世界的な新型コロナウイルスの感染拡大がとまらず、日本でも昨年から生活環境が一転した方も多いかと思います。3月25日に東京都の小池知事が週末の外出自粛要請をし、4月7日には7都府県に対して緊急事態宣言が発令されました。
政府や地方自治体の方針が変化していくにつれて、企業も従業員の働き方に対して変化を求められています。既に読者の中でも多くの方が在宅勤務に切り替わっていると思いますが、その変化が住宅市場にも大きな影響を与えそうです。
国内総人口は減少も東京には依然として人が集まる
総務省が発表した住民基本台帳に基づく人口動態調査によれば、2019年1月1日時点の国内の日本人は約1億2,478万人でした。前年から約43万人減少し、過去最大の減少となりました。前年から減少するのは10年連続のことです。
都道府県別で人口が伸びたのは東京とその近隣県(埼玉、千葉、神奈川)、そして沖縄です。名古屋圏(岐阜、愛知、三重)や関西圏(京都、大阪、兵庫、奈良)も伸びそうなものですが、こちらは大きく減少しています。
筆者は3月下旬からほとんど自宅からは出ず、最低限の買い物をする時にだけ外出する程度ですが、仕事の関係上、どうしても電車で移動しなくてはいけないことが数回ありました。たしかに、通常よりは電車に乗っている人は明らかに少なくなっています。これだけ人口が増えていく東京にあって、通勤ラッシュや帰宅ラッシュの時間帯でここまで人が少ないのは、日本の企業がしっかりと在宅勤務に切り替えているということなのでしょう。
着実に浸透する在宅勤務は不可逆である
まだ在宅勤務に関する公的な統計はないのですが、日本経済団体連合会(経団連)が会員企業を対象に調査をして公表した「緊急事態宣言の発令に伴う新型コロナウイルス感染症拡大防止策 各社の対応に関するフォローアップ調査」(2020年4月14日~4月17日に実施、406社回答)によると、なんと97.8%がテレワークに取り組んでいると回答しています。個人的な印象より明らかに高い数字のため、1人でも在宅勤務を許可されているがいる場合は「テレワークに取り組んでいる」としているのかもしれません。
「従業員の8割以上がテレワークを実施している」という回答は、金融、電力、医薬や生活必需サービスなどの事業を除くと36.1%、7割以上8割未満が16.3%で、7割以上とした企業は52.4%となりました。
新型コロナウイルスの問題がいつ収束するのかは誰にも分かりません。しかし、治療薬や特効薬が開発され、多くの国民が免疫を得たとしても、この在宅勤務というスタイルは不可逆であり、多くの企業が在宅勤務制度を続けるでしょう。
将来予想されるこの動きは、不動産市場にも大きな影響を与えます。分かりやすい所で言えば、オフィスビルの需要は大きく下がるでしょう。そして、私たちの住宅事情にも大きく影響があると考えます。
歴史は繰り返す
実は人口の移動について、データを見ながら振り返ってみると、一定の動きを繰り返していることに気付きます。戦後から70年代半ばまでは、現在と同様に東京に人が流れ込んでいました。しかし、住宅数の絶対的な不足が生じたため、郊外での住宅建設が始まりました。1966年に着工され、1971年から入居開始となった「多摩ニュータウン」がいい例でしょう。
郊外での住宅建設が加速したことで、1980年には1970年と比較して都市部の人口が減少しました。1985年から2005年までは都市部の人口は減少しましたが、そこからは再び都市部の人口は増加へと転換します。直近の状況は冒頭で述べた通りです。
再び都市部へ人口が流入し始めたのには、夫婦の働き方の変化が大きいと考えます。2000年頃から共働き世帯と専業主婦世帯の数が逆転し、そこからは差が一気に開いていきました。共働きとなると、オフィスから近くないと家事や育児が厳しいため、やはり都市部に住むようになるのでしょう。
しかし、都市部への流入→流出→流入ときて、今回の新型コロナウイルス問題を経て、今度は再び流出へと転換するかもしれません。在宅勤務制度のメリットを知ってしまった会社員を元通りの勤務体系に戻すのは難しいでしょう。
やはり狙いは東京の近隣県
下図はアルヒ株式会社のお客様の頭金と月次返済額を年代別・都県別でグラフにしたものですが、東京都内に住宅を買うと費用が圧倒的に高くなることが分かります。
在宅勤務が普及すれば、東京都内にオフィスがあったとしても、近隣県に住むことが可能になります。筆者も埼玉県で生まれ育ったため、よく分かりますが、各県内、比較的大きな駅の近くに行けば、大型のスーパーやショッピングモールがあるため、東京都にわざわざ出向かずとも事足ります。
新型コロナウイルス問題の収束後、新たに住宅ローンを組んで家を購入する人たちにも大きな変化が生じそうです。