新型コロナウイルスの流行を機に、テレワークやローテーション勤務を経験し、働き方や住まい方について改めて考えた方も多いのではないかと思います。通勤時間のロスなくプライベートな時間を確保できる職住接近の重要性を感じた人もいれば、郊外の広々とした家で仕事もプライベートも充実させたい、と感じた人もいるでしょう。
働き方が新しくなれば、住まいも変わります。ウィズコロナ、アフターコロナの家探しとその注意点について考えてみたいと思います。
「新しい働き方」と「新しい住まい選び」
厚生労働省による「働き方の新しいスタイル」は「テレワークやローテーション勤務」「時差通勤でゆったりと」「オフィスは広々と」「会議・名刺交換はオンライン」「対面での打ち合わせは換気とマスク」といった内容が盛り込まれています。従来の毎日決まった時間に全員が通勤するスタイルから、在宅勤務やテレワーク、時差通勤と、新しい働き方が進みました。
新しい働き方に伴い、働く人は通勤に縛られず、個人の価値観による住まい選びができるようになるでしょう。
例えば、会社の近くに住めば通勤時間を短くして、仕事後の子育てや家事の時間、プライベートな時間を充実させることもできます。職住近接で狭くてもすぐに子育てや食事作りに取りかかれるメリットは、通勤時間がないテレワークで実感した人もいるでしょう。
逆に通勤日数が減り、時差通勤ができるようになれば、郊外やプチ田舎に広々とした自宅を考えることもできるでしょう。テレワークや在宅勤務が増えることで、自宅で仕事をする機会が増えれば、家の中に仕事の為のスペースはなくてはならないものになります。自分自身のワーキングスペースを持ち、子育てものびのびとできる郊外の広い一戸建ても選択肢の1つです。
「土地を購入して理想の家を建てる」という選択も?
地価の高い東京や大都市の会社の近くに住むには、土地を買って家を建てたいと思っても、予算の都合上マンションや建売住宅しか買えない、という人も多いはずです。例えば東京都23区内で1坪150万円の土地を30坪買えば土地だけで4,500万円です。これに3,000万円の建物を建てると7,500万円となり、諸費用や引っ越し費用、家具家電をそろえれば8,000万円以上にもなりかねません。
しかし、郊外に1坪30万円で土地を買えれば、30坪で900万円です。3,000万円の家を建てても3,900万円ですから、土地を購入して好きな家を建てる、という選択肢が広がります。
逆に予算が8,000万円の人が、土地を買って家を建てた場合を考えてみましょう。郊外に1坪30万円の土地を100坪買っても3,000万円です。諸費用に500万円残したとしても4,500万円の家を建てられます。1坪75万円の家を建てれば60坪の豪邸が建てられますね。郊外に家を求めることで、広く理想的な家を手に入れられる可能性が高まります。
広い家の注意点
しかし、土地は安くても家が広く建築費が高くなると、購入時や購入後にかかるお金に注意が必要です。家が広くなることで税金や火災保険料、修繕費なども高額になるからです。また、エコ住宅の性能は向上しているとはいえ、家が広くなれば冷暖房費など光熱費も高くなります。具体的にどのような費用がかかるのか、以下の2つの事例で比べてみましょう。
(1)都内の一戸建て:土地:30坪(99平米) 4,000万円 建物:30坪(99平米) 2,000万円
(2)郊外の一戸建て:土地:100坪(330平米) 2,000万円 建物:70坪(231平米) 4,000万円
1.購入時の消費税が高くなる
家を購入するとき、土地には消費税はかかりませんが、建物には10%の消費税がかかります。
(1)建物代金 2,000万円×10%=200万円
(2)建物代金 4,000万円×10%=400万円
(1)と(2)の事例では、土地建物の総額はどちらも6,000万円ですが、建物代金が高い(2)の郊外の家の方が消費税は200万円高くなります。
2.火災保険料が高くなる
万が一火災が発生したときに支払われる損害保険金は、契約の時に設定した保険金額が上限となります。保険金額は、建物を正しく評価した一定の金額の範囲内で付けないと、損害通りの保険金が支払われません。保険会社によりますが、たとえば事例(1)で、建物の評価額が2,000万円とすると、その70%~130%の範囲内で保険金額を設定すれば、全焼したとき保険金額の100%を受け取れます。しかし、保険料を安くしようと70%未満すなわち1,400万円未満に設定すると、経年劣化の分を差し引いた保険金額しか受け取れません。
建物の構造や補償内容が同じであれば、事例(1)と(2)では建物の面積が広く評価額が高い(2)の火災保険料や地震保険料の方が高くなります。
3.固定資産税・都市計画税が高くなる
建物の面積が広ければ、その分固定資産税や都市計画税も高くなります。土地は地価が高いと固定資産税の評価額も高くなるため、面積だけでは決められませんが、建物は同じグレードの建物であれば面積が広い方が固定資産税の評価額は高くなります。自治体ごとに評価は異なりますが、土地は時価の7割、建物は建築費の5割~7割が目安となります。
土地、建物とも固定資産税の税率は1.4%、都市計画税の税率は0.3%ですが、住宅の場合土地と建物に一定の軽減措置があります。新築住宅であれば、一戸建ては3年間、マンションは5年間、120㎡までの固定資産税が1/2減額となります。土地は200㎡まで固定資産税評価額が1/6、200㎡超の部分は1/3です。都市計画税は建物に減額はありませんが、土地は200㎡までは評価額が1/3、200㎡超の部分は2/3となります。
事例(1)と(2)で比べると、(1)は土地、建物とも99平米ですので、すべての面積が減税の対象となります。しかし、事例(2)では建物231平米、土地330平米ですので、建物は111平米については減額を受けられず、土地も130平米については減税幅が半分になってしまいます。
建物は年々劣化するので評価額は下がり、固定資産税も下がっていきますが、建物が新しく固定資産税が高い当初3年間、120平米を超えた111平米については1/2の減税を受けられません。土地についても200平米を超えた130平米について評価額が1/6から1/3となってしまうので、固定資産税額は2倍になります。
4.修繕費が高くなる
家が広ければその分当然リフォーム代が高くなります。外壁や屋根の塗り替えなど、30坪の家と70坪の家では単純に考えて2倍以上の塗料や足場が必要です。広い家であるほど戸建て住宅であっても計画的な修繕費の積立が必要です。
その他、敷地が広ければ庭木の手入れ、日常生活の中での冷暖房費など光熱費もかかります。引っ越し後の生活費アップも想定した資金計画を立てておきましょう。
まとめ
ウィズコロナ、アフターコロナの住まいについて考えてみましたが、今後の働き方や家探しがどうなるかはまだ分かりません。しかし、テレワークやローテーション勤務で、「通勤」という縛りが緩和され、通勤時間が少し長くなっても郊外の一戸建てを選択することも可能でしょう。
もちろん、テレワークを経験したからこそ通勤時間は無駄、と考え会社の近くで家探しをするのも選択肢の1つです。
選択肢が増えた分、自分にとっての幸せな生活とは何だろう、としっかり考えての家選びがより大切になります。自分や家族の働き方や希望する生活のスタイルをよく話し合い、希望の生活スタイルが実現できる家選びが住宅購入成功の秘訣になるでしょう。