バリアフリーの「バリア」とは何を指す? 街中や住宅に見られる変化

よく耳にする「バリアフリー」という言葉。内容は何となくわかっても、その意味や事例をよく知らない、という方も少なくないのではないでしょうか。今回は、「バリアフリー」の本来の意味をふまえて、駅や施設、飲食店、住宅でのバリアフリーの事例を紹介します。

バリアフリーとは

バリアフリーとは、障害がある人や高齢者が日常生活、社会生活を送る上での物理的な障害や、精神的な障壁を取り除くための施策、もしくは具体的に障害を取り除いた事物および状態を指します。元々は、障壁(バリア)を取り除く(フリー)という意味で、建築用語として使われていました。

現在では、障害のある人や高齢者だけでなく、「すべての人に対して社会参加を困難にしているバリアを取り除く」という、より広い意味で使われることもあります。

社会参加を困難にしているバリアとは

生活を送るうえで、さまざまなものが障壁になっています

一体、どのようなものが障壁となっているのでしょうか。障害がある人や高齢者の社会参加の障壁となっているのはおもに以下の通りです。

物理的なバリア

道路や公共交通機関、建築物などにおいて、利用者に移動面での困難をもたらすのが「物理的なバリア」です。

(例)
・路上の放置自転車
・狭い/急こう配の通路
・ホームと電車の隙間や段差、建物までの段差
・滑りやすい床
・座ったままでは届かない位置にあるものなど

制度的なバリア

「制度的なバリア」とは、社会のルールや制度において、障害を有するという理由で機会の均等を奪われているバリアのこと。学校の入学試験や資格試験等で、障害があることを理由に受験や免許の付与を制限することや、盲導犬の理解が不十分のため、盲導犬を連れての入店を断られるといった事例がこれにあたります。

文化・情報面でのバリア

3つ目のバリアが「文化・情報面でのバリア」。情報を入手する際に困難をもたらし、情報を得ることができないバリアのことです。

視覚障害のある人にとってのバリア
(例)
・タッチパネル式のATM
・家電機器の操作
・交差点の信号等の情報

聴覚障害のある人にとってのバリア
(例)
・鉄道駅・車内における音声のみのアナウンス
・緊急地震速報などの音による緊急時の警報・警告
・イベントにおいて手話通訳がないこと

意識上のバリア

無知からの偏見や差別、無関心など、障害のある人を受け入れないバリアが「意識上のバリア」です。人種差別もここに分類されます。

バリアフリーの事例

駅周辺をはじめ、利用者の多い施設でもバリアフリー化は進んでいます

ここからは、バリアフリーの具体的事例について。中でも、物理的バリアを取り除いた取り組みを紹介します。多くは「バリアフリー新法」で定められており、今後も障害がある人や高齢者が利用する施設が集中する地区において、バリアフリー化が進められていきます。

鉄道駅でのバリアフリー

駅でよく目にするバリアフリーといえば、段差解消のためのエレベーターやスロープの設置ではないでしょうか。

特にエレベーターは、車いす利用者が使いやすいよう、ボタンの位置を低くしたものや出入口を2ヶ所設置したもの(通り抜けられるタイプ)などを見る機会が増えました。また、階段とエスカレーターしかない場合には、車いすの昇降機が設置されています。

そのほか、プラットホームにホームドアや点状ブロックなど、視覚障害のある人の転落を防止するための設備が設けられるようになりました。

また、多目的トイレの完備や乗車券販売所での筆談対応など、鉄道駅ではさまざまなバリアフリーを実施しています。

施設内でのバリアフリー

百貨店や大型スーパーでは、車いすの人でも利用しやすい、広いエレベーターが設置されているところが増えてきました。また、車いすのままでも使える多目的トイレもよく見かけますよね。

そのほか、車いすやベビーカーの貸し出しをする百貨店や大型スーパーも増えてきており、バリアフリー化が進んでいることを感じます。

飲食店でのバリアフリー

飲食業界でも、バリアフリー対応が進んできています。たとえば、車いすの人でも利用しやすいように出入り口の段差をなくす、店内の通路を広くする、といった対応が見られます。
また、車いすや子連れのお客様でも利用しやすいよう、イスを固定式でなく移動式に変えるというケースも出てきています。写真付きのメニュー表や店員呼び出しボタンの設置もバリアフリー対応の一つといえるでしょう。

バリアフリー住宅の事例

居住スペースにもバリアフリーが施されています

日本人の高齢化が進み、住宅にも高齢者対応型のバリアフリー住宅の考え方が浸透してきました。ここからは、住まいにおけるバリアフリーの事例を説明します。家探しやリフォームを予定している場合などの参考にしてください。

浴室

手すりを設置

手すりを設置することで高齢者の転倒を防ぎます。また、手すりがあることで、子どもを抱きかかえて入浴するときも安心です。

出入口の段差を解消

古いタイプの浴室には洗面所との間に段差があり、転倒事故につながる恐れがあります。出入口の扉の近くに手すりを設置すると、さらに事故が起こりにくくなります。

浴槽の高さを適正なものに

浴槽は、40センチメートル以下がまたぎやすいといわれています。低すぎると、子どもの転落事故につながりますので注意が必要です。

床材を滑りにくいものに

昔の浴室で使われるタイル張りの床は、濡れると滑りやすく、転倒しやすいものでした。滑りにくい床材に変えることで、浴室内での転倒事故を防ぎます。

また、床の水はけをよくすると、カビやぬめりの発生が抑えられ、転倒しにくくなります。

脱衣所の温度を適温に

脱衣所、浴室と浴槽内には寒暖差があるため、急激な温度変化で体に負担がかかります。そこで、脱衣所と浴室に暖房をつけることで、このヒートショックと呼ばれる現象を防ぐことができます。

トイレ

手すりを設置

便座に腰掛けるときや便座から立ち上がるときには膝や腰に負担がかかります。手すりを設置することで動作がスムーズになります。

出入口を使いやすく

狭いトイレの場合、中から扉を開ける際に普通の開きドアだと立ち位置を変える必要があり、足腰の弱い高齢者はよろけてしまう可能性があります。ドアが2つに折れる折り戸タイプであれば、立ち位置を変える必要がなくなり、安心して使用できます。

廊下

手すりを設置

各部屋を移動するときに、必ず使う廊下に手すりを設置することで、転倒事故を防ぐことができます。

高さはメインで使用する人に合わせますが、基本は床から75センチメートルといわれています。

車いすが通れるスペースを確保

車いすで利用する人のことも考え、車いすが余裕を持って通れるスペースを確保したいものです。幅は85~90センチメートルが望ましいといわれています。

足元にライトを設置

廊下は使わないときに電気を消している家庭が多いため、真っ暗な状態で移動することもありますが、足元が見えないため転倒する可能性があります。低い位置にフットライトを設置しておけば、転倒を防ぐことができます。

居室

敷居の段差をなくす

敷居の段差は決して高いものではありませんが、高齢者の場合はつまずくこともありますので、段差は極力なくしましょう。

階段

手すりを設置

手すりを離すことなく階段を上り下りできるよう、階段の手すりは切れ目なく設置します。曲がり階段の場合は、外側の壁に設置しましょう。高さは、メインで使う人に合わせます。

玄関まわり

車いすでも使いやすい扉に

車いすに乗ったまま玄関を開ける場合、開きドアだと車いすの位置を動かさなければならないので不便です。引き戸タイプならば、車いすの位置を変えずに扉を開閉できるので便利です。

スロープの設置

玄関の土間と1階床面に段差がある場合はスロープを設置します。段差が7~8センチメートル程度でしたら市販のスロープでも対応可能です。

照明

ワイドスイッチを設置

操作部分が大きいワイドスイッチを設置することで、照明の点灯、消灯がしやすくなります。

まとめ

誰にとっても、障壁なく暮らしやすい社会になってほしいですよね。一口に「バリアフリー」といっても、場所によってもさまざまな対応方法があります。

高齢化に伴い、住宅のバリアフリー化も今後は欠かせないものになってくるでしょう。家を新築する際や、リフォームなどの参考にしてみてくださいね。

(最終更新日:2021.02.04)
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