窓を閉め切って過ごす日が増える梅雨の時期。室内のジメジメ感や、こもったニオイなどが気になりやすいですよね。不快感だけでなく、カビや有害物質などの懸念も高まるため、湿気やニオイ対策に頭を悩ませている家庭も少なくないでしょう。乾燥や湿気、結露など、1年を通じてさまざまな問題を抱えやすい日本の住宅において、快適な住環境をキープするには、湿度のコントロールが重要になってきます。そこで、「調湿してくれる壁」として注目を集める「エコカラットプラス」について、株式会社LIXILの濱田敏幸さんにお話を伺いました。
呼吸する壁「エコカラット プラス」のメカニズムと特徴
ー「エコカラットプラス」とはどのような商品なのでしょうか?
濱田敏幸さん(以下、濱田):住宅の壁面に貼る、インテリア用のタイルです。粘土鉱物を高温で焼いたセラミック素材なのですが、表面に1ナノメートル(1ミリの100万分の1)の孔を無数に開けていることで、湿気を吸収したり放出したりして、室内の湿度を調整できるのが特徴です。
ー孔で湿気をコントロールするというのは、具体的にどのようなメカニズムなのですか?
濱田:エアコンの除湿機能は空気を入れ替えることで湿度を下げ、一般的な除湿剤は湿気を吸って液体化しますが、「エコカラットプラス」は、室内の湿度が高まると孔から湿気を吸い、乾燥してくると吐き出すという、いわば呼吸をしているような状況を繰り返すことで、40~70%くらいの適度な湿度を保とうとします。また、湿気だけでなく、ニオイの原因となる成分や有害物質も吸着するので、脱臭や有害物質の低減機能もあるんですよ。
ーニオイも、孔に吸着するのですか?
濱田:はい。トイレや生ゴミ、たばこやペットなどの生活臭も孔に吸着します。ただ、ニオイ成分を分解させるのではなく、例えるなら、一気に吸ったあとに、少しずつニオイ成分を手放していくので、空気中のニオイや有害物質が低減されるといった感じですね。そのため、ずっと吸い続けたからといって「エコカラットプラス」自体が臭ってくるといったような状況にはなりにくくなっています。
ー珪藻土などとの違いはありますか?
濱田:珪藻土や昔ながらの土壁、炭なども、細かい孔に吸着することで湿度やニオイをコントロールしますので、メカニズムや性能的な面は同じです。ただ、「エコカラットプラス」は、孔のサイズをコントロールすることで、吸ったり吐いたりする量が工業的に高められているため、調湿効果は珪藻土の約6倍、調湿壁紙に至っては25倍以上と、より高い効果が当社試験で実証されています。そのため、カビやダニの繁殖や結露などの抑制も期待できます。
水はね汚れもOK、お手入れもしやすく進化
ータイルの表面に孔があるとのことですが、かかった水分を吸収してしまうなどの心配はないのでしょうか?
濱田:「エコカラットプラス」の表面は小さい孔ばかりの超微細構造となっているので、湿気よりも粒子が大きい水分や汚れはほぼ通しません。そのため、水拭きなどによるお手入れも可能になっています。なお、以前は「エコカラットプラス」のほかに「エコカラット」という商材もあり、それは表面に大きめの孔も混在していたため、水分も吸収してしまって水はね汚れのある場所での使用が難しかったのですが、現在は「エコカラットプラス」のみに統一しているので、水はね汚れが心配な場所でもご使用いただけるようになりました。
―日々のお手入れはどの程度必要でしょうか?
濱田:ドライ空間での使用であれば特にお手入れなどの必要はありません。もし汚れが気になったときは、絞った雑巾で拭いていただければと思います。頑固な汚れには、一般家庭用洗剤を使用していただくことも可能です。ただ、コーヒーがかかってしまったなどの場合は、放置するとシミなどの原因になるので、早めに拭き取っていただくことをおすすめします。
―調湿効果を高めるために、取り入れたほうがいいことなどはありますか?
濱田:環境にも左右されますが、普通の生活環境下で、適度に換気された状況であれば機能を発揮するので、晴れた日や乾燥している日などに換気は行なってほしいですね。締め切った状態が長期間続く場所や、狭い喫煙所など表面にヤニや汚れが大量に付着するような環境下では、機能が発揮しづらくなってしまいます。
豊かなデザインで部屋のアクセントにも
―どのくらいの面積に使用すれば、調湿効果が得られますか?
濱田:推奨している施工面積の目安としては、天井高2.5メートルとして、12畳のリビングで4~6平方メートル。6畳の子ども部屋で2~3平方メートルなので、だいたい床面積の4分の1以上ほどと考えていただければいいかと思います。イメージとしては、12畳の部屋で2~3メートル幅で床から天井の間の壁面に施工をすれば、推奨の施工面積が確保できているという感じですね。
―壁一面に貼らなければいけないというわけではないのですね。
濱田:張る面積が広いほど効果も高まるので、壁一面に施工されるお客様も多いですが、たとえばリビングのテレビの後ろの壁に数平米だけなど、デザイン性を重視しながら部屋のアクセントとして部分的に施工される方もいらっしゃいますよ。
―デザインやカラーの種類も豊富なのでしょうか?
濱田:デザイン性の高いものからシンプルなものまで34種類のラインアップがあり、それぞれに2~8色のカラーバリエーションを用意しています。性能はどのデザインでも変わりません。実際に施工されたお客さまからは、性能のみならず、デザイン性に対する満足度も高い評価をいただいています。
施工費用の目安と施工例
―リフォームする場合、どのくらいの金額を想定したらいいでしょうか?
濱田:まず、「エコカラットプラス」が、1平方メートルあたり「1万2,900円」「8,600円」「5,800円」の3パターンの価格設定となっているので、その金額に施工面積の平米数を掛けたものが材料単体の価格になります。そこに、接着剤や入隅の処理剤などの価格、工賃などが加わった金額が最終的な施工費用となりますが、同じ平米数でも、施工場所の条件や業者によって変わってくる部分でもあるので、住宅会社さまなどにお問い合わせください。
―3パターンの価格設定があるとのことですが、それぞれの特徴を教えてください。
濱田:1万2,900円のシリーズは、木目やストーン、レンガや布などの風合いについて最新技術を使って、高級感のあるデザインに仕上げた商品がラインアップされています。
濱田:8,600円のシリーズでは、小さいサイズのタイルを使って、凹凸感や陰影がデザインの特徴となっている商品が多いですね。
濱田:もっともお求めやすい5,800円のシリーズはシンプルなデザインが基調になりますが、和モダンに映える質感や幾何学的なレリーフのものなど、空間に表情をプラスするデザインもあります。
呼吸するように室内の湿度をコントロールしてくれる「エコカラットプラス」。快適で安心な環境を保ってくれるだけでなく、インテリアのアクセントにもなる高いデザイン性で、日々の暮らしにも彩りを添えてくれそうですね。
取材協力/株式会社LIXIL
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