新型コロナウイルスの感染拡大により、政府は2020年2月末に、イベントの中止や延期、規模縮小、および全国の小中高校の休校などを要請しました。感染者の約8割は軽症ですむものの約2割は重症・重篤化するといわれる新型コロナウイルス感染症で万が一のことがあった場合、生命保険等の取り扱いはどうなるのでしょうか。
新型コロナウイルス感染者の約80%が軽症、14%が重症、6%が重篤
厚生労働省の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の2020年3月2日時点の見解によると、これまで国内で感染が確認された症状のある人の約80%が軽症、14%が重症、6%が重篤となっています。なお、重症化した人も、約半数は回復しているといいます。
重症化リスクの高い人は、高齢者、糖尿病・心不全・呼吸器疾患などの基礎疾患や透析を受けている人、免疫抑制薬や抗がん薬などを用いている人、妊娠中の人などです。また、重症化する人は、普通の風邪の症状(微熱、咽頭痛、咳など)が出てから約5~7日程度で、症状が急速に悪化し、肺炎に至るケースが多いようです。
契約している生命保険や傷害保険の取り扱いはどうなる?
感染の拡大を抑制するため、数多くのイベントが中止になっています。イベントについては、主催者が興行(イベント)中止保険に加入していても、一般的には感染症を直接の理由とする中止や延期は補償の対象外で、主催者に多額の損害が発生するといわれています。
では、私たち個人が加入している生命保険や死亡保険、傷害保険などの取り扱いはどうなるのでしょうか。
【新型コロナウイルス感染症に関する生命保険や傷害保険の取り扱い】
・生命保険
上の表を見てもわかるとおり、生命保険会社が提供している死亡保険、医療保険、就業不能保険などについては、新型コロナウイルス感染症への罹患の有無にかかわらず、保険金や給付金の支払い対象になります。
・損害保険
一方、損害保険会社が提供している傷害保険は、基本的にはケガの補償です。新型コロナウイルス感染症はケガではなく疾病に該当するため、保険金や給付金の支払いの対象にはなりません。したがって、国内旅行保険やレジャー保険に加入して、観光や行楽先で感染した場合でも補償されません。
・損害保険(海外旅行保険)
海外旅行保険は、ケガだけでなく感染症を含む疾病等も補償する損害保険です。上の表には、海外旅行保険の補償の中の感染症に関するものを記載しています。
新型コロナウイルス感染症の場合、潜伏期間が1~12.5日(多くは5~6日)(厚生労働省ホームページ:2020年3月3日時点版より)と長いため、上表の「旅行行程終了後72時間(3日)以内に治療を開始」にあてはまらず、疾病死亡、疾病治療費用・救援費用の補償の対象にならない場合があります。
また、旅行のキャンセルや中断に関わる費用を補償する旅行変更費用については、保険の契約後に渡航先に対する退避勧告等が発せられるなどしなければ補償の対象にならないため、これから中国や韓国、イランに渡航して新型コロナウイルスに罹患しても補償されません。
なお、海外旅行保険は、提供している損害保険会社によって補償の種類が異なっており、同種の補償でも新型コロナウイルス感染症の取り扱いが異なっています。また、感染症の今後の状況によって取り扱いが変更される可能性もあるため、加入前にしっかり確認をしたほうがよいでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスは今後も感染が拡大することが予想されます。また、未知のウイルスだけに新しい情報が日々更新され提供されています。常に正しい情報を把握するように努め、自分が感染しないように、基本的な習慣を身に付けて実行したいものです。生命保険や医療保険に加入していない方は、このことをきっかけに、万が一の場合に備えて加入してはいかがでしょうか。
(参考)厚生労働省ホームページ:新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について(令和2年3月3日版)