【フラット35】2020年9月の金利はどうなる? コロナの影響収まらず

住宅購入の判断に大いに関係する住宅ローン。不動産や金融についてその業界の人に匹敵する知見をもつ、公認会計士ブロガー千日太郎さんが、連載形式で住宅を買う側・住宅ローンを借りる利用者側の視点で情報発信。2020年9月の住宅ローン金利について世界情勢や国内金融市場にインパクトを与えそうな事柄を踏まえ、解説いただきます。

PCR検査陽性者数が日々最大数を更新し続ける感染第2波の状況下でお盆の連休に入りました。移動する人は例年より少ないものの、予断は許されない状況です。

このまま感染者が増えると「再び緊急事態宣言が発令されるのでは? 」と警戒が強まる一方で金融マーケットの長期金利に目立った動きはありません。日本の長期金利の指標である新発10年国債利回りは0%をわずかに上回る水準でほぼ横ばいに推移しています。

【フラット35】金利推移(機構団信加入の場合)

新型コロナウイルスの第2波によって感染者が急増し、緊急事態宣言の再発令が検討されている状況下で9月の【フラット35】金利はどうなっていくのか?わかりやすく解説します。

日々の感染者数と長期金利に相関関係はあるか?

厚生労働省が公表している単日のPCR検査陽性者数(青の折れ線)と長期金利(オレンジの折れ線)を並べてみました。3月から4月にかけてはコロナショックの大きな動きがありましたが、直近の長期金利は陽性者数の増加にもかかわらず横ばいです。

3月は「コロナショック」で日経平均株価の下落とは逆方向に長期金利が急上昇しました。ここでいう住宅ローンのコロナショックとは投資家のリスク回避が行きすぎて安全資産まで売って現金化しようとする動きから、債券価格が下って長期金利が上がる現象をいいます。

そのような投資家の感情的な行動は、まだまだ日本国内の感染者数が少ない時点で発生していたのです。

長期金利は債券価格によって決まります。投資家は今後のマーケットの先を読んで売買を行いますので、潜在リスクに対してはより過敏に反応し、それが顕在化した時点ではすでに価格(金利)に反映されているのですね。

今は感染第2波で、最初の緊急事態宣言が発令された時をはるかに超える感染者数が出ていますが、長期金利は横ばいで推移しています。再度の緊急事態宣言の発令の可能性について話題となっていますが、それが投資家の判断材料となる可能性は低いでしょう。

今後の長期金利の動向と【フラット35】の9月金利動向の関係

上記の前提から、感染者数が市場の想定の範囲内に収まっているうちは、緊急事態宣言が再び発令されたとしても、基本的に横ばいで推移していくものと予想しています。

【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み(※文末参照)からすると、住宅金融支援機構が毎月発行する機構債の表面利率が発表される20日ごろのタイミングの長期金利の水準を予想することが大事になります。

20日ごろまで長期金利が今の水準のまま横ばいで推移するならば、9月の【フラット35】の金利もまた、8月からおおむね横ばいとなるでしょう。

 

過去の長期金利の推移と【フラット35】の金利推移

実際に過去の長期金利と【フラット35】買取型の金利推移を振り返ってみましょう。青い棒グラフ(左の軸)が【フラット35】買取型で、オレンジの折れ線(右の軸)が長期金利です。

長期金利と【フラット35】金利の推移

毎月20日ごろの時点の長期金利(オレンジの折れ線)の高さと、翌月に発表された【フラット35】買取型の金利(青い棒グラフ)の高さが合致しています。

これは20日ごろに発表される機構債の表面利率が、ちょうど20日ごろの長期金利によって決まっている部分が大きいことを示しています。これまではコロナショックの乱高下はありながら、コロナショック直後の4月から8月のフラット35の金利はおおむね1.3%前後で推移しています。

これは、ちょうど機構債の表面利率が発表される時点の長期金利がたまたま、同じくらいの水準で推移していたためです。今後の長期金利が前述の予想どおりに横ばいで推移するならば、【フラット35】買取型の金利も横ばいで推移しますが、もし想定外の事象によって上がれば、【フラット35】買取型の金利も上がってしまうことになります。

まとめ

この記事では執筆時点(8月上旬)に入手可能な公開情報を基礎として予想を立てていますので、その後の状況の変化によって金利動向が変化することは十分にあり得ます。

今のところ、感染者数の増加は市場の想定の範囲内にあり、かなり増えている状況下にあってもこれが金利に影響してくることはありません。またワクチン開発にしても、まだまだ開発段階であり、この新型コロナウイルスが具体的な材料視される場面は少しずつ減ってきているように思います。

ただし、その後の状況の変化によって全く逆方向に金利動向が変化することは十分にあり得ます。引き続き、日々の金利動向に目を配っておくことをお勧めします。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。

※【フラット35】(買取型)の資金調達の仕組み

フラット35の仕組み
【フラット35】(買取型)の仕組み

住宅ローンの【フラット35】(買取型)は、上図のように住宅金融支援機構が民間金融機関から債権を買い取って証券化し、機関投資家に債券市場を通じて機構債という形で販売するという仕組みになっています。この機構債は毎月20日前後に表面利率を発表し募集します。投資家たちは機構債を安全資産という考えで購入しますので、その表面利率は10年国債の利回り(長期金利)に連動する傾向があるのです。

(最終更新日:2020.11.17)
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