今年は梅雨時期の天候不良による日照不足と長雨、そして冷夏とも思える低い気温により、野菜価格が高騰しています。野菜価格の高騰は家計を直撃します。私たちはどのように対応すればよいのでしょうか。
気象庁によると、天候不順の影響で7月の日照時間は暫定値ですが、東日本で平年の37%、西日本で49%にとどまったということです。これは、1946年の統計開始以降、7月としては最も短いものです。7月は降水量も暫定値で東日本、西日本ともに平年の2倍を超えており、統計史上で最多となっています。この結果、野菜価格が高騰しています。筆者も先日スーパーに行った際、普段の値段からかけ離れた値段を見て驚きました。
農林水産省が発表した食品価格動向調査(8月3~5日、全国平均)を見てみると、調査対象となっている野菜8品目のうち、レタスは1キロ891円と平年の倍、キャベツも平年比1.5倍の価格となるなど、多くの品目で高騰しています。スーパーに行った際に受けた印象がデータに裏付けられました。
総務省統計局が発表している家計調査によれば、二人以上の世帯における消費支出の内訳(2020年3月)を見てみると、消費支出全体が292,214円となっているなかで食料への支出が79,509円と全体の27.2%を占めていることが分かります。消費の3割弱を食品が占めるわけですから、野菜価格の高騰が家計へ大きな影響を与えることは間違いありません。
過去の野菜価格高騰の時はどうだった?
直近で野菜価格の高騰というと、2016年の夏が天候不良だったことから、秋に野菜価格が高騰したことが記憶に新しいでしょう。ここでは2017年1月に総務省が発表した「価格高騰時の消費者行動を探る」の内容に基づいて、1年中購入することができ、秋に旬を迎えるレタスを例に見てみましょう。
総務省統計局が発表している消費者物価指数の内訳を見てみると、2016年10月は前年同月比で54.5%も上昇していることが分かります。
現在の野菜価格の高騰に近い価格上昇が確認されますが、この時は家計がどのように対応していったのか。同じく総務省統計局が発表している家計調査の内訳を見ながら確認していきましょう。
小分けで買うことで出費を抑える
秋に野菜価格の高騰があった2016年と、平年並みであった前年の各指標を見てみます。まずは1世帯当たりのレタスの購入量の推移です。やはり値段の高騰があった2016年の10月は前年より購入量が35.0%も減少しています。
下図はレタスの平均購入価格の推移ですが、10月は前年の同月よりも1.5倍も高くなっていたわけですから、購入量が減少するのも仕方ないことでしょう。この2つのデータから、価格が高騰すると買い控えが生じるということが裏付けられます。
しかし、もう少し踏み込んだ分析をしてみると、ただ単に買い控えたという以外の行動を読み取ることができます。
レタスを購入した世帯の行動を推計するため、同じ資料から「購⼊頻度(100世帯当たり)」を「購⼊世帯数(10,000分⽐)」で割った値を計算してみた結果が下表になります。
購入量は価格高騰の関係で前年から大きく減少しているものの、購入頻度はほぼ変わっていません。「1購入あたりの購入量」が236gとなっていますが、一般的なレタス1玉の重さが300g、半玉は150gと仮定すると、約6割の人が1玉を、約4割の人が半玉を購入していると考えられます。
たしかに、スーパーへ行けばレタスに限らず、大根やキャベツも半分や4分の1にカットされたものが売っていますから、こういうものを活用するのもよいでしょう。
その他にも家計は工夫をしている
小分けの野菜を買うこと以外にも、過去のデータを見てみると家計の工夫が見られます。たとえば、消費者庁が発表した「平成29年2月物価モニター調査結果(速報)」のなかで、「あなたの世帯の消費行動についてお伺いします。昨年後半の天候不順等の影響により、野菜の価格が上昇しましたが、その際の購買行動について該当するものを全て選んでください」という質問項目に対して、最も多かった回答は「価格の変化が少ない別の野菜(もやしなど)を購入した。」というものでした。
もやしだけでなく、カイワレ大根なども栽培施設で育てられる野菜であるため、あまり天候要因で価格が左右されず、安定供給される傾向にあります。野菜が高いから野菜を食べないという選択をするのではなく、このように工夫をして野菜の摂取量を減らさないということも、暮らしの知恵といえるでしょう。