屋根を60年も守り続ける! SDGsな家づくりを可能にする注目の建材とは?

あらゆる分野でいま注目されているSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)…SDGs。多くの素材を扱う、住宅にとって密接に関係します。

そこで、今回は超長寿命の防水シートに100%天然素材の長尺シートなどSDGsを可能にする注目の建材をご紹介します!

長期優良住宅を支える「縁の下の」ならぬ「屋根の下のルーフィング」とは?

2009年に施行された「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」により、近年注目が高まっている長期優良住宅。その長期優良住宅を支える新建材が登場しているのをご存じでしょうか? それは「ルーフィング」といわれる屋根の防水シート「屋根下葺材(やねしたふきざい)」です。

今回は、防水素材メーカーとして100年以上の歴史を誇る田島ルーフィング株式会社に新建材について取材してきました。

「一般的な戸建て住宅の場合、屋根には瓦や金属製の屋根材がふいてありますが、それだけで雨水は防ぎ切れません。風の吹き込みなどで屋根材の裏側にどうしても水が回ってしまうからです。そうすると、木造住宅の場合は下地の木材が濡れることで腐って雨漏りが発生します。このため、屋根の下地の上に防水シートとなる屋根下葺材を貼って、屋根材の裏側に入り込んだ雨水が下地に回らないようにする必要があるわけです。この屋根下葺材は住宅建築には欠かせない建材の一つで、どんな家の勾配屋根でも必ず貼ってあります」(田島ルーフィング株式会社住宅営業部住建企画課・正木英一郎課長)

この屋根下葺材の素材はアスファルト。アスファルトはエジプトのピラミッドの石組みにも防水材として使われたことが知られている歴史ある建材です。そのアスファルトを基材となる紙に染み込ませてコーティングしたのが汎用的な防水シート「三星Pカラー」という商品です。

三星Pカラー
勾配屋根に使用される屋根下葺材として圧倒的な実績を誇る「三星Pカラー」(画像提供:田島ルーフィング)

「アスファルトが防水シートに向いている理由は、熱が加わると軟らかくなる点にあります。防水シートとして使われる屋根下葺材は、まずはタッカーと呼ばれるホチキスのような工具で屋根の下地である木材に止め、その上に屋根材を載せてくぎな三星Pカラーどで止めます。そうすると屋根下葺材に穴を開けることになります。屋根下葺材の基材は紙ですから、紙に穴を開ければそこから水が入って行ってしまいます。アスファルトはくぎ穴にまとわり付いて熱が加わると、軟化流動という軟らかくなって流れるような動きをしますので、くぎ穴を閉めていってくれます。そのため昔から防水材としてアスファルトが重宝されてきたわけです」(正木課長)

耐用年数60年!! ライフサイクルコストを抑える長期耐久性の屋根下葺材

住宅建築に欠かせない屋根下葺材に長期高耐久性を持たせた新商品が誕生したのは、長期優良住宅に関する法律が施行された翌年の2010年です。

マスタールーフィング
アスファルトの酸化劣化を抑えることで60年と長寿命となった「マスタールーフィング」(画像提供:田島ルーフィング)

「一般的な住宅の雨漏りの瑕疵担保保証期間は10年ですが、いまは大手住宅メーカーをはじめとして長期優良住宅が推奨されているため、屋根下葺材にもより長期にわたり高耐久なものが求められるようになりました。そのニーズに応えて開発したのが『マスタールーフィング』です。マスタールーフィングは劣化防止層でアスファルトを挟み込む多重構造にすることで、アスファルトの酸化劣化を防ぎ高耐久性を持たせた商品です。アスファルトの耐久性は柔軟性(粘弾性)で見るのですが、マスタールーフィングの場合、柔軟性がほぼ落ちることなく60年もの長寿命を保つことができます」(正木課長)

防水性能の経年変化
※田島ルーフィングが実施した『促進老化試験及び経年実棟調査』を元に作成(画像提供:田島ルーフィング)

「屋根材として最も長寿命な瓦は60年以上の耐久性があります。その瓦に合わせ60年の耐久性を持たせた屋根下葺材を開発することで途中のメンテナンスが不要になりました。つまりマスタールーフィングを屋根下葺材として使えば、長期的に見るとライフサイクルコストを大幅に抑えることができるというわけです」(正木課長)

カーボンニュートラルを実現する再注目の床材「リノリウム」

リノリウム
画像提供:田島ルーフィング

次にご紹介するのが、環境に優しい建材として世界的に再注目されているリノリウムです。

リノリウムは1800年代後半にイギリスで発明されたシート状の床材で、現在床材として主流の塩ビ(塩化ビニル樹脂)性のクッションフロアーが登場する前から、舞台や学校などの床材として活用されてきた建材です。一見すると塩ビのクッションフロアーのように見えますが、実は100%天然素材からできています。

「リノリウムの長尺シートとしての歴史は長く、150年以上前から床材に利用されてきました。主原料は1年草の亜麻から採取される亜麻仁油。その他の原料もロジン(松やに)や木粉、石灰石、天然色素、ジュート(植物由来の天然繊維)などで、72%は再生可能な材料で43%はリサイクル材料です。また廃棄時に埋めれば土に還る性質(生分解性)を備えています。さらに、主原料の亜麻は成長するときに大量の二酸化炭素(CО2)を吸収するため、製造過程で排出されるCО2と相殺してもマイナスになります。つまり床材の中で唯一カーボンニュートラルを可能にする商品といえます」(田島ルーフィング株式会社床材営業部床材商品企画室・壽嵜(すさき)善文室長)

リノリウム
天然由来の色素でカラーバリエーションが豊富なのもリノリウムの特長の一つ(画像提供:田島ルーフィング)

田島ルーフィングが現在扱っているリノリウムはオランダのフォルボ社製の「マーモリウム」というブランドのもの。天然素材から作られるリノリウムは環境に優しいだけでなく、抗菌効果、抗ウイルス効果、脱臭効果、抗アレルギー効果などがあるうえ、耐摩耗性や断熱性にも優れているため、大きな病院やクリニック、幼稚園や保育園などに多く採用されているそうです。カラーバリエーションも豊富で、日本で取り扱いがあるのは80色程度ですが、世界では130色以上が展開されているというから驚きです。

まとめ

住宅の寿命を伸ばす長期高耐久の防水シート「マスタールーフィング」に、カーボンニュートラルを実現する再注目の床材「リノリウム」。どちらもSDGsに貢献する建材と言えそうです。これらを活用して、住宅の長寿命化と高い環境性能を両立させる家づくりをぜひ検討してみてください。

【取材協力】
田島ルーフィング

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