子育てをする世帯にとって、「いま住んでいる街」あるいは「これから住もうとしている街」の住みやすさを知る指標のひとつが「待機児童」に関するデータです。
求人サイト「ココキャリ」を運営しているキャリアフィールド株式会社は14日(月)、 東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の1都3県(以降、 関東版)の待機児童数を地図上に表した「待機児童マップ関東版2020」を公開しました。これは関東エリア1都3県から発表された2020年4月1日時点の市区町村別の待機児童数を元に地図に表したもの。
これによると2020年度の1都3県の待機児童数は前年度6,668名から4,755名となり、 約29%減という結果に。さらに地域別の状況に変動がありました。公表された情報を元に詳しく見ていきましょう。
千代田区、 目黒区、 世田谷区、 豊島区の4区が待機児童ゼロに
東京23区では、 2019年に待機児童ゼロとなった杉並区、 港区の2区に加え、 2020年は千代田区、 目黒区、 世田谷区、 豊島区の4区が待機児童ゼロに。
関東エリア全体では、 212自治体中93の自治体で待機児童ゼロとなり、あわせて待機児童100人を超える自治体は前年の20自治体から7自治体へと大きく減少しているそうです。
待機児童数が全国で最も多い市町村は「埼玉県さいたま市」
2019年まで待機児童数1位が続いていた世田谷区が2020年には待機児童ゼロとなったことで、 関東エリアでは1位がさいたま市(387人)、 2位は江戸川区(203人)、 3位は中央区(202人)の順になっています。
キャリアフィールドの分析によれば、さいたま市の人口は毎年1万人ペースの増加で推移し、 待機児童数は全国最多。 この要因には、 人口増加が進むさいたま市における0-14歳の転入者数が2018年に1,260人で全国1位になるなど、 子育て世代の転入が多いことなどが挙げられるとのことです。
2019年の3月にARUHIマガジンでも埼玉県の待機児童数の多さの要因について紹介したことがあります。
さいたま市は京浜東北線や高崎線を利用できる大宮駅を中心に武蔵野線を利用できる浦和周辺エリアが含まれ、東北自動車道や首都高速埼玉大宮線も通っています。
こうした傾向から、県内他駅へのアクセスと東京へのアクセス、双方が可能な道路や路線を有するエリアには子育てをする世帯が集中している可能性があります。
参考記事:【埼玉県】待機児童が急増する埼玉、最多の市はどこ? なぜ待機児童が増えている?
待機児童数の増加数が最も多いのは「千葉県船橋市」
関東エリア全体では、 待機児童数が減少し待機児童ゼロとなる自治体が増える一方、 212自治体中41の自治体では待機児童数が増加しています。 そのなかで、 前年比で最も多い125人増となったのが船橋市でした。
キャリアフィールドの分析によれば、船橋市は、 近年の大規模な再開発などを背景に、 千葉県内の市町村別で3番目に前年比の人口増加数が多く、 保育の需要増加につながっていると考えられるとのこと。
湾岸開発で東京都中央区は待機児童問題が深刻
2015年の国勢調査において0~5歳人口あたりの待機児童が占める割合を算出したところ、 前年同様に神奈川県葉山町(3.66%)が1位となり、 続いて2位は千葉県富里市(2.49%)、 3位は東京都中央区(2.30%)の順となっています。
キャリアフィールドによれば葉山町は近年、 認可保育所の整備を進めているものの、 新規の受け皿の確保が追い付いていない状況がこの結果に結びついていると考えられるそうです。
2位の富里市では、 待機児童数が2018年に6人まで減少したものの、 2019年に43人、 2020年は56人と2年続いて増加傾向にあります。
また、 中央区は前年に続き待機児童数、 待機児童率ともに3位となり、 待機児童の問題が深刻化。 湾岸エリアの開発に伴い20年間で5歳未満の人口が3倍以上に急増し、 保育施設の整備が追い付いていないことなどが要因とキャリアフィールドは分析しています。
エリア別の傾向では、 東京都の北多摩エリアに集中して高水準に
待機児童率の高い市区町村は、 関東エリアに点在し、 なかでも東京都の北多摩エリアに集中し高水準となっています。 一方、 東京23区では中央区以外はすべて1%未満となったのに対し、 三鷹市、 調布市、 小金井市、 小平市、 国分寺市、 狛江市は1%を超える結果となりました。
キャリアフィールドは「待機児童への対応については、 対策が奏功する自治体と課題が解消されていない自治体が顕著に見てとれます。 子どもを預けて働きたい世帯が増えるなか、 “保育に対するニーズは高まる見通し”であり、 さらなる対策が必要となっています。」と課題をまとめています。
共働き・働き方改革・コロナがもたらすニューノーマル、10年前には無かった様々な社会の変化がいまの子育て世帯に『保育』の重要さをもたらしているのは間違いありません。