった場合や開業して間もない場合などにおすすめの申告方法です。
確定申告の仕方をわかりやすく解説!
確定申告は毎年決まった時期に行う必要があります。一通りの流れを経験して慣れてしまえば、次回からは悩まずに申告できるでしょう。ここでは、確定申告の手順について解説します。
確定申告の期限
確定申告は1月1日から12月31日までの1年間の所得について、翌年の2月16日から3月15日までに行い、正しい所得税額を確定させる必要があります。期限が過ぎてしまった場合でも確定申告をすることは可能ですが、期限後申告として取り扱われ、無申告加算税が課される場合もあるため気をつけましょう。
また、青色申告の場合は、申告期限を過ぎると「青色申告特別控除」の控除額55万円あるいは65万円から、最大10万円までに減額されてしまいます。せっかくの青色申告制度の特典がムダになってしまうため、早めに申告準備に着手することをおすすめします。
一方、税金の納め過ぎや所得控除などによって、納めた税金が戻ってくる還付申告の場合は、確定申告期間とは関係なく翌年の1月1日から5年間申告が可能です。
確定申告書の作成方法
確定申告を作成するには、手書きのほか、パソコンやスマホで必要事項を入力して作成する方法があります。手書きの場合は、税務署で確定申告書の用紙をもらうか、国税庁のホームページからダウンロードして印刷したものに記入します。
パソコンやスマホで作成するなら、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を活用すると便利です。数字を入力すればシステムが自動で計算してくれるため、計算ミスも起きません。初めて確定申告する人にもわかりやすく、入力マニュアルや必要な準備などが掲載されています。
青色申告や白色申告のための帳簿の記帳や財務諸表の出力なら、会計ソフトを活用すれば手間なく作成でき、申告までスムーズに進められるのでおすすめです。
確定申告の流れ
確定申告の流れは次のとおりです。
1.必要書類を準備します。(源泉徴収票、各種控除証明書、医療費の領収書、マイナンバーがわかる書類など)
2.確定申告書を準備します。(確定申告書AまたはB。申告書Aは、給与所得、雑所得、総合課税の配当所得、一時所得を得た人向けの用紙で、申告書Bは所得の種類に関係なく誰でも使用できます。)
3.申告内容によって必要な付表や計算書を用意します。
4.確定申告書を作成します。
5.確定申告書と添付書類を提出します。(郵送、持参、e-Taxの三つの方法があります。)
6.現金、口座振替、インターネットからの電子納税、クレジットカード、コンビニ納付などで納税します。還付金がある場合は、指定の口座に振り込まれます。
まとめ
確定申告は、納税の義務を確実に果たすため、自分で正しい所得税額を申告して納付するための手続きです。また、所得税を多く納め過ぎた場合は、還付請求により取り戻すことが可能です。確定申告とは無縁と思っていても、所得税法上、確定申告が必要なケースがあるため、自分が申告する必要があるかどうか確認することが大切です。申告を行う必要がある場合は、早めに準備をして期限内に手続きを行いましょう。