共働きの夫婦などで「収入合算」して住宅ローンを利用する場合、「連帯債務型」であれば、連帯債務者それぞれで住宅ローン控除も受けることができます。ただし、連帯債務の場合は、持ち分やローンの負担割合によって、住宅ローン控除の対象となる金額が変わってくる場合があるので注意が必要です。
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収入合算は2つのタイプ
共働きの夫婦などが住宅ローンを利用して住宅購入する方法には、夫婦それぞれが住宅ローンを借り入れる「ペアローン」を利用するほかに、「収入合算」という方法もあります。
ローンの借り入れの際には、総返済負担率(収入に対する返済額の割合)の条件があり、借入者本人の収入額では希望額を借りられない場合があります。その際、配偶者や親などの収入を「収入合算」して計算すれば、総返済負担率の条件を満たし、希望する金額の借り入れが可能になる場合があるのです。収入合算には、「連帯債務型」「連帯保証型」の2つのタイプがあります。
【フラット35】を収入合算して利用した場合には、連帯債務型となります。住宅ローンの名義は夫(主債務者)になりますが、妻(連帯債務者)も同様の返済義務を持ち、夫婦で決めた割合(「所得金額等に応じて合理的に定める」とされています)で、返済を負担することになります。取得する住宅等は夫婦の共有名義で、持ち分を登記します。
連帯債務者は住宅ローン控除も利用できますが、住宅ローン控除の対象となる金額がローン返済の割合によって違ってくる場合あるので、注意が必要です。今回は、収入合算(連帯債務)して住宅ローンを利用した場合の、住宅ローン控除額について確認してみましょう。
連帯債務の場合に受けられる「住宅ローン控除」
「住宅ローン控除」は、住宅ローンを利用して住宅等を購入した人が受けられる、所得税(もしくは住民税)の減税制度で、「年末の借入金残高の1%(最高40万円)を、ローンの返済開始から10年間、税額控除することができます(現在は、控除期間が13年に延長されています)。所得税から控除しきれない金額は、一定額まで翌年の住民税から控除されます。
連帯債務の場合、主債務者、連帯債務者の両方で住宅ローン控除が受けられますが、控除の対象となる金額は、住宅の所有権を登記した際の持分割合と、住宅ローンの返済負担割合で決まってきます。たとえば、持ち分は2分の1ずつ、住宅購入の頭金は夫婦で均等に出し、ローンの負担割合も2分の1ずつの場合、ローンの年末残高が3,000万円であれば、控除対象となる金額は夫も妻も1,500万円ということになります。
ただし、持分割合が住宅ローンを含めた住宅取得のために出資した金額とは異なる割合になっている場合は、住宅ローン控除の対象となる金額が違ってきます。住宅ローン控除の対象となるのは、「自分の持ち分を取得するためのローン」部分だけだからです。
登記する持ち分は、負担する割合に応じて
たとえば、共働きの夫婦が下記のような条件で、連帯債務でローンを組んで住宅購入した場合、設定例A・Bのように、実際の資金負担割合が同じであっても、持分割合によって、住宅ローン控除の対象となる金額が違ってきます。
<設定例A・B共通の条件>
・住宅およびその敷地(住宅等)の購入代金…4,500万円
・頭金…500万円(妻が負担。妻の父親からの贈与)
・住宅ローン…4,000万円(夫婦の連帯債務 夫4分の3、妻4分の1)
・その年の年末ローン残高…3,900万円
<設定例A 持ち分が半分づつの場合>
まずは、持ち分が2分の1ずつだった場合からみてみましょう。
夫のローン負担分は4,000万円の4分の3である3,000万円ですが、夫が自分の住宅等の持ち分を取得するためのローンとして負担すべき金額は2,250万円分(4,500万円×1/2)となり、750万円の差額が生じます。一方、妻は頭金500万円を負担しているので、持ち分2,250万円を取得するために負担すべきローンは1,750万円ですが、実際に負担するローンは1,000万円。差額の750万円は夫が妻に代わって負担していることになります。
つまり、ローン借入額4,000万円に対して、夫は2,250万円、妻1,000万円が住宅ローン控除の対象となる年末残高の限度となり、この限度額と、年末残高にローンの負担割合を掛けた金額のうち少ないほうが、その年の住宅ローン控除の対象額となります。
この年のローンの年末残高は3,900万円なので、ローンの負担割合(夫4分の3、妻4分の1)をそれぞれ掛けると、夫が2,925万円、妻が975万円となります。しかし、夫の住宅ローン控除の対象となる年末残高の限度額は2,250万円までなので、住宅ローン控除の対象となる金額は2,250万円となります。これに1%を掛けた金額が住宅ローン控除額となります。
<設定例B 持ち分が資金負担割合と同じ場合>
次に、持ち分が資金負担割合と同じ場合(設定例B)を確認してみましょう。
持ち分登記を夫3,000万円、妻1500万円の夫4分の3、妻4分の1とし、資金の負担割合(夫ローン3,000万円、妻ローン+頭金1,500万円)と同じにします。すると、夫の持ち分3,000万円を取得するためのローン金額は3,000万円、妻の持ち分1,500万円を取得するためのローン残高は1,000万円。
この年の年末ローン残高は3,900万円なので、ローンの負担割合を掛けると、夫は2,925万円(<負担すべき借入金の額3,000万円)、妻975万円(<負担すべき借入金の額1,000万円)となり、ローンの年末残高の全額が、住宅ローン控除の対象となります。
このように、資金負担割合と、登記した持分割合が違っていると、年末のローン残高の一部しか住宅ローン控除の対象とならない場合があります。
また、「一方が代わりに負担しているローン部分」が贈与税の課税対象となる場合もあるので注意が必要です。住宅の共有持分については、登記を行う前に、税務署や税理士等に確認しておくとよいでしょう。
(最終更新日:2022.05.17)