30代になると友人と話しをしていても住宅購入の話題が出ることも増えてくると思います。その際に関東近郊でよく出るテーマが、「高いお金を払って東京都内に家を買うか、東京都外に家を買って購入金額を抑える代わりに職場までの長い通勤時間は我慢するか」、というものです。
このテーマには何が正解というものはないと思いますが、今回は公開されている統計データとアルヒ株式会社が保有する融資実行データの両方を見ながら、より議論が深まっていくようなインサイトを提供しようと思います。
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住宅購入に必要な費用は各都県で差がある
地方から上京して東京都内で就職した友人に話を聞くと、「地元より東京の方が年収の高い仕事が多い」という話を聞くことがあります。アルヒ社の年代別年収データを関東の4都県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)ごとに分類分けしたものが下図ですが、データでもその現象が確認できます。
その結果、東京都への人口流入が進み、人口の一極集中が進んでいるのですが、東京都に満足のいく住居を構えようとするとなかなか経済的に厳しいのが実情かと思います。アルヒ社のデータを住宅購入時に必要な頭金の金額と、住宅ローンの毎月返済額を上図と同じく、関東4都県で年代別に確認してみましょう。
やはり、頭金・毎月返済額ともに東京都が他の3県よりも圧倒的に高いのですが、興味深いのは他の3県の中でも神奈川県、千葉県、埼玉県の順に金額が低くなっていくことにあります。
筆者は埼玉県所沢市の出身で、高校は川越方面だったこともあり、埼玉の路線状況についてはそれなりに理解をしているつもりですが、実は都内へのアクセスはそれほど悪くはありません。そうなると、仕事は東京都内でしつつも、埼玉県に住居を構えるのも合理的と言えるかもしれません。
家族構成や将来設計も念頭に置こう
住宅を購入する際は金額も気になりますが、広さや間取りも気になるものです。そして、そこには現在の家族構成や将来設計に大きく影響を受けます。1人で生活するのか、夫婦で生活するのか。はたまた子どもが何人いるか、親と一緒に暮らすかなど、それによって必要となる広さや間取りが決まり、それに応じて購入金額も変動していきます。
総務省統計局が発表した『住宅及び世帯に関する基本集計』(平成30年住宅・土地統計調査)によれば、持ち家1住宅当たりの居住室が狭い都道府県という区分けで全都道府県を順位付けしてみると、2018年は「東京都が最も狭い」となっています。また、関東4都県のうち、神奈川県も5位に入っています。
(参考)都道府県別でみる住宅状況~住宅及び世帯に関する基本集計(確報値)より~
先程の頭金や毎月返済額などのデータと併せて考えれば、4人家族が東京都内で住宅を購入するのであれば、それなりの広さの住宅が必要になり、かなりの金額がかかることになるでしょう。そして、関東でいえば神奈川県でもそれなりの金額になることが分かります。
東京にこだわる必要はあるのか?
このようなデータを見ると、東京都内にこだわる必要性がどこまであるのか、という考えも出てくるのではないでしょうか。それでは、これまで見てきたデータを少し違う角度から分析してみようと思います。
下図は東京都と他の3県の各データ(年収、毎月返済額、頭金)について、年代別に東京都のデータからの乖離率(どれだけ差があるのか)を算出したものになります。
これまで見てきたように、全データにおいて東京都の方が金額が高い(つまり他3県のデータの下方乖離率が大きい)ことが分かるのですが、年収以上に毎月返済額と頭金の下方乖離率が高いことが分かります。
これはつまり、東京で働いた方が高い年収を得られるが、それ以上に他の3県で住宅を購入した際に得られる経済的メリット(毎月返済額の低さ、頭金の低さ)が大きい可能性が高いことを示しています。
新しい働き方を考慮しよう
新型コロナウィルスの世界的な感染拡大もあり、日本ではリモートワークが少しずつ浸透しています。また、コロナウィルスの件が発生する前から、シェアリングエコノミーというテーマでカーシェアリングやコワーキングスペースなども少しずつ普及していました。
このような新しい働き方が更に進んでいくと、東京都内の会社で働いているからと言って、東京都内に住居を構える必要性もだいぶ薄れてくるでしょう。住宅購入を都内にするか、都外にするかという議論については、このようなデータも参考にしながら議論をすると、より現実的な議論ができるようになると思います。
調査概要
調査方法:住宅ローン専門金融機関ARUHIの【フラット35】融資実行データより抽出
調査対象期間:2019年1月~12月
対象エリア:1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)
居住区分:自己居住用
※年収は主債務者のみの平均(収入合算は含まず)