戸建て住宅と一口に言っても、新築や中古、注文住宅、建売住宅などさまざまな種類があります。ここでは、注文住宅について基本から解説していきます。人生最大の買い物といわれるマイホームづくりだからこそ、成功させるためのポイントをしっかり押さえておきましょう。
注文住宅とは何か
そもそも注文住宅とはどのようなものなのでしょうか。まずは注文住宅の概要から解説していきましょう。
注文住宅とは
注文住宅とは、施主が選んだ施工会社と建築工事請負契約を締結して建築する新築住宅を指します。家と土地をセットで購入するわけではないため、建てるための土地をすでに所有しているか、新たに購入する必要があります。建設済みの住宅を購入する建売住宅は、間取りやプランが当初から決まっているのに対し、注文住宅は間取りや使用する設備、材料などを自分の好みで選びたい人のためのプランです。
注文住宅は大きく分けて、何から何まで自分たちで自由に決められるフルオーダー住宅、間取りや設備などを決められた基本仕様のなかから選ぶセミオーダー住宅の2種類があります。
建築条件付き土地
住宅を建てるための土地を購入するにあたっては、「建築条件付き土地」というものもあります。これは、土地の売主が指定した建築会社と建築工事請負契約を結ぶことを条件として、土地を売買する形態の宅地のこと。建築条件付き土地では、売主指定の会社と一定期間内に請負契約を締結することも条件となっている場合が多く見られます。施主側で建築会社を自由に選べず、注文住宅を建てるための土地としては適さないようなケースもあるため、注意が必要です。
統計から見た注文住宅
国土交通省が公表している「令和2年度 住宅市場動向調査報告書」によると、注文住宅の購入価格(土地代込)は全国平均で4,606万円。注文住宅を建てた人の世帯平均年収は全国平均で738万円という結果でした。三大都市圏に限って見ると、注文住宅を建てた世帯の平均年収は804万円となります。これは、分譲マンション(全国)の879万円に次ぐ高さとなっています。注文住宅の1世帯あたり平均居住人数は3.3人、個別回答では「3人」が最も多いことから、ファミリーでの居住が多いと考えられます。
注文住宅と建売住宅を比較すると
注文住宅とよく比較されるのが建売住宅です。続いては、両者それぞれの特徴について見ていきます。
建売住宅(分譲住宅)とは
新築戸建てのタイプとしては、注文住宅のほかに建売住宅があります。建売住宅は、不動産会社などが仕入れた土地に住宅を建設し、土地と住宅をセットで販売するタイプの住まい。また、売主である不動産会社が大きなまとまった土地を取得・開発し複数の住宅を建設、土地・住宅をセットで1戸ずつ販売するものは分譲住宅と呼ばれます。元は開発する土地の大きさによって建売住宅・分譲住宅と使い分けされてきましたが、最近では同じような意味で使われる場面が増えています。
費用から見る違い
ここからは、注文住宅と建売住宅の違いについて見ていきましょう。まず費用面から考えると、注文住宅のほうが高くなる傾向にあります。
注文住宅は間取りや設備などの自由度が高いのがメリットですが、こだわり過ぎるとコストが高くなりがち。こだわるポイントを絞ったりメリハリをつけたりすることで、注文住宅であってもコストを抑えられる場合があります。
一方の建売住宅は土地・建物がセットで仕様もほとんど決まっているため、比較的リーズナブル。前章で紹介した国土交通省の報告書によると、三大都市圏における分譲戸建住宅の平均購入価格は3,826万円で、注文住宅に比べて約780万円安くなっています。
設計の自由度から見る違い
続いて、設計の自由度という面から考えると、圧倒的に注文住宅に軍配が上がります。建売住宅は施工会社による設計で、建設済の物件を購入するのが基本であり、間取りや設備の選択の余地はあまりありません。
建売住宅のなかには建築前から販売をスタートするものもありますが、建築前から施主が間取りや素材などを希望することはほとんどできません。地域の工務店が手がける建売住宅であれば、建具や壁紙などの色くらいは選べる場合もあるものの、自由度は高くないといえるでしょう。
立地から見る違い
注文住宅と建売住宅は立地面においても違いが見られます。注文住宅だと、住宅建設を依頼する前にあらかじめ自ら土地を取得しなければなりません。
対する建売住宅では、売主であるプロの不動産会社などが土地を仕入れるため、好立地な物件が多い傾向にあります。ただし、大規模な宅地分譲で供給される分譲住宅は駅から遠い場所や郊外に立地するケースも多いため、一概にはいえません。
入居までの期間から見る違い
注文住宅は、大まかに資金計画→土地の取得→施工会社の決定→地盤調査→設計・建築→引き渡しといった段階を踏む必要があり、注文住宅を建てようと決めてから入居までに、1年から1年半程度かかるのが一般的です。一方、建売住宅は完成済み物件を購入すれば、時間を要するのは住宅ローン審査などしかありません。購入から数週間〜数ヶ月程度でスピーディーに入居可能なため、引っ越しまでのスケジュールが組みやすいといえます。
注文住宅の依頼先
いざ注文住宅で家づくりをするとなった場合、どこに頼めばいいのかわからないという人も多いことでしょう。注文住宅の依頼先として一般的なのは、(1)ハウスメーカー、(2)工務店、(3)設計事務所です。この章では、代表的な3つの依頼先について順番に解説していきます。
ハウスメーカー
テレビCMなどで世間に知られ、全国的に展開する企業も多いのがハウスメーカー。家の設計・施工どちらも同じ会社で手がける設計施工一貫方式を採っています。一部の建築資材は規格化しており、自前の設備で生産可能。生産〜設計〜施工が工業化・効率化されているため、品質にムラが生じにくいのが特徴です。
また、ハウスメーカーは有名な大手企業が多く、完成後に施工会社が倒産してアフターサービスが受けられないといった事態が起こりにくいのもポイント。土地探しや資金計画といった段階からサポートしてくれる会社がほとんどなので、気軽に注文住宅を検討できるのはメリットといえるでしょう。
一方、設備や素材が規格化されているので、設計の自由度は相対的に低め。大手企業のサポートを受けながら進められるという安全・安心を購入する側面もあり、価格は高くなる傾向にあります。
工務店
工務店はハウスメーカーや設計事務所に比べて利益率が低い傾向にあり、価格を抑えられる点が最大の特徴。設計施工を一貫して手がける工務店も多いですが、なかには設計を外部委託している会社もあります。地域に根ざした中小の工務店であれば、地元密着でキメの細かなサービスを期待できるのもポイントです。
ただ、工務店は抱えている職人さんの技術力によって、品質に差が生まれることもあるため注意が必要です。一般的な工務店は大工仕事を生業としている場合が多く、設計よりも施工に強みがあります。デザイン性や提案力を求める人は、工務店よりも次に紹介する設計事務所のほうが向いているかもしれません。
設計事務所
国家資格の建築士資格を有する建築家が所属する設計事務所は、なんといっても設計力が強み。注文住宅を依頼した際の設計自由度の高さは、3つの依頼先のなかでも随一です。施主の細かな要望にも対応してくれるため、こだわりの詰まったオリジナルの注文住宅を建てることが可能です。
設計事務所は設計専門であるため、注文住宅を依頼する際には「設計管理業務委託契約」を締結します。施工は設計事務所と付き合いのある施工会社に別途依頼する必要があり、施工会社とも工事請負契約を締結するのが基本です。自由度が高い反面、設計事務所や建築家へ支払う設計料が上乗せされるため、全体コストは高くなりがちです。
まとめ
自由度が高く、自分が考える理想の住まいを形にできる注文住宅は、まさに「夢のマイホーム」といえます。注文住宅の特徴やメリット・デメリット、建売住宅との違いなどをしっかりと理解したうえで、失敗のないマイホームづくりを実現していきましょう。
(最終更新日:2022.02.16)