タワマンは永住に不向き!? 住人から聞いた”ネガティブな声”の真相

利便性が高い立地に恵まれた眺望、ゴージャスなエントランス、充実の共有施設…。たくさんの魅力が詰まったタワーマンションの人気は、衰え知らずのように思えます。しかし、「ずっと住む場所ではない」「子育てに向かない」「健康に良くない」など、ネガティブな思いを抱く人も。今回は敢えて、タワーマンションのマイナス面にスポットを当ててご紹介します。

タワマン暮らしは快適だけど、ずっと住むつもりはない?

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国土交通省の平成25年度マンション総合調査によると、マンション所有者の17.6%が、将来の住み替えを視野に入れているという調査結果が出ています。うち51.6%の人が、住み替えたい住居形態に戸建てを挙げています。

前述の調査はタワーマンションに限らずマンション全体に対する調査ですが、株式会社読売広告社がタワーマンションで暮らす女性を対象に調査したところ、現在の住まいに72.7%の人が「満足」「やや満足」と回答。満足度の高さを感じさせるものの、「今の家に一生住み続けたい」と答えた人はわずか1.8%という結果に。将来の住み替えを視野に入れている様子がうかがえます。

タワマンの購入は、資産価値を重視?

タワーマンションが快適なのであれば、なぜ住み替えを検討しているのでしょうか。
新築マンションポータルサイトMAJOR7による2018年度「新築分譲マンション購入に際しての意識調査」によると、マンションを購入する理由で最も多く挙がったのが「資産を持ちたい・資産として有利だと思ったから」。資産価値を重視した住宅購入であることが分かります。

タワマン購入による相続税対策は今も有効?

タワーマンションと言えばこれまで、富裕層の相続税対策として活用されてきました。タワーマンションの高層階は販売価格や賃貸に出した際の家賃が高額なのに対し、相続税評価額が低かったためです。固定資産税は、1階でも最上階でも等しく専有面積によって按分(あんぶん)するため、階数やそれに伴う眺望、部屋の向きといった付加価値が価格に反映された販売価格に対し、割安感があった訳です。

しかし、2018年1月1日以降に引き渡しのタワーマンションから、固定資産税の計算方法が変わりました。中層階の固定資産税を基準に、高層階になるほど固定資産税が高く、低層階になるほど安くなります。以前ほどの節税効果はなくなったわけですが、まだまだ「タワマン節税」はまだ有効と考える人が多いですし、2017年以前に完成しているタワーマンションであれば、税制面は従来通り。今後も当面は、資産価値重視でタワーマンションを購入する人が多そうです。

タワマンは子育てに向かない?

幼少時からタワーマンションの上層階で暮らしていると、身体感覚が育たないと指摘する人がいます。

タワマン上層階では学べないものとは?

タワーマンションの高層階は窓が多く開放的なつくりが主流ですが、高層階になるほど風が強くなること、安全面への配慮などから、ほとんどの窓が開閉できないFIX窓になっています。そのため、自然の風を感じながら生活することが難しいかもしれません。鳥のさえずりやセミの鳴き声も、なかなか聴こえません。室内は常に一定の温度に保たれ、季節の変化や温度差に対し、鈍感になりがち。

子どもの感性を育むために、意識的に家から出て散歩をしたり、外遊びをさせたりしなければ、五感が刺激される機会を失ってしまう可能性があります。室内に観葉植物を置く、積極的に外出するなど、自然と触れ合う時間をつくることで解決できそうです。

タワマン購入者の増加で、保育園や学校が不足

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タワーマンションが林立するエリアでは、子育て世代の転入者が急速に増え、子育て環境の整備が追い付いていない現状があるようです。保育施設が足りず、「子どもを預ける施設がない」という、いわゆる待機児童問題が起こっています。
朝日新聞が2016年から公表している待機児童問題「見える化」プロジェクトによると、武蔵小杉のタワーマンション群を有する川崎市の、2018年4月時点の隠れ待機児童を含む合計人数は2,868人。認可外施設の利用以外に選択肢がない、仕事に復帰できないといった事態が起こっています。

また、東京23区のうち、半数以上の区で「居住年数が長い世帯を優先して入園させる」としています。東京オリンピックの開催に向けた再開発とともにタワーマンションの建設ラッシュとなった中央区や江東区、山手線新駅誕生に向けて開発が進む港区なども含まれており、一部エリアでは待機児童問題に拍車をかけています。

タワマン高層階での暮らしは健康によくない!?

気圧による影響

タワーマンションの高層階で暮らせば、恵まれた眺望や開放感を満喫できます。しかし、最近は地上から100メートルを超えるマンションも増えているため、気圧による健康被害を心配する声もあるようです。また、高速エレベーターを日常的に利用している人の中には、耳がつまった感じや塞がった感じがする”耳閉感”に悩まされる人もいるようです。

Mさんは娘さんの居住用に、湾岸エリアのタワーマンションの高層階住戸を購入。実際に娘さんが何回か宿泊したそうですが、なかなか寝付けず、毎日寝泊まりするのは難しいと判断し、現在はセカンドハウスとして活用しているそうです。寝付けない理由について、Mさんは「高層階による気圧の変化で体調を崩しやすいタイプだったのでは?」と分析しています。

果たして本当に、高層階による気圧の変化は健康に影響を及ぼすのでしょうか?

気象予報士の話によりますと、基本的には大きな影響はないとのこと。計算上、地上から100メートル高いところに上ると11~12hpa(ヘクトパスカル)程度は気圧が下がります。この程度であれば、日々多くの人が感じている気圧変化です。ただし低気圧や台風の接近といった気圧の変化が大きくなる天候となった場合、戸建てに住んでいる人よりもタワマン高層階の人ほどが更に低い気圧を感じることになります。

最近は気圧変化による頭痛などをもたらす“気象病”も話題となっていますが、天気によって体調が変わりやすい方は注意した方がよさそうです。

乾燥しやすい環境

「花を飾っても枯れやすい」「肌が乾燥して保湿が追い付かない」「机の上に置いたサンドイッチがパサパサになってしまった」など、タワーマンションの高層階に住んでいると乾燥が気になるという声があります。前述のMさんは、フレグランスの減りがとても早いことから、乾燥しやすいことに気づいたそうです。

鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造のマンションは、木造住宅と比べて気密性が高く、エアコンを利用すれば、除湿効果により乾燥しやすい環境です。高層階であれば、より顕著に乾燥を感じるかもしれません。

※詳細は「勝どき駅近くのタワーマンションを購入。美しい夜景やスパを楽しむMさん」を参照

まとめ

華やかな生活を連想しがちなタワーマンションですが、住む人の家族構成や生活状況、体質などによって、快適な生活となるか否かが変わってきます。憧れの気持ちばかり先行してしまうと、いざ住んでみてから後悔する可能性もあります。

しかし、今回取り上げたようなリスクがあることを事前に把握していれば、まずは賃貸で高層階の暮らしを体験してみる、敢えて中層階や低層階の住戸を購入するなど工夫しながら、自分に合ったタワーマンション暮らしを実践できるのではないでしょうか?

(最終更新日:2019.10.05)
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