独身時代と違い、結婚後はお互いの収入や貯蓄額を把握し、将来に向けてどのように家計を管理していくか話し合うことが大切です。しかし、家族といえど、お金のことはなんとなく言い出しにくいという人もいるでしょう。そこで今回は、夫婦で家計管理について話し合う手順や代表的な家計管理のパターン、上手に家計管理を行うコツなどを紹介します。
結婚後のお金の管理について話し合おう
家計管理について夫婦で話し合うときは、どんな点に気を付けたらよいのでしょうか。ここでは、結婚後の家計管理についてどのように話し合うべきか、手順や話し合っておきたい項目について解説します。
1.収入や貯蓄額を把握する
はじめに、世帯全体の収入や貯蓄額を把握しましょう。そのためには、お互いに現在の収入や貯蓄額を開示する必要があります。
具体的には次のような内容を確認していきます。
・現在の収入
・現在の貯蓄額
・月々の支払い(例:生命保険、奨学金の返済、車のローンなど)
・趣味に費やす費用
数字を明らかにすると家計の全体像が見え、意外なところに余計な出費があることにも気づけます。たとえば、スマホの料金プランを変更して通信費を節約するといった工夫もできるでしょう。また、独身時代に加入した生命保険は、結婚後には見直しが必要です。これからのライフプランを考えるためにも、まずは夫婦でお互いのお金の流れを把握するようにしてください。
2.将来のライフプランを話し合う
次に、将来のライフプランについて話し合います。ライフプランに合わせて収入や支出、必要な貯蓄額などを確認するためです。
たとえば、次のような点について具体的に話し合ってみてください。
・仕事:共働きか、専業主婦(夫)になるか
・子育て:子どもはほしいか、何人ほしいか
・住居:マイホームを購入するとしたら何年後にするか
余ったお金があれば貯めるといったやり方では、なかなか夫婦の貯蓄は増えません。「住宅資金」「教育資金」「老後資金」は人生の三大資金といわれ、計画的な準備が必要です。夢や目標があればモチベーションが上がり、楽しみながら節約や貯蓄が続けられます。マイホームを購入するならどのエリアに住むか、子どもが生まれたらどんな環境で子育てするかなど、お互いの希望をすりあわせて貯蓄額の目標を決めていきましょう。
3.家計管理の方法を決める
将来のライフプランが確認できたら、次は家計管理の方法について考えていきましょう。
主に次のような内容を話し合ってみてください。
・食費や水道光熱費など月々の生活費がどのくらい必要か
・現時点で節約できる出費がないか
・毎月いくらぐらい貯蓄にまわせるか
・誰が家計を管理するか
夫婦で共働きをしていく場合と、パートナーが結婚や妊娠・出産を機に退職した場合とでは、当然ながら収入が変わってきます。また、ケガや病気など思いがけないトラブルで収入が減ってしまうことも起こりえます。家計管理については、ある程度のリスクも踏まえつつ考えていくことが大切です。
【ポイント】結婚後に扶養に入るかどうか決める
結婚後にどちらかが扶養に入る場合は、夫婦間で適用される配偶者控除について知っておく必要があります。
配偶者控除は、所得が少ない配偶者がいる納税者が受けられる所得控除です。配偶者控除には所得制限が設けられており、納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合には適用されません。適用条件と控除金額は以下のとおりです。
共働き夫婦の家計管理パターン
ここからは、共働き夫婦によく見られる家計管理パターンを紹介します。
パターン1:共同の財布で管理する
毎月、お互いが同じ金額あるいは収入に応じた割合の金額を出し合い、共同の財布や口座で家計を管理する方法です。
この方法のメリットは、何にどのくらいの金額を使ったのか、いくら残っているのかなど、状況が把握しやすいという点です。出す金額が決まっているので不平等感が少なく、残りのお金は自分の自由になることもメリットといえます。
ただし、スムーズに管理していくには、夫婦間でルールを決めることが大切です。たとえば、大きな買い物をしたいときや予想外の出費が発生した場合など、共同の財布・口座から出すのか、自分の貯金から出すのかで揉めることがあります。こうしたトラブルを防ぐために、共同財布・口座のお金の使いみちやルールは、しっかりと話し合っておきましょう。また、共同のお金の流れは把握できますが、そのほかはわかりにくいため、世帯全体のお金の流れがつかみにくい点にも注意してください。
パターン2:支出項目ごとに分担する
夫は家賃と食費、妻は光熱費と通信費といったように、項目ごとに分担してお金を出し合う方法です。
共同の財布・口座で管理する方法と同じく、自分が担当する費用を出した残りは自由に使うことができます。ただし、項目によっては負担が大きくなることもあるので、不平等感のないように担当を分ける必要があります。エアコンやストーブなどの冷暖房機器を使う季節は光熱費が高くなりがちですし、外食が多い月には食費の負担が大きくなります。揉めごとの原因にもなるため、よく話し合い、なるべく負担が偏らないように担当する項目を分けることが大切です。
パターン3:妻または夫のどちらかが管理する
妻または夫のどちらかが、二人の収入をまとめて管理する方法です。
この方法は世帯全体のお金の流れが把握でき、貯蓄しやすいことがメリットです。ただし、管理する側だけが家計を把握しているのは、あまりよい状況とは言えません。やりくりが苦手な場合など、お金を毎月すべて使い切ってしまい、いつまでたっても貯蓄ができないということも考えられます。また、管理してもらう側はお小遣い制になることが多く、金額によっては不満を抱えがちです。
この方法で家計管理をする場合は、収入と支出、貯蓄額について、こまめに報告することが大切です。家計を管理しない側も状況を把握できるように、月1回や週1回など定期的に家計について話し合う機会をもちましょう。
一方が専業主婦(夫)の場合の家計管理パターン
次に、一方が専業主婦(夫)の家庭でよく見られる家計管理パターンについて紹介します。
パターン1:収入があるほうが家計管理をする
収入があるほうが毎月の給与から一定額を生活費としてパートナーに渡す方法です。渡した金額のなかでやりくりをしてもらい、残りは貯蓄にまわしたり自分のお小遣いにしたりと、使いみちを比較的自由にできます。収入のあるほうが財布の紐を握っているパターンです。
この場合、やりくりをする側は、貯蓄ができているのかどうかを知ることが難しくなります。生活費を渡した残りを自由に使ってしまうと貯蓄が増えず、いざというときに捻出できるお金がなくなってしまうこともあるでしょう。自分が働いて得た給与でも、「夫婦の共有財産」という意識でなるべく貯蓄にまわし、定期的に貯蓄額を伝えることが大切です。
パターン1:収入がないほうが家計管理をする
専業主婦(夫)のほうがパートナーの収入を一括管理する方法です。家計全体を把握でき、やりくり次第で計画的に貯蓄を増やせます。
収入のあるほうはお小遣い制になるため、前述の給与から一定額を渡す方法に比べると、自由になるお金は少なくなるでしょう。また、お金の流れや貯蓄額を把握しにくくなります。家計管理をする側はしっかりとやりくりして貯蓄を増やし、定期的にパートナーへ出費の内訳や貯蓄額を報告することがポイントです。
結婚後のお金の管理を成功させるコツ
夫婦の貯蓄を増やしていくために、また、いざというときに困らないために、結婚後のお金の管理のコツを紹介します。
コツその1:目的別に口座を分ける
毎月の収入は、生活費・教育費・娯楽費・住宅購入費など目的別に分けると管理しやすくなります。さらに複数の口座を開設し生活費や娯楽費などは「使う目的の口座」、教育費や住宅購入費などは「貯める目的の口座」に振り分けておきましょう。
「余った分を貯める」という考え方では、なかなか貯蓄を増やせません。貯蓄の基本は「はじめに分けておく」ことです。財形貯蓄を利用して給与から天引きで貯蓄したり、銀行の自動振替サービスや自動積立を利用したりするなど、強制的に貯蓄していくことをおすすめします。
コツその2:自分たちに合った家計管理をする
家計管理には家計簿をつけるのが理想的ですが、項目・費目を細かくしすぎて挫折してしまう人も少なくありません。家計簿をつける大きな目的は、家計のムダを見つけて貯蓄を増やしていくことです。最低限必要な項目のみでも構わないので、長く続けてお金の流れを把握し、ムダをなくすようにしていきましょう。
項目ごとに予算を立てて現金を項目別の袋に小分けにしたり、スマホの家計簿アプリを利用したりするのも効果的です。自分たちに合ったやり方を見つけて家計を管理してみてください。
コツその3:生活予備費を貯めておく
教育費や住宅購入費などの目的のある貯蓄とは別に、生活予備費を貯めておきましょう。目安となる金額は生活費の3~6ヶ月分、自営業や個人事業主なら6ヶ月~1年分をキープしておくと安心です。
病気やケガで入院・治療が必要になることがありますし、事故や災害で想定外の出費が必要になることもあります。業績悪化や失業などで収入が激減するリスクも「ない」とは断言できません。もしもの場合に備え、すぐに引き出せる定期預金や普通預金に準備しておくようにしましょう。
まとめ
結婚後のお金の管理については、将来のライフプランも含めて夫婦でしっかりと話し合うことが大切です。夫婦の考え方や共働きかそうでないかによって、家計管理のパターンは異なります。どちらかに負担が偏ったり不満を抱えたりすることのないよう、定期的に家計について話し合う時間を作ることも必要です。夫婦で考えたライフプランに合わせて、また、想定外の事態に備えて、計画的に家計を管理していきましょう。