「マイホームを購入する際は、物件価格の1~2割に相当する頭金を用意すべし」こんな話を聞いたことがある人が多いのではないでしょうか。しかし、住宅金融支援機構が発表した2017年度の「フラット35利用者調査」によると、【フラット35】で借り入れをした7万7,964人のうち、2万1,864人が頭金なしで住宅を購入(※)しています。全体の約28%にあたる人が「頭金ゼロ」を選択しているのはなぜなのでしょうか?
実際に、頭金なしで住宅を購入した人々の住宅購入者ストーリーをまとめました。
頭金を貯めるより先に、住宅ローンを組みたい!?
頭金を十分に貯めてから住宅を購入したいと考えている人は多いでしょう。しかし、賃貸住宅で暮らす期間が長くなるほどに家賃が発生し、いくら家賃を払ってもその家は自分のものになりません。「一刻も早く住宅を購入することで住宅ローンの返済を進め、早期に完済した方が良いのでは?」と考える人もいます。
27歳で住宅購入を決断!
結婚から5年。27歳のときに建売住宅を購入したTさんは、早い段階で住宅ローンを組むことで、リタイア前に完済できると考えたそうです。3人のお子さまの養育費が嵩む中での住宅購入とあって、頭金はゼロでしたが、借り入れ審査を通過。現在は着々と返済中です。無理なく借り入れて、3つの子ども部屋や広い庭など、子育て環境をととのえることができました。
30歳で借り入れ。定年までの完済を目指す
Mさんは、保険業に従事する奥さまの助言もあり、30歳になったタイミングで住宅購入を決意。気に入った間取りの建売住宅を見つけました。
住宅ローンは「審査が通りやすいのではないか」と感じた、当初固定金利型(固定金利期間5年)の商品を選んだそうです。しかし、当初の融資可能額は2,500万円。物件購入価格の3,780万円からはかけ離れていました。一旦は購入を諦めかけたそうですが、不動産会社の担当者が熱心に交渉を重ね、希望額を借りることができたそうです。
現在は住宅ローンを返済しながら、ボーナスを変額保険で運用中。その資金をもとに繰り上げ返済を行い、Mさんが定年となる60歳までに完済することを目標にしているそうです。
頭金と年齢の関係については、こちらの記事「頭金ゼロは4人に1人!? 年齢によって変わる住宅購入時の「頭金」の重要性」も参考にして下さい。
手元に資金があっても敢えて頭金には使わない人も!
頭金ゼロ=預貯金ゼロとは限りません。預貯金は十分にあるものの、敢えて頭金には使わない道を選んだ人もいます。
マイホームの頭金を接骨院の開業資金に充当
新築マンションを購入後、毎月12万円程度の住宅ローン返済を続けてきたSさん。管理費や修繕積立金、駐車場代を合わせると月々17万円ほど支払っていたそうです。接骨院を開業してからは店舗の家賃も加わり、より大きな負担に。マンションを売却後、賃貸住まいを経て、中古の注文住宅を買い直しました。
夫婦で無理なく返済できる借入金額は試算の結果、3,000~3,500万円程度。対して購入した物件の価格は1,900万円と、余裕がある金額でした。頭金も準備をしていたそうですが、接骨院のために日本政策金融公庫から借りた開業資金を先に完済することに。半年後、頭金ゼロで住宅ローン契約を結んだそうです。現在、月々の返済額は5万8,000円。支払いはラクになり、3匹の猫や亀と戸建てライフを満喫しているそうです。
他の借り入れがあっても頭金ゼロで購入できる!?
既に何らかの借り入れがある人にとって、住宅ローンの頭金を用意することは容易ではありません。潤沢な頭金の用意があれば借り入れできる可能性が高まることは間違いありませんが、他の債務があり、頭金ゼロでも住宅購入を叶えた人がいます。
自動車ローンの残債があっても頭金ゼロで借り入れ
結婚を機に住宅購入の検討を始めたAさんは、数々希望条件をクリアした建売住宅と出会いました。結婚式と2度の引っ越しを経ていたため、当時手持ちの資金がなく、頭金はゼロ。しかも自動車ローンの残債があり、予定していた変動金利型の住宅ローンは組むことができなかったそうです。
そんなとき、保険会社の担当者におすすめされたのが、【フラット35】S。アルヒ株式会社で、無事に全額の借り入れができ、現在は順調に返済中とのこと。月々の返済金額は、前居の家賃+駐車場代程度でまかなえているそうです。
オーバーローン&頭金ゼロでも全額借り入れ
Sさんは、6年ほど暮らした新築マンションの買い替えを決意。毎月12万円返済していた住宅ローンの負担を軽減したい思惑もあったそうです。しかし、お住まいのマンションを売却しても収支はマイナスで、いわゆるオーバーローンの状態でした。実際に、3,340万円で購入したマンションは半年後、2,600万円で売却しました。
マンションの売却額は2,600万円。対して、買い替えた新築マンションは2,350万円。余裕を持った金額で審査を進めることができたため、オーバーローン&頭金ゼロでも借り入れができたそうです。その結果、自然が間近な住環境を手に入れるとともに、月々の住宅ローン返済は月8万円となり、心身ともにゆとりある暮らしを叶えました。
頭金ゼロのフルローンを組む場合でも、手付金や諸費用は必要!
「頭金ゼロ」という言葉から、住宅ローンを組む際には手元に全く現金がなくても購入できそうな印象を持つ人が少なくないようです。しかし、住宅価格の全額を住宅ローンでまかなう場合も、手付金や諸費用が別途必要です。ちなみに、契約時に支払った手付金は、決済のタイミングで戻ってきます。
同居するお母さまの援助で、手付金を支払い
お母さまと女2人暮らしのSさんは、終の棲家を求めて家探しを開始。不動産会社には当初から「頭金ゼロ」「勤務先の社歴が約1年」という状況を伝えていたそうです。
購入を決めたのは、女性プランナーがリノベーションを手掛けた中古マンションでした。しかし、正社員期間が短いことと預貯金が少ないことから、住宅ローン審査は難航。メガバンクや地方銀行では審査が通りませんでした。最終的に、アルヒ株式会社の変動金利(当初固定金利型・5年)で住宅ローンを組めることになりましたが、クレジットカードのボーナス払いを完済するなど手間がかかったそうです。また、頭金はゼロでも手付金は現金で用意が必要です。Sさんは、お母さまから200万円の援助を得て、購入を実現したそうです。
マンションの手付金については、こちらの記事「マンションの“手付金”って何? いつ、いくらかかるもの? 基礎知識を解説」も参考にして下さい。
1年かけて諸費用を貯め、2軒目を購入
40歳の時に新築マンションを購入したNさんは、より大規模な高層マンションを求め、40階を超える新築のタワーマンションを購入しました。しかし、納骨堂を購入したばかりのタイミングで、預貯金はゼロに近い状態。1年近くかけて、諸費用分の100万円を貯めて、頭金はゼロで住宅ローンの借り入れを行ったそうです。前居は売却か賃貸に出すか、シミュレーションで比較した結果、貸し出すことに。前居と比べて住宅ローンの返済額も、駐車場代・管理費・修繕積立金といった諸費用の支出も増えましたが、前居の家賃収入でまかなえているそうです。
なお、諸費用は「諸費用ローン」でまかなう方法もあります。諸費用ローンについては、こちらの記事(「【フラット35】なら諸費用ローンも住宅ローンの金利で借り入れ可能! どちらがお得か総返済額を比較」)も参考にしてください。
まとめ
頭金を準備せずに住宅ローンを組めば、借入金額が多い分、月々の返済負担が大きくなります。しかし、最近は住宅ローン金利が最低水準ということもあり「手元に資金をできるだけ残してフルに借り入れした方がいい」と考える人も少なくありません。早く返済をスタートさせれば早期に完済できる事も事実です。
借り入れ段階の年齢や家族構成、借入金額などにより、頭金を用意すべきか否かが変わってきますので、まずは一度、FPなどお金のプロに相談してみてはいかがでしょうか?
(最終更新日:2019.10.05)