所得控除とは、所得税を計算する際に所得から一定の金額を差し引くことができる制度です。つまり正しく所得控除を受ければ所得税を減らすことができます。所得控除にはどんなものがあって、どう計算するのでしょうか。初めての方でもわかるように解説します。
そもそも所得とは?
所得税とは、1年間の所得にかかる税金です。この記事では所得税の控除についてご説明しますが、その前にまずは「所得とは何か」ということについてご説明します。
そもそも「所得」とは、収入のことと思われる方もいるかと思いますが、税金を計算する際には「収入」と「所得」は区別して扱われます。
会社員であれば、勤務先から受け取った給与が収入になります。事業主であれば、売り上げが収入になります。
所得とは、これらの収入から必要経費を引いて残った額のことをいいます。会社員の場合は、実際にかかった必要経費を計算するのではなく、給与収入の金額に応じて決められている「給与所得控除額」を差し引いて計算します。
所得金額 = 収入金額 − 必要経費
所得税の控除(所得控除)とは?
所得税額はこの所得金額から一定の金額を差し引いた課税所得に税率をかけて計算します。そのため、課税所得が少なければ納めるべき所得税の額も少なくなります。
この一定の金額に当たるのが所得控除で、上で説明した必要経費や給与所得控除の他にも、一定の要件を満たしている場合に各種控除の金額を所得から差し引くことができる制度です。会社員であれば、勤務先で年末調整をする際に、「生命保険料の控除」とか「扶養控除」といった言葉を目にしたことがあるのではないでしょうか。
この所得控除の制度が設けられているのは、所得税の計算をする際に、納税者それぞれの個人的な事情を加味しようとするためです。たとえば、扶養家族がいる人といない人では、同じ収入があっても生活にかかるお金は違ってくるはずです。そうした事情を反映して所得税の金額を計算するための制度といえるでしょう。
令和2年の所得税から適用される新しい控除もある
令和2年の所得税から適用される新しい控除もあります。それが「ひとり親控除」です。これは納税者がひとり親である場合に、要件を満たしていれば一定の金額の所得控除を受けることができるものです。
また、所得控除については、新型コロナウイルス感染拡大による影響も反映されています。感染拡大防止のために、国からの中止要請を受けていくつものイベントが中止されました。
中止されたイベントのうち、文化庁・スポーツ庁の承認を受けたもののチケットを持っている人が払い戻しを受けない場合、一定の条件を満たしているイベントであれば、その金額を寄付とみなし、寄附金控除を受けられるという措置が取られることとなりました。
所得控除にはこのようにその時の時勢が反映される場合もあるのです。
所得控除には15種類がある
所得控除には15種類があります。それぞれの内容と控除額の計算方法は下の図表をみてください。
控除の計算方法と上限はどうなっている?
控除の金額については、たとえば扶養控除や障害者控除については、金額が決まっているので、適用を受けられるかどうかを確認するだけですみます。また、社会保険料控除などは支払った金額の合計額がそのまま控除されます。
自分で控除額を計算する必要のある所得控除については、きちんと計算方法を確認して控除を受けるようにしましょう。
ここでは、医療費控除の計算方法をご説明します。医療費控除の計算式は次の通りです(総所得金額等が200万円以上の人の場合)。また医療費控除の最高額は200万円となっています。
1年間で支払った医療費の合計金額 − 保険金などで補てんされる金額 − 10万円
なお、その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%が所得控除の金額となります。
たとえば、夫婦と子ども一人の家庭で、夫の医療費が5万円、妻の医療費が6万円、子どもの医療費が3万円かかったとします。また、子どものケガの保険金が1万円支払われたとしましょう。
<かかった医療費>
夫…5万円
妻…6万円
子ども…3万円
合計:14万円
医療費の合計は14万円ですが、1万円が保険金で補てんされています。そのため医療費控除の金額は次のような計算となり、夫もしくは妻の1年間の総所得が200万円以上であれば、所得から3万円を差し引くことができます。
14万円 − 1万円 − 10万円 = 3万円
なお、生命保険料控除や地震保険料控除は勤務先の年末調整で控除を受けることができますが、医療費控除を受けるには確定申告をする必要があります。
また、先にご説明した新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になったイベントのチケット代について、寄附金控除を受けるためにも確定申告が必要になります。
確定申告が必要な控除を受ける場合には、早めに準備をして忘れずに申告するようにしましょう。