悲しいことに子どもを狙った事件や犯罪は年々増え続けています。大切なわが子を守るため、親としてできることは? 子どもに伝えておくべきことは? 子どもの安全対策について、防犯対策セキュリティのパイオニアであるセコムの舟生岳夫さんに行ったインタビューの後編をお届けします。
舟生さんはセコムIS研究所に所属し、「子どもの安全ブログ」モデレーターとして子どもの防犯に役立つ情報を発信。子どもの安全・安心のための社会づくりをめざすキッズデザイン協議会理事としても活動しています。
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「知らない人についていかない」「個人情報を漏らさない」を徹底
防犯について、子どもにどう話せばよいか悩んでいる人は多いようです。子ども自身ができる防衛策と親からの声かけのしかたについて教えてください。
舟生さん:大前提としては、やはり「知らない人についていかない」ということですね。でも、子どもにとっては「知らない人」の線引きが意外と困難なものなのです。公園でよく見かけるおじさんは、子どもにとっては「知っている人」になりかねません。「名前を知らない人」「パパ・ママが知らない人」など、具体的に例を挙げて、どんな人についていってはいけないのか説明をしてください。
最近では服や持ち物の見える位置に名前を書かないようにしている場合が多いと思いますが、例えば公園で、友だち同士で呼び合っているのを聞いて名前を把握する不審者もいます。「おうちはどこなの?」「パパ・ママの名前は?」など聞かれると、子どもは素直に答えてしまうかもしれません。「変な人がいるかもしれない」と子どもには話をしておき、「勝手に遠くへ行ってはいけないよと言われているから」「答えちゃいけないと言われているから」などと返せるように、普段から会話をしておきましょう。「ちょっと変だな」と思うような人を見たり声をかけられたりしたら、すぐ親に報告させることも大事です。
留守番をさせるなら、親がいつでも連絡できる体制を整えておいて
小学生になれば、家で留守番する機会も少しずつ増えそうです。特に夏休みや冬休みなどの期間は、買い物やきょうだいの用事などで親が家を空けることが出てくるかもしれません。
舟生さん:親からすれば「ちょっとの間」でも、家で子どもだけになると何が起こるか分かりません。留守番中の子どもを狙った押し込み強盗やわいせつの被害に遭うケースも報告されています。徹底したいのは、誰が来てもドアを開けないこと。宅配荷物の受け取りもできるだけ避けて、万が一対応する場合でもチェーンをかけたままするべきです。隙間から対応して、荷物は外に置いておいてもらうということもできます。インターホンに応対しても、「開けちゃいけないと言われているから」と言おうねと子どもに伝えて練習もしておくといいでしょう。
親が出かける前には、家じゅうの戸締りを徹底してください。窓の二重鍵や小窓も確認します。外出中は親がいつでも家に連絡できるようにしておきましょう。固定電話を留守番設定し、録音で「ママだよ」と聞こえたら受話器を取る、2回コールで切れた直後にかかった電話はママからの電話など、親子間で決めごとをしておくと安心です。親からの電話以外は取らないように伝え、子どもが応対しなくてもいいよう留守電や転送機能を活用してください。
理解させるのが難しい未就学児は、とにかく目を離さない
小学生は親子で安全対策を話し合い、子どももある程度自衛することができそうですね。では、未就学児はどうでしょうか。生活にひそむ危険について説明するは難しいし、言い聞かせてもどれだけ理解しているかどうかは実際のところ分からないケースが多いようです。
舟生さん:低年齢の子どもに理解させるのは、たしかに至難の技です。まずは、外出先で絶対に目を離さないこと。所構わず走ってあっという間に遠くへ行ってしまったり、一人でトイレを先に出てしまったり、親が買い物の会計をすませている間に移動してしまったり……。少し目を離すと、すぐ見失ってしまいます。万が一はぐれてしまった場合でもすぐ見つかるように、衣服に工夫をすると良いですね。目立つ色の帽子をかぶせたり、分かりやすい動物やキャラクターの服を着せたりすると、遠くからでも発見しやすくなります。
子どもに何か伝えておくなら、「はぐれてもその場を動かないでね。パパ(ママ)が絶対に探しに行ってあげるからね」という言い方がよいでしょう。いない!と思ってウロウロ探し回るとさらに遠くへ離れてしまうことも多いからです。商業施設やテーマパークなら、スタッフの服装を子どもと一緒に確認して、例えば「何かあったら、あの黄色い服を着ている人が助けてくれるよ」と共有しておくこと。これは、小学生の子どもにももちろん有効です。
わが子に任せられること・できる約束ごとを見極めるのが大事
いつから留守番をお願いできる? 一人で登下校できるようになるのは何歳から?と悩んでいる親は多いかもしれません。何か基準はあるのでしょうか。
舟生さん:具体的基準はなく、また「何歳になったら」と明確に線引きができるようなことでもありません。自分の子どもが何をどれだけできるのか、どれほど理解しているのか、約束を守れるのかどうかは親が見極めるべきことです。繰り返しになりますが、子どもとコミュニケーションをたくさん取って理解を深めることが大事になってくるのです。「子どもと長い時間過ごしたいけれど時間がない」という人に私がおすすめしているのは、子どもが好きなものを一緒に楽しむこと。テレビやアニメ、テレビゲームなど、子どもが熱中しているものがあれば親も一緒にトライしてみてください。こうしたものについ子守りをお願いしがちになりますが、同じ遊びで時間を共有すれば自然と会話が生まれ、学校や友達の話へと広がっていくと思います。あとは、子どもの友だちの保護者とも連絡を取り合い、情報を共有することも必要ですね。
親が子どもにしっかりと向き合い、話し合うことが、子どもの安全を守ることにつながりそうです。大切な子どもを事件や事故から守るため、まずできることから始めてみてください。
取材協力:「子どもの安全ブログ」 「キッズデザイン協議会」
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(最終更新日:2019.10.05)