自転車に関わる事故を防ぐため、いわゆる「自転車条例」を定める自治体が増えています。身近で便利な「自転車」のリスクに備える保険について確認してみましょう。
各地の自治体で、自転車条例制定
燃料を使わないので地球にもお財布にもやさしい、身近な乗り物である「自転車」。子どもも大人も利用する便利な乗り物ですが、ケガや事故のリスクが高い乗り物でもあります。
自分で転ぶこともありますし、車やバイクとぶつかって被害者になることも、歩行者にぶつかって加害者となってしまうこともありますよね。自転車に乗っていて、あるいは、歩行者として自転車とすれ違って、ヒヤっとした覚えのある人も多いのではないでしょうか。自転車に乗っていて加害者になった場合の賠償金は数千万円に及ぶ場合もあります。小学生が自転車に乗っていて歩行者に深刻なケガを負わせ、9,500万円を超す賠償金を支払わなければならなくなった事例もあります。
このような深刻な事態にもなり得る自転車事故を防ぐため、近年、全国各地の自治体で自転車の安全な利用を促進する条例が制定されています。その自治体数は、公益財団法人日本交通管理技術協会によると、平成31年4月1日時点で88。条例の内容は自治体によって異なりますが、自転車の安全で適正な利用のための取り組みや自転車損害賠償保険への加入義務化などが定められています。
たとえば、静岡県の「静岡県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例」では、交通ルールの遵守やマナー向上、交通安全教育、自転車の安全適正な利用について定められており、2019年10月1日には自転車損害賠償保険の加入義務化や児童・中学生の通学時のヘルメット着用義務化が施行されました。
加入中の損害保険を確認して、自転車による事故にも備えよう
このように自転車事故防止への意識が高まる中、万一の事故で数千万円以上の賠償金を負うリスクを考えれば、自転車の利用者はその事故に備える保険加入を検討すべきでしょう。自転車の事故に対する保険として必要な補償は、「被害者への賠償責任を果たす補償」と「自分のケガに備える補償」の2つです。
表1:自転車事故に備えるための保険
最近は、個人賠償責任保険と傷害保険を組み合わせた自転車専用の保険が多数発売されており、インターネットやコンビニエンスストアで申し込めるものもあります。
ただし、加入中の自動車保険や傷害保険などの特約で、自転車事故に関する補償がすでに得られている場合もあります。新たに自転車保険に加入する前に、ぜひ、加入中の損害保険をチェックしてみましょう。
表2:事故による損害を補償する自転車保険等の種類一覧
たとえば、自動車保険に「個人賠償責任保険特約」を付加していれば、契約者やその家族が他人にケガをさせたり他人のモノを壊したりした場合に生じた損害賠償金が補償されるので、自転車事故も対象になります。また、「人身傷害補償保険特約」を付加していれば、自動車と関わる事故でケガを負った場合には過失割合にかかわらず実際の損害額に応じた補償が受けられるので、自転車と自動車に関わる事故でケガの補償を得ることができます。「自転車傷害特約」として、自転車に関わる事故によるケガを補償する特約を、自動車保険に付加できる場合もあります。
また、表2にある「TSマーク付帯保険」とは、自転車安全整備士が点検確認した自転車に貼られた「TSマーク」に付帯している保険で、傷害保険と賠償責任保険、被害者見舞金(赤色TSマークのみ)が付帯しています。TSマークには、青色マーク(第一種)と赤色(第二種)があり、補償内容が異なります(表3)。保険の有効期間はTSマークに記載されている日から1年間なので、毎年「自転車安全整備店」で有料の点検整備を受けてTSマークを自転車に貼っていれば、自転車保険に加入していることになります。ただし、通常の自転車保険に比べると補償額は少なめなので、深刻な事故の場合には損害額をカバーできない可能性もあります。
表3:TSマーク付帯保険の補償内容
このように、自転車事故のリスクに備える保険には、あなたやご家族はすでに加入している場合もあります。加入中の自動車保険や火災保険、傷害保険などの証券や約款で、自転車事故に対する補償があるのか、補償がある場合はどんな保障内容なのかを確認しましょう。補償内容がよくわからない場合には、保険会社の問い合わせ窓口等へ、聞いてみるのもよいでしょう。
もし、自転車事故の補償が付加されていなければ、自転車専用の保険を比較検討し、早めの加入を考えたほうがよいでしょう。毎日のように自転車を利用しているなら、事故が起きる可能性も毎日あるのですから。保険を利用して万一の事故に備えつつ、安全運転を心がけて、気持ちよく自転車に乗りたいですね。