6月19日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために自粛を求められていた都道府県境をまたぐ移動が全面解除されました。休業要請も全面解除となり、ついにプロ野球も開幕しました。新型コロナ問題が発生する前には完全に戻っている訳ではないものの、徐々に日常が戻りつつあります。今回は物価、つまりモノの値段からコロナが私たちの消費活動にどのような影響を与えたのかを確認しましょう。
物価は下落傾向にある
6月19日、総務省は「消費者物価指数(2020年5月)」を発表しました。総合指数は前年同月比+0.1%、価格変動の激しい食料(酒類を除く)とエネルギーの価格を除いた総合指数は同+0.1%となっています。
まだ物価は前年同月比でマイナスにはなっていませんが、もうマイナス目前まで来ています。消費者物価指数は統計の性質上、消費税も含んだ価格で計算しています。ということは、昨年10月に消費増税(8%→10%)があった訳ですから、今回の2020年5月分の消費者物価指数は増税の影響で前年同月比の数字は大きなプラスになっていないといけない訳ですが、前述の通りマイナス目前という非常に弱い数字となっています。つまり、実態としてはもう物価が継続的に下落するデフレーション(デフレ)状態にある可能性もあります。
外出自粛に適応している
その消費者物価指数も内訳を細かく見てみると、私たちの消費行動の変化を確認することができます。なぜなら、私たちの消費行動がモノの値段にも影響を与えるからです。
外出自粛要請に伴い、3月下旬頃から徐々に在宅勤務を社員に指示する企業が増えてきました。それに伴い、家で自炊をしたり、仕事をする人が増えたことから、電子レンジ、電気炊飯器、プリンタへの需要が高まり、それぞれ価格が上昇しています。
しかし、電子レンジについては既に価格が頭打ちしたようにも見えます。6月に入ってからは電車も混み始め、街中での人出も増えてきていますから、6月分のデータではさらに価格上昇率が下がるかもしれません。
しかし5月の段階で変化も
このデータは5月のデータになりますが、様々な品目で興味深い価格変動が確認されます。たとえば、自炊をする人が増えたことにより、キャベツなどの生鮮野菜への需要が高まったことで、生鮮野菜の値段は上昇しています。
一方で、買いだめの対象となり品薄状態にあったマスクは、感染者数の増加が落ち着いたことや、マスクの供給量が増えてきたことで、やや価格が落ちています。マニアックではありますが、イベント自粛によって価格が下がっていた「切り花」は、母の日の影響でカーネーションの需要が高まったことから、価格が上昇しています。
私たちの給与は減ってしまうかも
生鮮食品を除く総合指数を構成する523品目のうち401品目は前月から上昇しています。上昇した品目数は2015年3月以来の多さとなっているにも関わらず、物価の上昇率が非常に弱いのは、主にエネルギー価格が全体を下押していると考えられます。
「モノの値段が下がるんだったら、安く買い物ができるからいいじゃないか」という人がたまにいますが、生産コストが下がったから値下げをするのではなく、モノを売るために値下げをしているのであれば、企業からすればその値下げは利益を削って行っている値下げに過ぎません。
しかし、企業は利益を出す必要があるため、削れるものは削っていくはずです。それは、人件費や投資でしょう。そうなると、結果的に私たちの給与は下がっていくでしょうし、投資をしないことで企業は成長できませんから、さらに給与を下げられてしまうかもしれません。
給与が下がると人々は買い物を控えますから、企業はさらにモノの値段を下げようとします。このような負のスパイラルを「デフレスパイラル」と言います。この現象が起きてしまうと、日本経済は非常に厳しい環境に陥ることになります。普段は経済指標なんて興味ないという方も、今後は物価指標に注目してみてはいかがでしょうか。