カードや公共料金、税金などの支払いが重なり、想定以上に預金口座の残高が少なくなっていてドキっとしたことはありませんか? 残高不足で住宅ローン返済額の口座引き落としができなかったらどうなるのか、どう対処すればよいのかを確認しておきましょう。
口座残高不足。住宅ローンの引き落としができなかったら
うっかりしていて住宅ローンの引き落とし日に返済口座の残高が不足していた…というのは、多くの人が起こり得るミスですね。ただし、残高不足でその月の住宅ローンの返済ができなかったとしても、すぐに借入先の金融機関に連絡し、慌てずに対処すれば大きな問題にはなりません。
金融機関によって異なりますが、引き落としができなかった場合には、金融機関の指定する口座に返済金額を振り込んだり、自分自身の返済口座に返済金額を入金しその後自動的に引き落とされたり、といった方法で返済することができます。また、返済が遅れた期間に応じて、約款(契約書)に定められた割合で遅延損害金がかかります。
<表1 約款(契約書)に定められた、「引き落としができなかった場合」>
第6条 5. 約定返済日の返済用口座の残高がその日の約定返済額に満たない場合には、その日の約定返済額全額について返済は行われないものとします(以下返済が行われなかった金額を「未返済金額」という)。この場合、お客さまは未返済金額を返済用口座に直ちに預入れるものとし、当社は、預入れがなされ次第、その金額をソニー銀行取引約款または普通預金約款に関わらず、お客さまにパスワード等を端末等から入力いただくことなく自動的に引落すことにより、返済が行われたものとします。 6. 約定返済日に未返済金額がある場合には、返済用口座の残高は、未返済金額から優先して弁済に充当されるものとします。また、異なる約定返済日にかかる未返済金額がある場合には、先の約定返済日にかかる未返済金額から順に弁済に充当されるものとします。 |
第7条 遅延損害金 1. お客さまは返済の遅延している元金に対し年14.6%(1年を365日とし、日割りで計算する)の遅延損害金を支払うものとします。 |
引き落としできないまま放っておくと、マイホームを手放すことにも
残高不足でローン返済額が引き落とせなかったのに対処せず、放っておくと、時が経つほど問題は大きくなっていきます。
口座引き落としができず、金融機関からその連絡を受けても支払わなければ、時がたつほど遅延損害金はふくらんでいきます。さらに、支払いが遅れて一定期間以上経過すると、「期限の利益」を失い、住宅ローン契約に定められた返済方法(毎月返済やボーナス返済)での返済が認められなくなり、一括返済が求められます。一括返済できなければ、マイホームが競売にかけられる、もしくは任意売却でマイホームを手放すことになるでしょう。
マイホームを手放すには至らなくても、延滞情報は個人信用情報機関に登録されるので、その後、ローンの借り換えやマイホームの買い換えで住宅ローンを利用することも難しくなります。なお、どのような情報が登録されているかは、手数料を支払って信用情報機関で照会することができます。
また、住宅ローン利用の際には何らかの金利優遇を受けている場合も多いと思いますが、延滞するとその優遇が受けられなくなり、返済額が大幅に増えてしまう場合もあります。
<表2:信用情報機関に登録される信用情報の例>
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(1)全国銀行個人信用情報センター
登録情報 |
登録期間 |
氏名、生年月日、性別、住所(本人への郵便不着の有無等を含む)、電話番号、勤務先等の本人情報 |
下記の情報のいずれかが登録されている期間 |
借入金額、借入日、最終返済日等の本契約の内容およびその返済状況(延滞、代位弁済、強制回収手続、解約、完済等の事実を含む) |
本契約期間中および本契約終了日(完済していない場合は完済日)から5年を超えない期間 |
当社が加盟する個人信用情報機関を利用した日および本契約またはその申込みの内容等 |
当該利用日から1年を超えない期間 |
不渡情報 |
第1回目不渡は不渡発生日から6ヶ月を超えない期間、取引停止処分は取引停止処分日から5年を超えない期間 |
官報情報 |
破産手続開始決定等を受けた日から10年を超えない期間 |
登録情報に関する苦情を受け、調査中である旨 |
当該調査中の期間 |
本人確認資料の紛失・盗難等の本人申告情報 |
本人から申告のあった日から5年を超えない期間 |
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(2)株式会社日本信用情報機構
登録情報 |
登録期間 |
本人を特定するための情報(氏名、生年月日、性別、住所、電話番号、勤務先、勤務先電話番号、運転免許証等の記号番号等) |
下記の情報のいずれかが登録されている期間 |
契約内容に関する情報(契約の種類、契約日、貸付日、契約金額、貸付金額、保証額等)および返済状況に関する情報(入金日、入金予定日、残高金額、完済日、延滞、延滞解消等) |
契約継続中および契約終了後5年以内 |
取引事実に関する情報(債権回収、債務整理、保証履行、強制解約、破産申立、債権譲渡等) |
契約継続中および契約終了後5年以内(ただし、債権譲渡の事実にかかる情報については、当該事実の発生日から1年以内) |
本申込に基づく個人情報(本人を特定する情報、ならびに申込日および申込商品種別等の情報) |
照会日から6ヶ月以内 |
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毎月の返済が難しくなってきたら
このように、「残高不足で引き落としができない」状況を放っておいても、まったくいいことはありません。口座残高不足を繰り返し、返済が滞っていくと、遅延損害金も膨らみ、マイホームを手放すことにつながります。病気・けが、失業等で家計が苦しく、返済が難しくなってきたら、延滞する前に早めに借入先の金融機関に相談しましょう。返済スケジュールの見直しなどで毎月の返済負担を減らして、家計の苦しい時期を乗り切る方法が選べる場合もあります。
<表3:返済が難しくなった場合の、返済方法の見直し 住宅金融支援機構の場合>
返済特例(返済期間の延長など) |
中ゆとり(一定期間、返済額を軽減) |
ボーナス返済の見直し |
経済事情や病気等で収入が減少し、返済が大変になった場合 |
しばらくの間、返済額を減らして返済したい |
ボーナス返済が負担になっている |
・返済期間の延長をすることで毎月の返済額を減らすことができる ・毎月の返済額は減少するが、総返済額は増加する |
・相談した期間内の毎月返済額を減らすことができる ・減額期間終了後の返済額及び総返済額が増加する |
・ボーナス返済月の変更 ・毎月分・ボーナス返済分の返済額の内訳変更 ・ボーナス返済の取り止め |
また、住宅ローンの返済を消費者ローンやカードローンなどの借り入れで乗り切ろうとする方もいますが、返済がより苦しくなるのは明らかなのでおすすめできません。そもそもカードローンなどの金利は、住宅ローンの金利(1%前後から数%程度)より高いので、返済額をより増やすことになり、多重債務に苦しむことになります。カードローン等で住宅ローン返済を無理に続けることなく、早めに金融機関に相談して、無理のない返済プランを相談したほうがよいでしょう。
住宅ローンの契約約款には、「返済できなかった場合」についても記載されています。ローン契約時に説明を受けているはずですが、忘れている方も多く、金融機関からの最後通知「催告書」が届いて初めて事の深刻さに気付く方も。指定の期日までに催告書に記されている金額を支払えなければ、最終的には競売の手続きがとられてしまいます。任意売却であれば、競売よりも市場価格に近い金額で売却できる傾向にありますので、どうしても返済できない場合は検討することになるでしょう。そうならないために、万一引き落としができなかった場合にどんな行動をとればよいのか把握しておくとよいでしょう。
(最終更新日:2024.04.19)