多くの住宅ローンでは、借入れの際に団体信用生命保険に加入することを義務付けられます。最近では、団体信用生命保険の保障範囲が多様化しています。一般的な生命保険に似た保障内容のものもありますが、どのように使い分けをしたらいいのでしょうか?
団体信用生命保険とは
・団体信用生命保険の保険金は銀行やローン会社に支払われる
団体信用生命保険は、住宅ローンの借入れをしている人が返済中に死亡または高度障害になった場合に、保険会社から金融機関に保険金が支払われ、住宅ローンの残高が清算されるというものです。
死亡・高度障害の場合の保障については、加入が義務付けられているものが多く、そのため、保険に加入できない場合には、住宅ローンの借入れができないということもあります。
保険料に相当するものは、銀行またはローン会社が生命保険会社に支払います。一般的に借入者の負担はありません。全期間固定金利の【フラット35】については、健康上の理由で団体信用生命保険に加入できない人も借り入れすることが可能です。その場合の借り入れ金利は、団体信用生命保険に加入しない分として、0.2%低くなります。(新機構団信付き【フラット35】との比較から算出)
・多様化する保障内容
死亡・高度障害の場合だけなく、がんと診断された場合に残高がゼロになったり、病気の種類に関係なく働けない状態になった月には返済額分が保障されるなどの団体信用生命保険もあります。
保障範囲が広くなれば、その分コストもかかるので、金利が上乗せされることがほとんどです。また、例えば、同じがんと診断された場合が保障の対象であっても、すぐに残高がゼロになるもの、その月の返済額分が保障されるものなど、その内容は金融機関によって異なるので、必ず内容を確認して理解しておきましょう。
生命保険と団体信用生命保険の違いは?
一般的な生命保険と団体信用生命保険はどちらも生命保険ですが、下表のような違いがあります。
その他、特に異なる点として、死亡時の保険金の取り扱いや疾病の保障内容の違いがあります。
・死亡時のお金の流れと税金
団体信用生命保険の場合は、借入者が死亡すると前述の通り、保険会社から銀行またはローン会社に残高相当額の保険金が支払われ、それをもって住宅ローンの残高が清算されます。借入者のところに入金されることなく残高がゼロになり、住宅ローンの契約もなくなるので、特に相続の手続きは必要ありません。
一方、一般の生命保険で備えていた場合には、保険金が借入者の家族(受取人)に支払われます。その保険金は相続税の対象になります。また、住宅ローン契約は親族などが相続して引き継ぐことになり、相続の手続きが必要です。保険金の使い道は自由です。保険金で住宅ローンを完済することもできます。必ずしも住宅ローンの支払いにあてる必要はありませんが、住宅ローン契約を相続した人がその後も支払いを続けることになります。
・疾病の場合の保障内容
一般の医療保険の保障内容は、主に入院1日あたり1万円などの入院給付金と、手術を受けた場合の手術給付金です。がん保険は、入院給付金、手術給付金に加え、がんと診断確定した場合には、診断一時金が支払われるというものが主流です。
一方、団体信用生命保険で疾病が保障対象になっているものは、がんと診断確定されたら残高がゼロになる、所定の疾病等で12ヶ月就業不能が続くと残高がゼロになるなど、残高相当分またはその月の支払額相当分が支払われるものが主流です。
団体信用生命保険と生命保険はどう使い分ける?
・死亡保障の使い分け
団体信用生命保険は住宅ローンの借入期間中に保障されるもので、保障額はその時点の住宅ローンの残高です。一方、生命保険の場合には、保障期間は自分で決めることができます。特に住宅ローンの返済が終わった後の保障については一般の生命保険で備える必要があります。また、団体信用生命保険は住宅ローンの残高は清算されますが、例えば、葬儀費用として残したい、家族に財産として残したいなど他の使い道を考えるのなら、一般の生命保険が向いています。
・疾病の保障の使い分け
団体信用生命保険の疾病の保障は、例えばがんと診断確定されたら残高がゼロになるというように、保障額と考えるととても大きなものです。一般のがん保険の診断一時金は多くても数百万円が主流ですので、診断一時金で住宅ローンの返済ができるほどの保障を得るのは現実的ではありません。
一方で、医療保険やがん保険の給付金は使い道が自由ですので、治療費にあてたり、家計の補助にあてたりすることもできます。また、死亡保障と同様に、住宅ローン完済後の保障を考えるのであれば、一般の生命保険が向いています。
団体信用生命保険と一般の生命保険の特性を考えると、団体信用生命保険は住宅ローンの残高をなくしたり、その月の返済額を補助してもらうというように、住宅ローンの支払い専用の保険と位置付けることができます。一方で、生命保険は家計や治療など住宅ローン以外の部分の補助となります。また、住宅ローン完済後も一生を通じて必要な保障は生命保険でしか備えることができません。
どちらにするか、というよりも、住宅ローンの支払いについては団体信用生命保険で、その他必要な保障は生命保険で、と使い分けるとよいでしょう。