築浅より「築深」⁉ 首都圏では中古がマンション市場の主役に

首都圏のマンション市場では、2016年に年間の中古マンションの成約件数が、年間の新築マンションの発売戸数を上回りましたが、17年、18年と両者の数値は拮抗した状態が続き、大きな差はつきませんでした。ところが、19年ではいよいよ大差がつきそうで、後に振り返れば、19年は“中古マンション主役元年”だったということになりそうです。

2016年に中古マンションが新築マンションを逆転

首都圏のマンション市場では、長く新築マンションが主役の座を務めてきました。2000年前後には年間発売戸数が10万戸近くにも達したのに対して、中古マンションの成約件数は年間2万戸台が長く続きました。新築市場が中古市場の3倍、4倍の規模を誇ってきたのです。

それが、新築マンション発売戸数は急速に減少、2016年には3万5,772戸に減ったのに対して、中古マンションの成約件数は着実に増えて3万7,189戸に達し、初めて中古マンションが新築マンションを上回る逆転現象が発生しました。
当初は、そのまま中古マンションが新築マンションを大きく引き離して主役の座を奪うのではないかとみられましたが、2017年には新築3万5,898戸に対して、中古は3万7,329戸、2018年には新築3万7,132戸に対して、中古は3万7,217戸とほとんど拮抗した状態が続きました。新築マンションもギリギリのところで踏ん張って、簡単には主役の座を明け渡さなかったのです。

2019年は“中古マンション主役元年“になる

それが、2019年に入って、急速に様相が変わりつつあります。図表1にあるように、年初から中古マンションの成約件数が着実に増えてきたのに対して、新築マンションの発売戸数は勢いが衰え、両者の差は急速に拡大、10月までの累積では中古マンションが、新築マンションより1万戸以上も多くなっているのです。

例年、首都圏の新築マンション市場では年末の12月に一時的に新築マンションの発売戸数が増えるのですが、それを見込んだとしても年間では1万戸前後の差がつくことになるのではないでしょうか。

つまり、首都圏のマンション市場においては、2019年は“中古マンション主役元年”になるとみられるわけです。
ですから、首都圏でのマンション選びに当たっては、これからは新築だけではなく、中古も念頭に置いておかないと、なかなか気に入った物件を見つけることができなくなるのかもしれません。

図表1 首都圏新築マンション発売戸数と中古マンション成約件数の累計

首都圏新築マンション発売戸数と中古マンション成約件数の累計
資料:新築マンションは不動産経済研究所『全国マンション市場動向』
 中古マンションは東日本不動産流通機構『月例マーケットウォッチ』

中古マンションなら新築の6割以下で買える!?

なぜ、こんなに中古マンションが売れているのか、それにはさまざまな理由があります。

新築に比べて物件数が多くて選択肢が広い、完成前の”青田売り“が中心の新築と違って、中古は実物を見ることができる、さらに、最近の新築は一部の再開発物件を除いて、駅からの徒歩時間が長くなる傾向があるのに対して、中古なら駅前や駅近で探すことができる、などが挙げられます。

しかし、それより何より、価格の安さが第一の魅力でしょう。

図表2をご覧ください。これは、首都圏の新築マンションの平均価格と、中古マンションの成約価格の推移を折れ線グラフに整理したものです。一見して分かるように、新築と中古の平均価格には大きな差があります。2009年の中古マンションの平均は新築の約55%で、2018年は約57%です。2018年でみれば、新築より2,500万円以上安くて、新築の6割以下の価格で手に入ることになります。

しかも、このところは、新築マンションの価格上昇によって、新築と中古の価格差がどんどん広がっています。2009年なら両者の差は2,000万円ほどだったのが、2018年には2,500万円以上に拡大しているのです。

図表2 首都圏マンションの価格動向       (単位:万円)

首都圏マンションの価格動向
資料:新築マンションは不動産経済研究所『全国マンション市場動向』
中古マンションは東日本不動産流通機構『首都圏不動産流通市場の動向(2018年度)』

新築価格の頭打ち傾向のなか、両者の差が縮まる可能性も

ただ、2017年と2,018年を比較すると、両者の価格差は縮まっています。2017年の新築マンションの平均は5,908万円で、中古マンションは3,195万円でした。価格差は2,713万円に達していたのが、2018年には2,538万円に減っています。
中古マンションが新築マンションの何%で買えるのかという数値をみても、2017年には約54%だったのが、2018年には価格差は約57%に上がっています。

新築マンション価格が頭打ち傾向になって、若干とはいえ下がっているのに対して、中古マンションはここ数年、ほぼ同じピッチで上がっているため、少し差が小さくなったわけです。

新築マンションはどう考えても、消費者の購買力からみて高くなり過ぎていますから、もうこれ以上には上がりにくくなっています。その新築に対して割安感のある中古に消費者の関心が向かっていくと、中古価格はこのまま上がり続けて、新築との差は段階的に縮小していくことになります。

その意味では、中古マンションは値上がりする前に買っておくのが得策ということになるのかもしれません。

価格が安いのは建築後の経過年数の長い物件が中心

ただ、その場合注意しておきたいのは、中古マンションの安さのメリットを享受できるのは、竣工後の経過年数の長い、いわゆる“築深物件”が中心ということです。

図表3をご覧ください。これは、首都圏の建築後の経過年数別に中古マンション成約価格をグラフにまとめたものです。

図表3 首都圏中古マンションの平均価格の推移     (単位:万円)

首都圏中古マンションの平均価格の推移
資料:東日本不動産流通機構『築年数から見た首都圏の不動産流通市場』

築0~5年の“築浅物件”だと、新規登録価格が5,712万円で、成約価格は5,411万円です。2018年の新築の平均価格は先にみたように5,871万円ですから、新築価格とさほど差はありません。これでは、わざわざ中古物件を買うメリットはありません。立地条件などの関係で、どうしてもこの物件がほしいといった事情がある人でなければ、あえて中古にする必要はないでしょう。

中古マンションの価格面でのメリットが出てくるのは、経過年数の長い物件です。グラフから分かるように、特に築21年以上になれば、成約価格は2,500万円台に下がり、築26年以上では2,000万円を切るなど、築浅物件の半額以下まで下がります。

築深物件を見極めることが重要に

この“築深物件”、見極めは簡単ではありません。年月とともに傷んでくる部分が多くなってきますし、耐震性や断熱性など最新のマンションでは当たり前になっている基本性能が当たり前にあるわけではありません。

ですから、基本性能に関しては建築家などの専門家にインスペクションなどを依頼して、物件に間違いないかどうかをチェックしてもらった上で、自分でも何件も物件を見て回り、見極める目を養っていくことが重要になります。

安さだけに踊らされて買ってしまうと、補修やメンテナンスの費用などが嵩み、結果的にさほどのお買い得ではなかったということになりかねません。“築深物件”のなかから、ほんとうにお買い得の物件を見つけるためには、それなりの努力が必要ということです。

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