【新型コロナ】住まい選びで「戸建て」が見直されそうなワケとは?

新型コロナウイルス感染症の影響が拡大して、わが国でも緊急事態宣言が出され、その対象が大都市部から全国に拡大されました。そこで、積極的に推進されているのが、人との接触を避けるためのテレワークですが、その浸透は住まいのあり方、選び方などに影響を与えざるを得ません。特に、戸建てが見直されるキッカケになるのではないかと考えられます。

 

濃厚接触を避けるためには「テレワーク」が重要に

新型コロナウイルス感染症が深刻化する前から、働き方改革の一環としてテレワークが推奨されてきました。特に、緊急事態宣言後には、「人との接触を8割減らす」という目標を達成するために、テレワークがいっそう注目されるようになっています。 

20年3月に実施された、東京商工会議所の『新型コロナウイルス感染症への対応について』と題した調査では、「実施している」とする企業は26.0%にとどまっていましたが、4月に入ってから日本経済団体連合会が、会員企業を対象に行った調査では、テレワークや在宅勤務の導入率は、下図にあるように、97.8%に達しています。

テレワークや在宅勤務を導入しているか(単位:%) (資料:日本経済団体連合会『緊急事態宣言の発令に伴う新型コロナウイルス感染症拡大防止策 各社の対応に関するフォローアップ調査』)

先述の調査は一部の企業対象としたもののため、結果が顕著に表れていますが、パーソル総合研究所は3月と4月に、全国2万人超の正社員として働くビジネスパーソンを対象に、テレワークに関する緊急調査を実施しています。こちらのほうがより世間の実態を広くカバーしていそうです。

この調査結果では、3月の調査時には13.2%だったのに対し、緊急事態宣言直後の4月の調査では27.9%と実施率は2倍になっています。中小企業も含めた全体をみるとテレワーク率は3割弱にとどまっていますが、いずれにしてもテレワークが急速に拡大していることがわかります。

緊急事態宣言の長期化、外出自粛の長期化にともない、テレワークの実施も長引かざるを得ません。というより、これをキッカケに、テレワークがいっそう浸透、緊急事態宣言や外出自粛が解除されても、テレワークへの流れが続くことになるのではないでしょうか。新型コロナウイルス感染収束後のワークスタイルとして、テレワークがごく当たり前になってくるはずです。

そこで、大切になるのが、ネット環境の整備やセキュリティの確保など企業のテレワークへの取組みですが、同時に、それを実施する側のテレワーカー側の自宅の環境整備も重要になってきます。

 

住まいのテレワーク環境は整っていないのが実態

しかし、現在の住まいは、自宅で仕事をすることを前提にはつくられていないでしょうし、多くの人が困っています。

リクルート住まいカンパニーでは、新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年11月に、テレワークに関する調査を実施していますが、テレワークの課題として、「仕事に適した共用部が充実していない」「仕事専用スペースがない」「仕事用のデスク・椅子がない」などの課題を挙げる人が多くなっています。

結果、テレワークの実施場所は、「リビングダイニング」がトップに挙がり、落ち着いた環境で取り組む環境にはない人が多くなっています。なかには、「カフェ・喫茶店」でテレワークしているとする人も少なくありません。せっかくの在宅勤務なのに、仕事のために三密のなかに出かけていては、何のためのテレワークが分かりません。

そのため、リクルートの調査では、テレワークのために自宅の環境整備を行ったとする人が70%に達しています。

具体的には、

「仕事の資料、PCなどの置場、収納スペースをつくった」(28%)、
「ネットワーク環境を整えた」(26%)
「ホワイトボード、モニター、プロジェクターなどを用意した」(24%)
「部屋の一角に仕事用のスペースをつくった」(23%)

――などが挙がっています。なかには、テレビ会議の映り込みを意識して、背景を変えたといった、いじらしい努力もあります。

 

テレワークがキッカケで引越しを考える人も

注目しておきたいのが、テレワークをキッカケとしての引越しの実施状況。下図にあるように、10%の人が、テレワークのために「引越しを実施した」としており、「前向きに引越しを検討し始めている」も27%に達しています。

テレワークきっかけでの引越しの実施有無(単位:%) (資料:リクルート住まいカンパニー『テレワーク×住まいの意識・実態調査』) https://www.recruit-sumai.co.jp/data/upload/1c89c428b47ca0906f27259f7f648242.pdf

この調査の実施時期は先にも触れたように、19年11月ですから、緊急事態宣言が出され、テレワークがさらに増加している現在では、テレワークをしやすい住まいに引っ越したいと考える人は、もっと多くなっているのではないでしょうか。

 

テレワークの加速で住まい選びのあり方が変わる

新型コロナウイルス感染症対策としては、密閉、密集、密接の三密を避けるのが何よりも重要といわれています。その点、マンションには、共用部には、不特定多数が出入りするエントランス、多数の人が乗り降りするエレベーター、多くの人が行き来する共用廊下などの不安な空間があります。

人と人の間を2m程度開ける、いわゆるソーシャルディスタンスを取りにくい空間が多数存在します。
専有部についても不安があります。たとえば、昔ながらの田の字型プランで、廊下の長い間取りだと、換気が悪く、住まいの中に三密が生まれて、家族間の濃厚接触の度合いが高まってしまうように思います。

 

感染症対策は戸建てのほうが取りやすい?

マンションに比べれば、戸建ては家族全員の努力によって外部からの影響をある程度防ぐことができるのではないでしょうか。基本的には不特定多数の人が出入りする共用部がないので、住まいの中で、他人と接触する機会は限られています。
宅配便や郵便に関しては、宅配ボックスを設置すれば、接触を回避できますし、どうしても玄関での対応などが必要になったときには、お客が帰ってから、ドアノブなどをこまめに消毒すればいいでしょう。

厚生労働省では、家族に新型コロナウイルスの感染が疑われる場合の対策として、手洗いやうがい、マスク、換気などの基本的な対策のほかに、次の8ポイントを挙げています。

(厚生労働省ホームページより)https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000601721.pdf

 

感染症対策のしやすさもマイホーム選択のポイントに

たとえば、感染が疑われる人は2階でできるだけ安静にしてもらい、2階のトイレは本人だけに使用を限り、食事を運ぶときにはマスクをしてドアの前に置くなどすれば、安全に対応できるのではないでしょうか。

報道などで、病院などでは「清潔」「不潔」のゾーン分けが大切といわれています。用語が適切かどうかの問題はあるにしても、戸建てなら、それがある程度可能になるでしょう。

マンションでも、100平米を超えるような広い住まい、メゾネット式のマンションなどであれば同じような対策を取れるでしょうが、一般的には戸建てのほうが徹底しやすいのではないでしょうか。

最近は、マンションの新築価格が高騰して、一般的な会社員には手が届かない物件が多くなったこともあって、マンションを諦めて戸建てを選択するといった動きもみられるようになっています。新型コロナウイルス感染症拡大によって、戸建てが改めて見直され、そうした流れが加速されるかもしれません。

(最終更新日:2020.05.26)
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