内閣府の消費動向調査によると、エアコンの保有率(二人以上世帯/2019年)は90.9%となっており、ほぼ全ての家庭で1台以上エアコンを保有していることが分かります。今や生活に欠かせない家電の一つといえるエアコンですが、夏と冬以外は稼働していない家庭が多いのではないでしょうか。朝晩の冷え込みが厳しくなり、いざエアコンが必要となった時に、異臭や故障など思わぬトラブルで慌てないためにも、冬本番を迎える前に必要な準備をしておきたいですね。そこで、ハウスクリーニングや家事代行のプロ「カジタク」の押江将さんに、エアコンの試運転の重要性とその手順について聞きました。
試運転って本当に必要?
ダイキンが行った「エアコンスイッチオンテスト」によると、エアコンの試運転実施率は30.7%。約7割の人がエアコンの試運転をせずに使用していることになります。「中には試運転をする方もいらっしゃるのかもしれませんが、私は試運転をしたというお客さまを担当したことがありません。実際にエアコンを使用してみて、カビによる臭いが気になってクリーニングを依頼されるケースが圧倒的に多いですね」と押江さん。プロの実感としても、シーズン前に試運転をしない人のほうが多いようです。
そもそもエアコンの試運転は必要なのでしょうか。「エアコンをしばらく使っていない場合、故障やカビの臭いの確認をするために、試運転をすることをおすすめしています。エアコンが必要なシーズンに入ってエアコンを使用し、そこで初めて臭いや故障等のトラブルに気づいても、すでにクリーニングや修理業者は繁忙期に入っています。繁忙期は依頼をいただいてもすぐに対応することが難しく、お客さまをお待たせする場合があります。試運転をする時期としては、エアコンを本格的に使用する1、2ヶ月前が理想的です」と押江さん。前述のダイキンによる調査でも、エアコンの点検・修理の際に困ったエピソードとして以下が挙げられており、修理までに日数がかかってしまうことを不便に感じた人が多いようです。
・真夏にエアコンが壊れたにもかかわらず修理まで数日待たないといけなくなり、その間エアコンが使えず困った。(26歳女性/広島県)
・本シーズンに入った直後の故障が何度かあり、そういう時期は電気店も大抵多忙なので、なかなか修理に来てもらえず大変なことがあります。(52歳男性/兵庫県)
・週末に故障したため、サービスマンが点検に来るまでに日にちがかかった。(43歳男性/埼玉県)
エアコンの試運転、手順とチェック項目
次に、家庭でできるエアコンの試運転の手順とチェックポイントについて押江さんに教えていただきました。
エアコンの試運転の手順
1. エアコンの電源を入れる。
2. リモコンで操作する。
3. 冷房は16~18℃、暖房は30℃で30分運転する。
(室内の温度と設定温度が近いと、試運転中に運転を停止してしまう場合があるため、最低温度or最高温度に設定を。)
エアコン試運転時のチェックポイント
・電源が入るかどうか
・冷たい風or暖かい風が出るかどうか
・リモコン操作でルーバーが上下左右にきちんと動くかどうか
・異臭や異音がしないかどうか
・異常を示すランプが点灯していないかどうか
・室内機から水漏れが発生していないかどうか
・カビが生えていないかどうか
・自動お掃除機能付きエアコンの場合、お掃除ロボが動くかどうか
試運転は掃除の前に
「カジタクのエアコンクリーニングの際にも、上記のポイントは最初にチェックしています。故障している場合は修理が必要となるため、家庭でエアコン掃除をする場合も、まずは試運転をしてから掃除に取り掛かるのがおすすめです」と押江さん。
家庭用エアコンは安いものでも数万円はすることから、生活家電の中でも高額な電化製品といえます。できれば故障が原因で買い替えたりすることなく、使い続けたいですよね。故障を防ぐために日頃から家庭でできることを押江さんに尋ねたところ「フィルターなど外すことのできる仕様になっているパーツは、定期的に洗浄した方がよいと思います。フィルターの掃除は、お風呂場などでシャワーを使って丸洗いすると簡単かつ楽にほこりを取ることができますよ。ただし、それ以外のパーツを自分で分解洗浄すると、故障につながる場合があるためやめたほうがよいでしょう」
そのほかの注意点として「エアコンの稼働中に吹き出し口の中を掃除したことにより、中のファンが故障したという事例を聞くことがあります。エアコン内部の掃除をする時は安全のために電源を切った状態にすることをおすすめします」と教えてくれました。
さらにカビの発生を抑える方法として、「特に冷房使用時になりますが、エアコン使用後に30分~1時間ほど、送風モードか内部クリーンモードにしておくと、エアコン内部を乾燥させることができます」とのこと。一度発生したエアコン内部のカビを、自分で除去するのは難しいもの。カビ発生を抑えるために、ぜひ実施したい豆知識ですね。
まとめ
エアコンを本格使用する1~2ヶ月前に試運転をすることで、シーズン前に故障を発見、繁忙期を迎える前に修理依頼をすることが可能です。また、試運転をしてみてカビによる臭いやエアコン内部のほこりが気になる場合は、プロによるエアコンクリーニングサービスを利用するのもよいでしょう。
取材協力:株式会社カジタク