おしゃれで個性的な外観から、日本でも人気が高まりつつあるコンテナハウス。コロナ禍で増えたテレワークのためのワークスペースとしても注目されています。「子どもに邪魔されずに仕事がしたい」「趣味のための特別な空間を持ちたい」という人にもぴったりな空間です。また、コンテナハウスはレンタルで気軽にお試しすることもできます。コンテナハウスにはどんなメリットがあるのか、注意点と合わせてご紹介します。
コンテナハウスとは?
そもそもコンテナとは、貨物を輸送するために作られた鉄製の箱状容器のことを指します。海上コンテナなど、もともと物資の輸送用に使われていたものを利用し、住居として建築されたものがコンテナハウスです。海外では住居として使われることのほかに、店舗や施設としても人気があります。その理由は、「鉄製なので頑丈」かつ「コストが安いこと」です。海外では、輸送用の中古のコンテナを再利用して住居用に使用するケースもあり、費用が安く済みます。
また、貨物を輸送するために頑丈に作られているので耐久性・気密性に優れている点でも住居にぴったりです。そのデザイン性の高さから、近年は日本でも注目を集めています。防音性も高いため、「別室で仕事をしているのにうるさくて集中できない」ということも軽減できます。在宅勤務が広がりを見せるなか、集中できるワークスペースとしても注目が集まっているのです。
しかし、海外と同じようにコンテナを設置できるかというと、日本では難しい場合があるので注意が必要です。
日本では難しい理由が「建築基準法」の壁
なぜ、日本では海外と同じようにコンテナハウスを作ることができないのでしょうか。その理由は日本の「建築基準法」にあります。日本では、私たちが快適に暮らせるように、建築する際に最低限守らなければならないルールが存在します。これが建築基準法です。
建築基準法では、建築物や敷地、用途、設備、構造に至るまで、こと細かく決められています。建物を建てるときには、この建築基準法に適合した建物を建てる必要があり、コンテナハウスといえども例外ではありません。通常、流通している海上コンテナはISO規格を満たしていますが、建築基準法には適合していないのです。問題となる主な理由は以下の2点です。
(1)コンテナは壁式構造で躯体を支えているのは波板鋼板。そのため、窓やドアなど開口部を設けると強度を保つことができない。
(2)建築基準法では構造体をJIS鋼材で建てることが定められているが、波板鋼板で作られている。
コンテナは荷物を運ぶために頑丈に作られていますが、住居として設計されているわけではありません。当然といえば当然ですが、住まいに必要な窓やドアを開けることも想定していないので、違う使い方をしてしまうと強度が落ちてしまう可能性があるのです。強度が落ちてしまうと、地震や台風などの自然災害が起きたときに危険です。法を犯してしまうだけではなく、安全面でも海上コンテナをそのまま住宅として設置することはできません。
しかし、日本でもコンテナハウスを住居にしている人がいますよね。
それはすべて違法なのでしょうか?
いいえ、そうではありません。日本で流通しているコンテナ建築にはいくつか方法があり、「JIS規格に則った建築用コンテナを使用する」方法や「ISO規格コンテナ内部に梁や柱を設けて構造躯体を作る」方法、「鉄骨造でコンテナ風の建物を作る」方法などが代表的です。建築基準法に適合しているコンテナハウスなので、安心して設置することができますよ。
コンテナハウスのメリット
テレワークやステイホームが求められたことにより、自宅への設置を検討する人が増えているコンテナハウス。仕事場としての活用だけでなく、子どもの安全な遊び場としても人気があります。そこで、コンテナハウスを設置するメリットを5つご紹介します。
比較的低コストで建築が可能
コンテナハウスの大きなメリットは建築コストが比較的安いことです。とはいっても、木造住宅と同じぐらいの費用がかかると思っていてください。先ほどご説明したように、日本では海外のようにISO規格の中古コンテナの再利用はできません。そのため、コンテナ内部に構造躯体を設けたり、新たに建築用のコンテナを作る必要があるのです。その分の費用がかかるので、重量鉄骨造よりは安くなりますが、「格安で建てられる」とまではいかないでしょう。
工事期間が短い
多くの建物は資材を運んで、現場で大工さんたちが組み立てます。そのため、住宅によっては完成までに半年ほどかかる場合があります。しかし、コンテナハウスは短期間で完成が可能です。なぜなら、コンテナハウスは一般的に工場で作って現場に運びます。作ったものを設置するだけなので、工期も短く済むのです。また、工場で作られるので、ほとんど天候の影響も受けません。設置する際には基礎工事が必要になりますが、数週間程度で終わることがほとんどです。騒音などでご近所に迷惑がかかる時間も軽減できるでしょう。
設計の自由度が高い
「箱型のコンテナは狭いのでは?」と思われがちですが、実は自由度が高い建築です。コンテナの内部を区切ることのほかに、連結したり重ねたりすることで自由な空間をつくれます。外から見るとコンテナが並んでいるだけに見えますが、なかをのぞくと1つの大きな空間が広がっている、というのも意外性があって面白いかもしれません。アイデア次第で、ガレージや事務所としても活用できます。
移設が可能
住み慣れた家ごと一緒に引っ越しができるとあって、移築をしたいと考える人も少なくありません。一般の住宅も移築は可能ですが、費用が高額になります。その理由は、移築の仕組みにあります。移築をする場合、住宅をそのままトラックで運ぶのではなく、運べる大きさまで一度解体して再度組み立てることが必要です。
それに比べて、コンテナハウスは比較的容易に移設が可能です。工期が短いことと合わせて、災害発生時の避難所や復興拠点に使用されるケースも多くあります。
独創的な外観を作れる
コンテナハウスの最も大きな魅力は、その独創的な外観ではないでしょうか。コンテナハウスの無骨でインダストリアルなデザインは、日本の建物のなかでもひときわ目を引きます。そのため、カフェやインテリアショップなどでも採用されています。
同じコンテナハウスでも、コンテナ感強めのレトロなデザインにしたり、現代風のポップなカラーにしたり、デザインも豊富です。自宅の敷地に設置すれば、アクセントやシンボルにもなります。従来の日本の住宅にはない、クールな外観を演出できるでしょう。
コンテナハウスのデメリット
おしゃれで費用が安いことから人気を博しているコンテナハウスですが、いい面もあればデメリットも存在します。建築コストが安いとはいっても、決して小さな金額ではありません。設置した後に「こんなはずじゃなった」ということがないように、デメリットも知ったうえで設置を検討しましょう。
想像するほど安いわけではない
先ほどご説明しましたが、費用は重量鉄骨造よりは安いというぐらいです。建築基準法に適合した建築用のコンテナを使うので、海外の中古コンテナのリサイクルのように格安というわけにはいかないのです。そのため、「安い」という理由だけでコンテナハウスに決めてしまうのは避けたほうがいいでしょう。建ててみたら思いのほかお金がかかった…ということにもなりかねません。
後悔することがないように、コンテナハウスの特徴をよく理解したうえで設置を検討しましょう。価格以上にデザインや機能に魅力を感じるのであれば、コンテナハウスの設置もおすすめです。
コンテナを運び込める道路、立地が必要
コンテナハウスを設置に関して、設置できるスペースの有無を確認する人は多いですが、立地まではあまり考えていないという人も多いでしょう。なぜ立地が関係あるのか? それは、搬入経路が必要になるためです。コンテナハウスは工場で作って現場に運びます。少なくとも1部屋分の大きさがあるので、ある程度の道幅が必要です。設置予定地の土地に隣接している道路が狭ければ、コンテナを運びこむことができません。
さらに、設置予定地までの道中に狭い道がある場合も、コンテナが大きすぎて通行できない可能性があります。設置予定地付近の道路や立地がコンテナハウスを運び込むのに適しているかどうか、確認してから設置を検討しましょう。
また、吊り上げて設置をするので、電線が近くにある場合も設置が困難です。コンテナハウスを設置する際には、道幅が4.5m以上の道路に隣接していることと、電線や高さのある障害物がないかどうかがチェックポイントです。
固定資産税がかかる
「コンテナハウスは簡易的で移設可能だし、固定資産税はかからないのでは?」と思われがちですが、実際は固定資産税(と都市計画税)がかかります。なぜなら、コンテナハウスは構造部を固定して地面に接着するため、建築物と見なされるためです。建築物であるため、先ほどご紹介した建築基準法による制限もあるのです。
混同されてしまうことが多いのですが、固定資産税がかからないのは、トレーラーハウスです。コンテナハウスと形が似ていますが、車両の上に住居があるもので地面には接着しておらず、移動の際には牽引が必要です。トレーラーハウスは車両と見なされる場合が多く、固定資産税はかかりません。ただし、車両とみなされれば自動車税の対象になります。コンテナハウスもトレーラーハウスも移設ができる点や簡易的なスペースが作れる点では似ていますが、誤解しないように注意しましょう。
まとめ
個性的な外観が魅力的なコンテナハウス。住居をコンテナハウスにすることはもちろん、自宅の敷地内に設置して、ワークスペースや趣味を楽しむ空間、子どもの遊び場としても活用できます。
購入する際には、メリットとデメリットをよく理解してから設置することが大切です。後悔のない素敵なコンテナハウスライフを送りましょう。