「投資に興味はあるけど、手軽にできる方法はないだろうか」「投資に回せる元手が少ない」「細かい運用はプロに任せたい」「リスクを分散したい」そんな方が多く行っている投資法として、投資信託があります。投資信託とは、投資家から集めたお金をファンドマネージャーが株式や債券などに投資し、発生した利益を投資家に還元するという金融商品のこと。近年は100円から投資できるという手軽さも手伝って、幅広い層から注目を集めています。
投資信託とは?
銀行への預金とは異なり元本割れのリスクが伴うものですが、複数の投資先にあらかじめ分散する形で構成される投資信託は「すでにリスク分散されている」金融商品。経済動向による極端な価格の下落を防ぐという性質を持ち合わせており、短期的な値動きに一喜一憂せず、中長期的な目線で投資を行うことが可能です。
また、株式等であれば自分で銘柄を選定し、売買のタイミングも自分で決定したうえで注文を出す必要がありますが、投資信託はどのような銘柄・商品にいつ投資するかという判断から実際の取引までをファンドマネージャーが担当しますので、投資に係る心理的な負担が少ない投資法だと言えます。
これから投資をはじめるという初心者の方にはうってつけとも言える投資信託。そのイロハを具体的にチェックしてみましょう。
ひとつの商品で投資したいフィールドをカバーできる
投資信託の国内商品数は約6,000本と言われており、多種多様なものが揃っています。国内外の株式・債権・REIT(不動産)などが主な投資対象となっており、自身の投資スタイルに合わせて選ぶことができます。
例えば、日本の主要な株式に投資したければ日経平均株価225種に連動するインデックスファンド。豊富な労働人口を有する東南アジア諸国に投資をしたければ、東南アジアや新興国を中心としたファンドに、といった具合です。国を限定せず、世界中の株式や不動産に投資できるファンドもありますし、株と債券など異なる投資先にバランスよく投資できるファンドもあります。注目しているフィールドについて詳しい知識がなくても、ひとつの商品でその分野に精通したプロに資金を運用してもらえる。これが投資信託最大のメリットと言えます。
ファンドによって投資対象が異なるほか、運用のベクトルについても大きく2つにわけることができます。対象指数と同じ銘柄・比率で株式や債券を保有する方法や、定量的な分析によってその株式や債券の保有比率を工夫する方法を用い、指数の動きに連動する投資成果を目指すパッシブ運用。そして、独自の調査や分析により投資銘柄を選別し投資するアクティブ運用です。市場平均並みの投資収益の確保を目標としているパッシブ運用に対し、アクティブ運用はリスクを取って市場平均以上の投資収益の確保を目標とします。どちらが自分の肌に合っているかを精査しながら、ファンドを検討していきましょう。
基準価格と分配金
投資信託の価格は、1口もしくは1万口当たりの価格を指して「基準価格」と呼ばれています。運用結果に応じてこの基準価格は変動し、価格が公表されるのは1日に1回。市場が開いている間刻々と価格が変動する株式等とは異なりますので、注意が必要です。この基準価格が上昇すれば売却益が見込めますし、下落すれば元本割れの可能性があります。
また、投資信託の特徴として投資家に利益をもたらす「分配金」の存在があります。保有している口数に応じ、ファンドごとに異なる分配金が支払われますので、基準価格に変動がなくても分配金で利益を確保することができます。この分配金の価格、支払いのタイミングはファンドによって異なりますので、購入前には必ずチェックしましょう。
購入手数料とファンドごとに異なる信託報酬
投資する上で必要となってくる諸費用についてもおさえておきましょう。
まず購入時にかかってくるのが、証券会社や銀行などの販売会社に支払う「購入手数料」。これは購入金額の1~3%程度に設定されていることが多く、投資する金額に応じて増えるものになります。パーセンテージで見ると少ないイメージを持たれるかもしれませんが、投資額が増えるほど手数料の金額も上がりますので、ファンドを比較検討するうえでの重要な材料となります。近年は購入手数料が無料となっている「ノーロード」と呼ばれる投資信託が増加傾向にありますので、手数料をできるだけ抑えたい場合はこちらからファンドを選ぶのがよいでしょう。
投資信託を保有している間、継続的にかかるのが「信託報酬」になります。投資信託の規模の大きさを示す純資産総額に一定の割合を掛けた金額が、信託報酬として毎日自動的に差し引かれており、この割合は年0.5から2%程度に設定されているのが一般的です。指数に連動する「インデックス型投資信託」は、信託報酬の割合が低いケースが多いため、初心者にはおススメできると言えるでしょう。2018年8月にアメリカで信託報酬ゼロの投資信託が発売され話題となりましたが、このような商品はまだ一般的とは言えません。こちらも割合が少ないほど元本割れのリスクは低いと言えますので、必ずチェックすることをオススメします。
「購入手数料」と「信託報酬」をいかに削減しながら、効率のよい投資先を選ぶかがファンド選定の肝と言えます。また、株式のようにリアルタイムで一日に何度も売買できるものではありませんので、ある程度時間をかけながらファンドを検討するのが吉でしょう。
株式と同じ感覚で投資できるETF(上場投資信託)
株式投資に親しみがあり、リアルタイムで手軽に売買したいという方にはETF(上場投資信託)という選択肢もあります。銀行や証券会社で購入する投資信託とは異なり、こちらは取引所で売買を行う投資信託。比較的歴史の浅い金融商品ですが、1993年にアメリカで認可された後市場規模は急成長を遂げており、株式と同じようにリアルタイムで売買ができます。投資信託に比べ商品数では劣るものの、国内外に投資できる多様な銘柄があり、数千円から購入が可能。
しかしながら、マイナーなETFは出来高が少なく希望する価格で購入しづらいなど、ETFならではのデメリットもあります。投資信託と同様、ある程度の下調べを行ったうえで投資を行いましょう。
投資信託はNISA(つみたてNISA)、個人型確定拠出年金の対象
投資信託は、利益に税金がかからないNISAや節税に期待できる個人型確定拠出年金の対象でもあります。2016年より120万円まで拡充されたNISAの非課税枠を使い切れていない場合などは、少額から投資できるメリットを活かすチャンス。個人型確定拠出年金は「60歳まで引き出せない」というルールがありますので、長期的な目線でファンド選びを行いましょう。
個人で形成する年金である個人型確定拠出年金をはじめ、近年は「積立投信」が推奨されている傾向にあります。毎月自動で定額を投資することにより、資産形成における心理的なストレスが軽減できるほか、ドルコスト平均法による平均取得価格低下のメリットも。
定額の積立投信であれば、毎月購入する金額が決まっているため、価格が安い時には口数を多く購入することができ、価格が高い時には少なく購入することになります。これにより、一度にまとめて購入するよりも価格変動リスクを軽減することができるのです。先々のためのまとまった資金作りに、投資信託は多く活用されています。
細かい知識がなくてもリスクを抑えながら注目の投資先に余剰資金を投入できるという意味で、投資初心者にはぜひトライしてみてほしい投資信託。「リサーチにかける時間がない」「価格下落のリスクを抑えたい」と言う方は、積極的に検討してみてはいかがでしょうか。
(最終更新日:2019.10.05)