家を手に入れる機会は、人生にそう何度もあることではありません。限られた条件、選択肢の中で希望のすべてを満たすことは難しく、こだわりたかった雰囲気、欲しかった趣味の空間を諦めることもあるでしょう。そんなとき、6畳ほどの本格ログハウスが自作でき、手軽にプラスできたなら、暮らしの楽しさ/充実度がグンと増します。そんな「後付け満足」を実現してくれるミニ・ログハウスが人気を呼んでいます。その展示場を訪ねました。
建てるときから「楽しさ」が始める手作り可能なログハウス
今回、訪れたのはBESSの展示場です。1986年、国産ログハウスのブランドとして誕生し、30年以上の実績を持つBESSは、全国45拠点の自社展示場「BESS LOGWAY」を展開。ログハウスをはじめ、木の魅力を活かしたさまざまなタイプの住まいでクラス「楽しさ」を提案し、年間1000棟以上の住宅を販売しています。
そのBESSが2016年に発売を開始したのが、自作も可能なコンプリートキットのミニ・ログハウス「IMAGO」です。約2年半で販売数は300棟を超える人気商品なのです。
ログハウスとは、在来工法のように柱を立てて軸とし、壁を設置するのではなく、横にした柱を積みあげて壁面を作ります。その木だけの壁が、構造材、外装材、内装材、断熱材を兼ねます。
「キット」と言っても建材加工を事前にしているだけで、「IMAGO」も厚さ7センチのログ材を積み上げた頑丈な作り。屋内に入ると、シンプルなデザインと相まって、外観のかわいさとは趣の異なる重厚さが生む落ち着いた空間が広がります。サイズは6畳程度ですが、大きな開口部からの採光、外との一体感により、実際以上の広さを感じます。「小屋」というよりは、大きなログハウスの一室にいるような印象です。
キットの価格は120万円(税別、配送費別)。事前に必要な基礎工事費は別に必要ですが、自分で組み立てればほぼキットの予算のみで完成度の高い住空間が手に入ります。たとえば建て売りや中古住宅の間取りに何かが足りない場合、敷地に余裕があれば「IMAGO」をプラスすることで「欲しかったこだわりに空間」が実現できるのです。敷地があれば、1室間取りを増やす以上の充実が実現。その可能性を前提にすれば、家探しの視野がグッと広がるのではないでしょうか。
「住む」よりも「楽しむ」を前面に出した住まいづくり
今回取材した「BESS」は、東京都昭島市にある「LOGWAY BESS多摩」です。ログハウスの他、木の特性を活かした5つのタイプの住宅と2タイプの「IMAGO」が展示されています。ログハウスの魅力を訪ねるとBESSの榎本さんは、「木の素材が持つメリットとデメリットの両方が魅力的なんです」と言います。
夏は涼しく、冬も室内が1度温まればずっとそれを保つ。一方で雨に濡れ、陽射しに当たれば傷んでいく。「快適ですよ」だけでは収まらないのがログハウスの暮らしのようです。
「『住む』ことだけを考えたら、デメリットもあると聞くと、ログハウスを選ぶことを躊躇するかもしれません。しかし、木をメンテナンスする。自分の家や暮らしを自分で快適に保つ。その『楽しさ』は特別なもの。住んだ人にしか分からない魅力です。BESSの家に住むオーナーたちは『忙しいけど、楽しい』と言ってくれます」(榎本さん)
「IMAGO」を自作するには、大人2人以上で約2週間かかると試算されています。実際の購入者は、友人知人を募ってイベント的に作業を楽しむ人、一人で1か月かけて完成させた人などさまざま。その楽しさは、「自分で建てた」では終わらずに、住んだ後も続くそうです。
本格ログ建材を使った「IMAGO」は、従来のログハウス同様に、経年で木材が変化します。日にあたり乾くと、表面にひび割れがおき、それをメンテナンスしながら長く大切に使っていく。「ずっと関わる」ことの手間と時間も「IMAGO」の持つログハウスならではの魅力なのです。
本物のログハウスの良さを知る人たちも注目
「IMAGO」はログハウスのみのキットなので、電気や水回りの設置には、別途設計や工事が必要です。オーナーの中には、工房、ガレージなど、住まいのプラスαの空間として特別な時間を過ごすために使う人や、自宅に併設したベーカリーとして店舗として使っている人など、活用・応用はアイデア次第。
「IMAGO」の購入者にはBESSによるログハウスのオーナーも多いそうです。オーナーには、「コーチャー」と呼ばれるボランティアスタッフとして各地の「LOGWAY」でイベントの協力活動する人たちがいます。ログハウス購入予定者の率直な疑問に答え、前述の「忙しいけど楽しい」の普及に取り組んでいるとのこと。ログハウスでの生活の「本当の良さ、楽しさ」を知るオーナーたちが、「楽しさ」をさらに追加するために「IMAGO」のようなミニ・ログハウスを選択しているようです。
手軽なミニサイズ、リーズナブルな価格、自作可能な手軽さなど、「IMAGO」の魅力は分かりやすいと感じましたが、その「楽しさ」は、どうやら奥深いようです。
取材・写真提供協力:BESS
(最終更新日:2019.10.05)