一戸建てに比べて敷地内や建物内での人との接触が多く、エレベーターのボタンなどに直接触れる機会も少なくないマンション。共用部だけではなく、専有部の住居内でもいかに換気を良くするのかなど、課題も少なくありません。そこで、共用部から専有部まで、マンション住まいのコロナ対策を改めて整理してみました。
管理組合総会や理事会は「3密」を避ける対策
マンションのような区分所有の建物においては、建物や敷地の管理に関する事項を決定するため、法律で年に1回以上管理組合総会を開催することが定められています。その決定事項を実施するための下部組織として理事会があり、適宜理事会が開催されます。
しかも、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が広がり、マンションとしての対策をどうするのか、例年以上に総会や理事会を開催しなければならない問題も出てきます。
総会については、限られた空間に多数の人が集まる「3密」を避けるため、区分所有者が委任状を作成して提出、集会室などに多くの人が集まりすぎないようにする必要があります。また、管理会社によっては、ウェブ会議システムを採用、区分所有者が自宅から議決権を行使できる仕組みを採用しているところもあります。
さらに、理事会に関してはリモートでの開催を増やすなどして、接触機会をできるだけ少なくすることが求められます。
まずは、管理組合でこうした仕組みが採用されているのかを確認、まだ対応が取れていない場合には、早期に実現するように働きかけたいところです。
管理会社と話し合って共用部の消毒を徹底する
というのも、コロナ対策として管理組合の活動は従来以上に重要になっているのです。
たとえば、管理組合が主導的役割を果たして管理会社と話し合い、マンションの共用部の消毒を徹底することが大切です。
主な対策としては、次のような点が挙げられます。
1.手指衛生等のため、マンションエントランス等にアルコール消毒液を配備する
2.エントランスなどの窓やドアを開けてこまめに換気を行う
3.エレベーター内を含めて、機械換気を十分に活用する
4.通常の清掃に加えて、ドアノブや手すり、エレベーターの押しボタン等、人が触れる頻度が高い部分を頻繁に消毒する
これは、管理会社との委託契約の内容を上回る業務になるでしょうから、どこまで依頼するのか、コストの問題を含めてシッカリと管理会社と交渉し、管理員や清掃担当者などに実行してもらう必要があります。
居住者の感染対策の注意喚起も重要な対策に
同時に、居住者へコロナ対策の注意喚起を行い、住民一人ひとりが、「うつらない、うつさない」という意識を共有し、その行動を徹底することも重要です。ひとりでもコロナ対策のマナーを遵守しない人がいると、マンション内でクラスターが発生するリスクがあるのですから、とても大切な点です。
日常的には、手洗い、うがいを徹底するほか、マンションの共用部では、
1.他の人と十分な距離を取ること
2.マスクを付けること
3.エレベーター内では会話を慎むこと
などが求められます。エレベーターについては、低層階の人はできるだけ利用を避ける、混雑しているときには、パスして次を待つといった慎重な行動が必要でしょう。
大規模物件ほど必要な対策が多くなる
大規模マンションほどさまざまな対策が必要になってきます。
コンシェルジュカウンターのあるマンションだと、カウンターに飛沫対策用のフィルムを設置する、来客者名簿などを作成するボールペンは常に消毒を心がける、共用施設のなかでもフィットネスルームなどの有償施設に関しては、利用者に体調確認のためのチェック表を提出してもらう、スタッフの常駐が求められる防災センターでは、内部が密にならないようにパーティションで区切るなどの対策も欠かせません。
また、配送業者の出入り口が設けられているマンションであれば、そこでも消毒やマスク着用を徹底することが重要。先進的なマンションでは、顔認証やワンタイムキーを活用した入館管理システムを採用しているところもあるほどです。
居住者としては、そうした点がシッカリと実施されているかを確認して、不安を感じる場合には、管理組合の理事などに話して、改善を図るようにお願いしてはどうでしょうか。
マンション内に感染者が出たときにはどうなるのか
一番気になるのは、マンション内に感染者が出たときにどうなるのかという点ではないでしょうか。
住民の健康や安全を守るということと同時に、プライバシーの両立を図らなければならないので、たいへん難しい問題です。そのため、マンションの多い自治体では、ホームページなどで、その対策を紹介しています。たとえば、東京都千代田区では、「居住者に感染者が発生した場合」として、次のような対応を紹介しています。
図表1:マンション内で感染者が発生した場合の対応
1.各居住者の対応
感染していることが判明した場合、速やかに管理組合の担当理事(理事長)に報告する(任意)
担当理事(理事長)は、個人情報の保護を徹底し、人権への十分な配慮を行う。担当理事(理事長)が知り得た情報は、業務を遂行するにあたって必要となる管理会社担当者等、必要最低限のものとのみ共有し、決して一般居住者や第三者に漏らしてはならない
2.管理組合の対応
居住者から感染の報告を受けた場合、必要に応じて管理組合による共用部分の消毒を、業者委託によるか管理組合自らが実施する
感染者の発生した部屋のあるフロアを消毒する場合には、決して感染者の部屋番号が一般居住者や第三者に特定されることがないよう、細心の注意を払う
3.保健所の対応
感染した居住者とその濃厚接触者への対応、当該居住室消毒への助言は、区役所が行う
出典:公益財団法人まちみらい千代田「マンションにおける新型コロナウイルス感染症対策関連情報」
クラスターが発生すると資産価値に影響も
ちなみに、自治体のなかには、マンション内で感染者が出たときに必要となる、マンションの消毒費用に関して助成制度を実施しているところがあります。
助成金は、先の東京都千代田区の場合、図表2の条件を満たせば、消毒費用の3分の2、上限20万円となっています。
クラスターを発生させないためにも、上記の図表1のような対策を速やかに実施、プライバシーなどに配慮しながら、迅速に消毒して日常生活を維持するようにしなければなりません。
クラスターが発生して、マスコミなどに報道されると、イメージだけではなく、長い目でみた資産価値の低下につながる恐れもあります。実行は管理組合が中心になるはずですが、そうでない人たちも高い意識をもって協力するようにしたいところです。
図表2 千代田区のマンション消毒費用助成金の適用条件
1.千代田区内の分譲マンションであること
2.建築基準法その他の関係法令に適合していること
3.管理規約が整備されている団体であること
4.感染者が発生したことを踏まえ、管理組合総会もしくは理事会において、マンション感染症対策について議決されていること、または、事後報告し承認が得られること
出典:公益財団法人まちみらい千代田「マンション安全・安心整備助成(感染症対策)」
24時間換気が機能するよう定期的な掃除を実施
マンションでは、専有部の居室内のコロナ対策も欠かせません。外出時にはマスクを着用し、帰宅時に手洗い、うがいをキチンと行い、ドアや手すりなどをこまめに消毒して、居住部分にウイルスを入れないようにする必要があります。そのため、最新のマンションでは玄関近くに手洗い場を設ける物件も登場していますが、リフォームで玄関近くに設置する人もいるようです。
そのほか、住まいの換気も重要です。比較的新しいマンションなら、24時間換気システムが設置されているでしょうから、ある程度安心ですが、それでも日常的な手入れが欠かせません。
24時間換気システムは各部屋の排気口、天井の給気口(ファン)などによって自動的に室内の空気を入れ替える仕組みです。ですから、この排気口を家具などでふさがないことが重要であると同時に、フィルターの掃除を定期的に行って、十分に換気できるようにしておかなければなりません。フィルターには有効期限がありますから、取扱説明書などをチェックして、有効期限が切れる前に早めに交換しておくのがいいでしょう。
風通しをよくするため住まいの中の整理整頓を
24時間換気システムのない住まいでは、窓開けによる定期的な換気が必要になります。それも、1ヶ所だけではなく、住まいのなかを風が通り抜けるように、2ヶ所以上を開けて、空気の通り道をつくるようにしましょう。それも、対角線上に流れるようにするのが効果的だといわれています。
同時に、部屋のなかの片づけも大切です。いくら窓を開けても、風の流れを阻害するように家具が並び、乱雑にものが置かれていると効果は半減します。テレワークなどで在宅時間が長くなっている人が多いでしょうから、この機会に部屋のなかを整理整頓してスッキリさせてみてはどうでしょうか。
以上のように、共用部、専有部ともにマンションではさまざまなコロナ対策が求められます。
まだまだウィズコロナの時間が続き、ポストコロナは当分先のことになりそうです。
この状況下だけに、自分が住むマンションからコロナを出さない、コロナを入れないという日常的な取り組みが欠かせません。共用部、専有部ともに万全の対策をとりたいところです。