コロナ禍の「住宅ローン金利」、今後の変化を知るポイント

新型コロナウイルスによって日本経済がダメージを受ける中、これから住宅ローンを組もうと思っている人にとっては、今後の住宅ローンの金利がどうなるのか気になる方も多いかと思います。今回は、コロナ禍で政府が打ち出した住宅ローンに関連する施策や金利影響について見てみます。

各国の住宅ローン返済に関する施策

まずは、コロナ禍での日本も含めた各国の返済猶予策に関して見ておきます。

※2020年4月15日時点での情報、今後変化する可能性あり

このように、各国ではいち早く、住宅ローンに関する具体的な返済猶予策が制度化され、明確化されています。一方で日本では、まずは収入補填をすることに重点が置かれているため、住宅ローン返済猶予に関しては特に制度化されているものはありません。

結果として、各金融機関に個別に相談することで、返済額の軽減や返済期間の延長などの対応が受けられる、といった状況です。

なお、これは今回の緊急時だけでなく平時にも言えることですが、住宅ローン返済では絶対に避けるべきは「延滞」です。

金融機関に相談するのをためらう人もいますが、金融機関に相談をするメリットは、具体的な返済の見直しプランを客観的に見ることで、「他の支出の削減でカバーできる範囲」なのか「条件変更後、返済を元に戻した場合に返済を継続できるのか」など、見直しのための材料を得ることができる点です。

また、金融機関に断りなく延滞してしまうと、本来受けられるはずであった金利優遇が受けられず、適用金利が上がり、さらに家計負担が増えてしまう可能性もあります。もちろん今回のような新型コロナウイルスといった特殊な環境下では、金利優遇の解消措置はとられないかもしれませんが、とにかく、少しでも将来の返済に不安があるときには早めに金融機関に相談することをお勧めします。

住宅ローン減税などは適用期間が延長

では次に、住宅取得の優遇制度について、どのような特例措置が実施されるのかも見てみます。

現在、住宅設備の部品の製造をしている中国の工場の閉鎖や稼働状況の悪化により設備機器・建材の納期や工期の遅れにより、予定通りに新居に入居できないケースも起きており、こういった状況は今後もある程度は続くことが予想されます。

これを受けて、政府は「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策における税制上の措置」において、住宅ローン減税の適用要件を緩和したりするなどの特例措置をとっています。
具体的には、新型コロナウイルスの影響で2020年12月末までに入居できなかった場合でも、一定の条件を満たしていれば、住宅ローン減税拡充の適用が受けられるようになっています。

また、次世代住宅ポイントについても、新型コロナウイルス感染症の影響により事業者から受注や契約を断られるなど、令和2年3月末までに契約ができなかった場合でも、令和2年4月7日から令和2年8月31日までに契約を行った場合にはポイントの申請が可能という、特例措置がとられています。しっかり確認をして、優遇施策の使い漏れのないようにしたいですね。

変動金利型ローン、今後の金利はどうなる?

新型コロナウイルスが落ち着いたら、住宅を購入しよう、あるいは借り換えをしよう、という人もいるかもしれません。これから住宅ローンを組む、という人にとっては、将来の金利がどうなりそうか、固定金利型を選択するべきか、変動金利型にするのか気になるところです。では、まず、直近の金利情勢を見てみましょう。

変動金利型ローンの金利は、コロナ前、コロナ後、ほとんど変わりはありません。

というのも日本ではもともと異次元と呼ばれる金融緩和政策が続けられており、すでにマイナス金利政策が導入されていることもあり、変動金利の基準である短期金利はマイナス圏での推移が続いています。そのため、変動金利型は、政府日銀が金融政策に修正を掛けない限り、しばらくはほぼ変わらないと考えていいでしょう。

ただ、金融機関によっては、金利優遇幅を変える可能性はあるため、その点はチェックが必要といえます。

固定金利型ローンの金利動向は?

一方で固定金利型ローンの指標となる長期金利は、新型コロナウイルス感染拡大の影響下で、一時期、乱高下しました。というのも、長期金利は国内の金融政策だけでなく、海外の経済情勢など将来の予測が反映されるからです(下記グラフ参考)。

出典:日本相互証券株式会社   新発10年国債利回り 終値

 

直近1年で見ると、2019年7月に米国FRBが10年半ぶりに長期金利を引下げ、それに伴い、日本の長期金利も大きく下落したことをきっかけに、【フラット35】の金利も9月に史上最低金利を付けました。
その後、米中貿易摩擦進展の期待から市場が上向いたことをきっかけにして金利が上昇傾向にありましたが、2月中旬以降は新型コロナウイルスの感染拡大不安から金利が急落、その後、トランプ大統領の大型減税期待を受けて逆に金利が急上昇と乱高下しました。

現状は、ほぼ0%近くで落ち着いている状況です。なお、市場の変動を受けて、【フラット35】の金利もほぼ連動して変化していることが分かります。

住宅ローンの金利も長期・短期ともに低水準が続く

では、今後の金利はどうなるのでしょうか?

日本を含めて各国は金融緩和政策を強化して、金利を低めに誘導しています。また、緊急事態宣言が解除されても特に旅行関連や飲食関連を中心に、経済が本格的に回復するには数年程度の相当な時間がかかると予想されます。

少なくともワクチンが開発され、治療に効果的な薬が明確に提示されるまでは、景気の回復を見込むのは難しいため、現状の金融緩和政策は相当期間継続される可能性が極めて高いでしょう。

結果的には、金利の低下傾向は当面続き、住宅ローンの金利も変動・固定ともに引き続き低水準が続くと予想されます。

ただ、長引くマイナス金利政策と今回のコロナ禍で、さらに金融機関の財政が悪化し、将来的には金利優遇幅が減少する可能性もあります。今後の金利動向だけでなく、各金融機関の業績や金利優遇幅の変化にも注意を向けておく必要がありますね。

※本記事は、執筆者の最新情勢を踏まえた知識や経験に基づいた解説を中心に、分かりやすい情報を提供するよう努めておりますが、内容について、弊社が保証するものではございません。

(最終更新日:2021.04.27)
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