おしゃれな家で見かける「腰壁」とは? 実用性とデザイン性で人気上昇

「腰壁」とは壁の下半分に板材などを張りめぐらせた壁のことで、実用性や見た目のよさなどから人気があります。壁面の仕上がりが上部とは異なるため、インテリアのアクセントとして取り入れるケースも多くあります。

一方、腰壁を取り入れたくても、実際にはそのメリットがわからなかったり、費用対効果が実感できるのか不安だったりする人も多いのではないでしょうか。この記事では、腰壁のメリットや活用例、注意点を解説します。

腰壁にはメリットがいっぱい

一般的に腰壁は、床面から90~120センチメートル程度までの高さで窓の下端を基準とすることが多く、ほかの壁面とは異なる木版やタイルなどで仕上げます。見た目のよさのみならず、数多くの実用的なメリットがあります。ここでは、腰壁を設けることで期待できるメリットについて解説します。

メリット1:壁の汚れや傷を防止できる

壁の傷や汚れは、床面から腰の高さ程度までの範囲に生じやすいという特徴があります。移動の際に擦ったり、物を運ぶときにぶつけたりするため、どれだけ気を付けていても壁の上部よりも傷んでしまうのが実情です。

これらの問題を軽減するためには、木板やタイルを張って通常の壁紙のみの状態よりも衝撃に強くしたり、汚れを防止するのが効果的です。腰壁はこの機能を十分に果たしてくれるため、壁の傷や汚れを防止したい人にとっては有効な選択肢となります。

すでに壁に傷や汚れがついている場合でも、DIYで腰壁をつくることも可能です。特に腰壁を設える際の区切りの部分に装飾部材である「モールディング」を使ったDIYは人気があります。モールディングを使うと陰影が出て、独特な雰囲気が醸し出されます。専門的な技術がなくても施工できる商品も数多く販売されていますので、チェックしてみましょう。

ソファ後ろの腰壁上部がモールディング

メリット2:高級感のある仕上がり

腰壁がアクセントになった洋風の部屋

腰壁がある空間はおしゃれで高級感があります。一面を同一の壁紙で仕上げた場合と比較すると、腰壁自体がアクセントとなり、雰囲気のある空間を演出してくれます。

高級ホテルなどではこの特徴を生かして、腰壁を取り入れているケースが多く見られます。また、海外風のインテリアとの相性が非常によく、こだわりの空間づくりには欠かせない要素と言っていいでしょう。

メリット3:防水・防臭効果

腰壁には、防水・防臭の効果が期待できるものもあります。下部の壁が汚れやすく、臭いが気になるトイレには、タイルなどの水を弾く素材や防臭性のある素材がいいでしょう。

キッチンは水分による汚れや腐食が気になる箇所です。そのため、水を弾き、汚れが落としやすいタイルの腰壁がぴったりです。寝室には珪藻土など除湿効果がある素材で腰壁を設ければ、部屋全体はもちろん、寝具類の湿気を軽減する役割も担ってくれます。

このように、腰壁は見た目のみならず生活の質を向上させるためにも役立ちます。それぞれの箇所に適した素材を選び、より快適に過ごしましょう。

腰壁の代表的な活用例

腰壁はさまざまな目的で設置されます。特に、汚れやすい水まわりや子ども部屋、ペットを飼っている空間などに効果的です。ここでは、腰壁の活用例をいくつか紹介します。

キッチン

対面式キッチンの腰壁

キッチンの腰壁は、ほかの部屋とは少し用途が異なります。対面式キッチンではリビングやダイニングの中にキッチンが置いてある状態であり、そのままでは手元が丸見えです。そのため、見た目の印象は好きでも実用面に問題を感じ、対面式キッチンの設置をためらう人も少なくありません。

キッチン用の腰壁は、手元を隠すために独立した壁を造作します。高さを調整することで、お互いの顔が見えるという対面式キッチンのメリットを損なうこともありません。カウンターを作れば、ちょっとしたものを置けるため、利便性も向上します。

キッチン用腰壁を設置は、キッチンのみでは気になる点をしっかりとカバーしてくれます。対面式キッチンのメリットをより実感できるでしょう。

子ども部屋

現状、すでに傷や汚れが付いているのなら、腰壁を設けることでリカバリーすることも可能です。これから内装を検討するのであれば、子どもの成長をどうとらえるかがポイントになります。

木板を腰壁とすることで、傷や汚れを成長の証として捉えるのも粋な考え方です。木板は磨いたり削ったりすることであらかたの汚れを取ることもできます。経年劣化ではなく、時を刻むという考え方ができるのも木板の魅力です。

逆の発想で「汚れたら取り換える」ことを前提に、経済的に負担の少ない壁紙を腰壁とするのもひとつの方法です。子どもによって活動量なども異なるため、家族に合う方法を考えましょう。

トイレ

耐水性、防汚性を配慮したタイルの腰壁

トイレの腰壁としてもっとも有用なのはタイルです。耐水性、防汚性に優れており、日々の手入れが格段に楽になります。防臭効果のあるタイルを選べば、嫌な臭いの軽減が期待できます。

トイレの腰壁の有用性は機能面だけではありません。トイレは家の中でもひとりでリラックスできる空間です。清潔なトイレは、とても居心地のいい空間になるでしょう。

ペットの部屋

ペットを飼っている家では、猫であれば爪とぎ、犬であれば噛みつきなどに頭を悩ませているケースが少なくありません。これらの行為は壁を激しく傷つける要因となり、注意してやめさせることもなかなか難しいものです。

ペットの部屋では、飼っているペットの習性に合わせた壁材を腰壁とすることが重要です。また「傷つけない」ことよりも「傷つけられても問題ない」「自然と壁を傷つける行為をやめる」ことが理想的ともいえるでしょう。

木板の腰壁であれば、猫が爪とぎをしたとしても、むしろほかの箇所での爪とぎを防ぐ効果が期待できます。犬の噛みつきは、傷みが激しくなったら交換できるものを設ける、タイルなどのかじりにくい素材を腰壁として使用する、などの方法を検討しましょう。

腰壁はここに注意

腰壁には多くのメリットがある一方、工事や設置後の管理にあたっては注意すべきこともあります。ここでは、腰壁を設置する際の注意点を解説します。

段差にホコリがたまりやすい

腰壁は壁上部の壁紙よりも厚みが出ることがほとんどです。そのため、段差の部分にはホコリがたまりやすくなります。この位置は目線に近く、ホコリがたまっていると人の目に入りやすいのも難点です。

この問題を防ぐには、こまめに掃除するほかありません。特に、キッチンまわりのホコリを放置しておくと油分と混じって固まり、取れにくくなってしまいます。日々のルーチンとして掃除の流れに組み込んだり、周期を決めて掃除したりすることが大切です。

木板を腰壁として使用する場合は、メンテナンスをどうするかも検討する必要があります。木板は一般的な壁紙とは異なり、ついたホコリが細かな凹凸に絡んでなかなか取れなくなります。完全に塗装する場合は特に問題にならないものの、木目を生かした仕上げを希望する場合は、掃除と並行して適切なメンテナンスを行いましょう。

通常の壁紙より工事費用がかかる

腰壁を設ける場合は、一般的なクロス仕上げの壁と比較して工事費用が高めになる傾向があります。異なる素材を使うということ、工数がかかるということを理解し、ある程度の予算が必要になると心得ましょう。

一方、腰壁の設置が必ずしも結果的に高くつくとは言い切れない面もあります。いずれ壁紙は汚れてきます。どれだけきれいに使っていても、太陽光による黄ばみや経年劣化は避けられません。その際、同一の壁紙を使用している場合は全面張り替えとなり、腰壁を使用している場合は、上部のみの張り替えで済む可能性もあります。

木板など耐久性のある素材を腰壁として使用する場合は、壁紙と比べて長寿命となります。住宅の管理において、イニシャルコストとランニングコストのバランスを取ることはとても重要です。腰壁の設置は、イニシャルコストが高くつく一方、ランニングコストは使用する壁材によっては低減できる可能性があることを理解しておきましょう。

仕上がりのイメージがつきにくい

腰壁は部屋全体をぐるりと囲みます。そのため、小さなサンプルでは仕上がりのイメージがつきにくいことも事実です。サンプルでは明るい色に見えたのに、仕上がりは想像していたよりも暗くなったというのはよくある話です。

また、腰壁は部屋の上部と下部を視覚的に二分するため、一歩間違えると圧迫感のある印象になります。しかし、どれほど頭で考えても、仕上がりのイメージは実際にやってみないことにはわからないという実情もあります。

このようなトラブルを防ぐためには、3Dシミュレーターなどが有効です。施工前に、コンピュータで架空の部屋に腰壁を設置してみて仕上がりの様子を確認できます。ソフトによっては、陽が差し込む昼のイメージと灯りをともした夜のイメージをシミュレーションすることも可能です。特に濃い色味の腰壁や、上部の壁紙とは異なる素材の腰壁を検討している場合は、必ずシミュレーションして確認しましょう。

まとめ

腰壁は部屋のアクセントとしてとても効果的です。一方で、掃除やメンテナンス、費用など、腰壁ならではの問題には注意も必要です。また、子ども部屋と寝室、ペットのいる部屋、キッチンやトイレなどの水まわりでは、適切な素材も異なります。

仕上がりのイメージは、3Dシミュレーターを使ったり、実際に腰壁を設置している家を見学したりして明確にしてくことが大切です。腰壁の設置を検討する際には、これらのポイントを十分に考慮し、後悔のない選択をしましょう。

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