何からはじめる？ マンションを高く売りたい場合のポイント

住み替えを考える理由は人によってさまざまです。しかし、住み替え先となるマンションの購入やその後の生活を考えると、自宅マンションはできるだけ高く売りたいと考えるのが人情でしょう。不動産の売買は投資家や業者でもない限り、通常なら人生で数回あるかどうかの数少ない大きなイベントです。この記事では、自宅マンションの売却を検討している人が気になる、体験者から聞いた「高く売るためのコツ」についてまとめました。

売り出す前の準備が一番大事

少しでも高く自宅マンションを売りたいなら、売却までの流れを把握し、売り出す前に必要となる準備をしっかりとしておくことが大切です。売却前の準備には、大きく4つのステップがあります。

1つ目は、「売り出し条件の整理」です。家族の生活環境や経済状況などを踏まえて、希望する住み替え時期や売却金額などを考えます。そして、売却する際には現実的にいくら以上の価格なら妥協できるか、売却する期限としていつまで待っていられるか、などの条件を具体的に整理してみましょう。条件を整理して住み替えのイメージを明確に持っておけば、その場の雰囲気や状況に流されて、希望に外れた条件で売却してしまうといった失敗を避けることができます。

2つ目の準備が、「査定」です。査定とは、売却したいと考えているマンションがいくらくらいで売れそうかという相場を、不動産仲介業者に算出してもらうことを指します。情報が多いほうがより正確な相場を掴みやすくなるため、複数の不動産仲介業者に依頼をするとよいでしょう。実際に売却できる金額は、売るときの需要によって変わってきます。しかし、相場感覚が全くない状態で売り出すよりも目安を知っておいたほうが、売却価格の設定の際や売る決断をするときに安心です。

3つ目は「売り出し価格の決定」です。自分が希望する売却条件や査定結果などを踏まえたうえで、いくらで売り始めるかを自身で決めます。売り始めの価格はその後の売却活動において重要なポイントとなるため、慎重に決めるようにしましょう。

最後のステップとなるのが媒介契約です。仲介を任せる不動産仲介業者を選び、正式に契約を結びます。主に3種類ある媒介契約の形態から自分に合った契約スタイルを選びましょう。

売り出し中は不動産仲介業者におまかせ

不動産仲介業者と正式に媒介契約を結ぶと、ついに売却活動の開始です。売却依頼を受けた不動産仲介業者はさまざまな方法で売却活動を進めていきます。

たとえば、売却活動の方法には「指定流通機構への登録」があります。指定流通機構は、宅地建物取引業法に基づき国土交通大臣が指定する不動産流通機構で、通称「レインズ」と呼ばれます。全国の不動産仲介業者が加入していて、専用のコンピューターネットワークシステムを利用し不動産仲介業者間で物件情報の交換ができるようになっています。売却依頼を受けたマンションの情報をシステムに登録すれば不動産仲介業者に情報が一斉提供されるので、購入希望者を幅広く探すことが可能です。

また、新聞の折り込みチラシやダイレクトメール、インターネットサイトなどに情報を提供する広告掲載も販売活動のひとつです。さらに、売却物件に関心を持った購入希望者に実際の物件を見てもらうため、内覧やオープンハウスの開催をすることもあります。

オープンハウスを開催する際には、周辺地域に広告を配布したり、現地に看板を出したりするなどして、集客活動も行います。これらの売却活動が高い効果を出せるかどうかは、不動産仲介業者や担当者の力量にかかっていると言えるでしょう。そのため、媒介契約を結ぶ不動産仲介業者選びは、非常に重要となるのです。

売却活動により購入希望者が現れたら、具体的な交渉を開始します。売却金額や手付金の額、引き渡し時期などの条件を調整していきましょう。室内や設備などに不具合があって、それを修繕せずに売却する場合には、話し合いにより修繕に必要となる金額分だけ売却金額を下げるケースもあります。売り主と買い主の両者が条件に承諾したら売買契約です。

契約が決まっても最後まで気を抜かずに

売買契約が終了しても、決済と不動産の引き渡しが無事に行われるまでは気を抜いてはいけません。まず、売り主は、売却するマンションの抵当権の抹消や所有権の移転登記を行います。そのため、抵当権者である金融機関には、売買契約の前に相談しておいた方がスムーズに事が運ぶでしょう。

一方で買い主は、売り主に支払うマンションの代金を用意する必要があります。一般的には、売買契約が結ばれた際、すでに物件価格の10～20％程度を手付金として支払っているため、決済時にはその残金となる物件価格の80～90％を売り主に支払います。

正しく支払いが行われたら、売り主は所有権や抵当権に関する書類をすべて引き渡します。書類を受け取った買い主は、抵当権の設定登記と所有権の移転登記を行います。抵当権や所有権の手続きは専門的な知識が必要となるので、司法書士に依頼することが一般的です。

売り主と買い主それぞれが行うべき手続きをすべて終えたら、いよいよ引き渡しとなります。引き渡しのときには、売り主はマンションに関する書類とカギ、付帯設備の説明書・保証書、そのほか必要となるものすべてを、買い主へと引き渡します。引き渡したものについてあとでトラブルとならないように、「引き渡し確認書」などを発行しておくと安心です。引き渡し確認書は通常は不動産仲介業者が段取りしてくれます。

引き渡しが終わったら、不動産仲介業者に仲介手数料を支払い、仲介手数料の領収書を受け取ります。マンション売却と買換えのあとには確定申告などの手続きも忘れないように気を付けておきましょう。

高く売るための不動産仲介業者の選び方

高く売ることができるか。ここは不動産仲介業者の手腕が問われるところです。不動産仲介業者を上手に選ぶためには4つのポイントがあります。

まず1つ目に、「一括査定サービスを利用すること」をおすすめします。査定は複数の不動産仲介業者に依頼したほうが、相場に合った金額が設定できるようになります。1社の査定結果だけを参考にして売却してしまい、相場よりも安く売ってしまって後悔するような事態は避けなければいけません。しかし、実際に複数の不動産仲介業者へ別々に査定依頼をすると、個々への対応が面倒なものです。一括で査定依頼することで、個別対応を煩雑にすることなく適正価格を知ることができます。

2つ目のポイントは、「査定額の根拠を明確にしておくこと」です。不動産仲介業者のなかには、売却依頼を受けたいために、相場よりも高い査定額を提示してくるところもあります。査定結果が高いからといって、必ずしも実際に高く売却できるわけではありません。査定結果を出すにあたり、どの点が評価を上げているのか、どの点が価格を下げてしまっているのかについて、きちんと説明してもらいましょう。明確な説明ができる不動産仲介業者は、より信頼できる業者でしょう。

3つ目は、「不動産仲介業者の媒介実績を比較すること」です。不動産仲介業者によって、地域や物件タイプなどに得意不得意があります。大手の不動産仲介会社が必ずしも営業力に秀でているわけではなく、地元に密着した個人の不動産仲介業者のほうが媒介実績の多いケースもあるものです。自分が売却しようとしているマンションと類似条件を持った物件の媒介実績を、不動産仲介業者ごとにチェックしておきましょう。

4つ目は、「自分のマンションの営業を担当する人の確認」です。どんなに優秀な不動産仲介業者であっても、担当者の力量がなければスムーズな売却活動は望めません。不明点や疑問点に対して明確に答えてくれたり、状況に応じて柔軟に対応してくれたりする担当者だと、頼りになります。

居住中のマンションを買いたいと思わせるコツ

高い買い物となるマンション購入の際には、事前に実際の家の様子を見ておきたいと考える買い主がほとんどです。内覧のときに購入希望者に気に入ってもらい、買いたいと思わせるためにはいくつかポイントがあります。特に今居住している家を売却する場合はどうしても部屋に生活感が出てしまいやすいため、より準備が必要です。

まず、部屋の印象作りは重要な準備となります。内覧者は、事前に間取りや広さといった情報を確認しています。しかし家具などが多く置いてあると、室内を実際に見たときに、思いのほか狭い物件だという印象を持たれる可能性があります。人はイメージをとらえにくい数字や図面上の情報よりも、実際に自らの目で見た印象のほうが強い影響を受けやすいものです。内覧者が来る日は、物を片付けるなどして、できるだけ部屋をスッキリとさせておきましょう。実際より広く見える部屋は、購入希望者の購買意欲を高めてくれることでしょう。

また、部屋の広さ以外に、明るさも家の印象を良くするポイントとなります。長く住んでいると暗さに慣れてしまっていることもあるため、明るくなるように意識的に準備しておきましょう。もともと、太陽の光が差し込みやすいところであれば問題ありませんが、晴れた昼間でも暗い場合には、ライトなどを付けて室内を明るくしましょう。

さらに、清潔な状態を維持しながら居住していたという印象を持ってもらうことも大切です。部屋の掃除は当然のこと、使用に伴う汚れや劣化が特に目立ちやすい水回りのお手入れには気を付けておきましょう。内覧者がチェックしやすい洋室やキッチンなどの水周りについては、プロのハウスクリーニングに依頼するのも一つの手です。

高く売るには「売り時」を逃さない

売却を考えてから実際に引き渡しとなるまでには、さまざまなステップを踏んでいかなければいけません。どの段階においても、間違った手続きが起きないように常に気を付けておくことが重要です。自分のマンションを少しでも高い価格で売却したいと考えているのであれば、売り出し前の準備は特に大切となります。売り出し前の準備を万全にしておくかどうかによって、納得する条件で、なおかつ早く売れるかどうかが決まるケースが多いからです。また、不動産の売却では、売るタイミングも価格に影響を与えます。不動産の売買相場には波があるため、マンションを売ろうと思ったら、売り時を逃さないよう早めに不動産仲介業者へ相談しておくようにしましょう。