高齢化が深刻な日本では、高齢者世帯の過半数が単身または夫婦のみで暮らしており、その多くは自宅での生活を望んでいるといわれています。住み慣れた我が家で長く過ごすためには、どのようなことが重要になるのでしょうか。
東京ガス株式会社都市生活研究所が発行した都市生活レポート『寒い住宅の健康リスクを知ろう!高齢者が安心して住める家』によると、「家の暖かさ」が長く健康で暮らすポイントであることが分かりました。
高齢者の約65%は、自身の身体機能が低下した後も自宅へ住み続けることを希望
国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の世帯数の将来推計(2018年推計)」によると、65歳以上の高齢者世帯における家族構成は、「夫婦のみ」または「単独世帯」が年々増加しており、2035年には69.9%まで上昇すると考えられています。このような高齢者は、慣れ親しんだ住まいでの暮らしを望む場合が多いようで、内閣府の「第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果(2015年)」では、自分の身体機能が低下した場合の住宅として「現在のまま、自宅に留まりたい」と答えた人が49.3%、「改築の上、自宅に留まりたい」という人は15.8%に上り、高齢者住宅や老人ホームへの入居を望む人を上回っています。
高齢者が暮らす住まいは健康リスクが高い!?
国土交通省の「住宅・土地統計調査」(2013年)によれば、高齢者が暮らす住まいの7割が戸建住宅(持ち家)であり、そのうち半分が1980年以前に建築されたことが分かっています。このような住宅は住宅性能の現行基準を満たしていないため、住宅内で発生するヒートショックやけが、病気といった健康に関するリスクが高いと考えられます。
ところが、東京ガス都市生活研究所が20~74歳の男女を対象に行ったアンケート調査によると、「今後の生活で重視したいこと」で「住まいの充実」を選択した人は1割程度に留まり、住まいへの関心・優先度が低い様子がうかがえました。一方で、「健康に関すること」を選択した割合は、高齢になるほど高く、60代以上では8割を超えています。この結果から、住まいの健康リスクが知られていない可能性が考えられます。
住宅の「温熱環境」を改善すれば健康リスクが下がる!?
それでは、住まいにはどのような健康リスクが潜んでいるのでしょうか。国土交通省が実施した「スマートウェルネス住宅等推進事業調査」によると、床付近の室温が低い家はさまざまな疾病を起こす危険性が高いことが分かっています。例えば、「暖かい家」「足元の寒い家」「全体が寒い家」の3群に分けて高血圧の通院リスクを比較すると、「足元の寒い家」と「全体が寒い家」は「暖かい家」より約1.5倍もリスクが高まるようです。
このような健康リスクと、高齢者が暮らす住宅の状況を受け、国土交通省は2019年3月に「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドライン」を策定しました。この中では高齢期に起こりやすくなる住宅内での健康リスクを防ぐために、特に重要な項目として「温熱環境」が挙げられています。
愛着のある自宅で長く生活するためには、「家の暖かさ」の重要性に目を向け、床暖房の設置や断熱リフォームといった住まいの備えを始めてみると良いようです。
ニュース提供元:PRTIMES
情報提供元:東京ガス株式会社都市生活研究所