個人型確定拠出年金 iDeCo(イデコ)の年代別活用方法をFPが解説!

個人型確定拠出年金 iDeCo(イデコ)は、毎月の掛け金が全額「所得控除」の対象となったり、運用益が非課税になったりするなど、大きな節税メリットを得られる、老後資金づくりに有用な制度です。そこで今回は、「世代別のiDeCoとNISA(ニーサ)やつみたてNISAなどの活用法」を考えていきたいと思います。

iDeCoとNISA、つみたてNISAの違いは?

すでにある「NISA」、2017年から改正された「iDeCo」、そして今年から始まった「つみたてNISA」、いったいどれを活用すれば良いの?と迷う人もいるでしょう。これらの仕組みは「何のために」「いくら」「どれくらいの期間」を考えて上手に使い分ける、というのがおすすめです。

まず、大きな違いは「お金を使える時期」の違いです。「NISA」や「つみたてNISA」はいつでも引き出せて、教育資金や住宅の頭金、結婚資金など中期的な資金準備にも使えますが、「iDeCo」は60歳まで原則引き出すことができず、老後の資金準備に目的が限定されるため、お金を使うタイミングと引き出せる時期のミスマッチが起きないようにしておくことが大切です。

次に「金額」部分です。「NISA」は年間120万円と比較的まとまったお金を運用するのに適していますが、「つみたてNISA」と「iDeCo」はあくまでも「積み立て方式」で長期間じっくりお金を育てるのに適した仕組みです。

なお、「NISA」と「つみたてNISA」は選択制です。もちろん、年単位で「つみたてNISA」と「NISA」を変更することも可能ですが、原則として、変更しようとする年の前年の10月から12月の間に、金融機関で変更の手続きを完了する必要があるので、注意したいところです。

また、「NISA」と「つみたてNISA」とでは活用できる商品も異なります。「つみたてNISA」は、長期積立投資に適した商品として、「公募等株式投資信託」に投資することとされており、「NISA」や「ジュニアNISA」で投資対象となっている「上場株式や上場REIT」などは、「つみたてNISA」では活用することができません。しっかり違いを理解してうまく使い分けをしましょう。

【一般NISA、つみたてNISA、iDeCoの特徴比較表】

   つみたてNISA  現行NISA  iDeCo
   20歳以上の居住者  20歳以上60歳未満の居住者(※1)
 拠出限度額  年間40万円20年間で累計800万円定期・定額の積み立て  年間120万円5年間で累計600万円投資のタイミングは自由  公務員・自営業者など属性で異なる14.4万円~81.6万円(※2)。ただし、累計の上限はなし
 税制優遇  20年間運用収益が非課税  5年間運用収益が非課税

拠出時:全額所得控除運用時:非課税(※3)

受取時:公的年金等控除・退職所得控除

 解約などの制限  特になし  原則60歳まで払い出し不可(一定の条件を満たせば引き出すことができるケースもあり)

※1 20歳未満でも加入できるケースあり。国民年金保険料未納者(障害基礎年金受給者を除く)、国民年金の任意加入被保険者の方、農業者年金の被保険者の方は加入できません。また、企業型確定拠出年金、企業年金のある企業に勤務している場合は、会社が規約で認めていれば加入できる。
※2 専業主婦(夫)など第3号被保険者は月2万3,000円(年間27万6,000円)、自営業者など第1号被保険者は月6万8,000円(年間81万6,000円)など属性で上限金額が異なる。
※3 資産残高に対してかかる特別法人税は現在凍結。

20代~30代の積立プラン

ライフプランに必要な資金を準備する際には、資金を使うタイミングによって運用資産の優先順位をつけて考えることがとても大切です。特に20代~30代の若年層で、独身の場合は一般的に(1)結婚(2)住宅取得(3)教育資金(4)老後資金、の順番で資金が必要となりますが、先に必要な資金準備ばかりを優先していると、途中で予定しているイベントに必要な資金が足りなくなってしまう可能性もあるので、短期資金と中長期資金をバランスよく積み立てていくことが重要です。

具体的には、結婚資金や住宅資金といった比較的近い時期に必要となる資金については定期積立や財形を使って確実に準備し、教育資金のうち大学資金は子どもが生まれてからでも18年程度の準備期間があるので、「つみたてNISA」を活用する方法なども考えられます。子どもの教育資金は特別に他と切り分けて準備したい場合は、学資保険を活用しても良いですね。

そして、老後のための資金については「iDeCo」を活用します。 20代であれば月5,000円程度、30代では月5,000円~1万円程度で積み立てを開始し、独身、結婚後子どもがいない時期、子どもの教育費がかかる時期など家計の事情に合わせて掛け金額を変更しながら積み立てていくと良いでしょう。

また、積立金額が少ない場合には、税制メリットに対するコストの割合が高くなるので、「商品の品ぞろえ」よりも「運営管理機関に支払う手数料や商品にかかる信託報酬の安さ」に重きをおいて運営管理機関を選択することをおすすめします。

なお、夫婦共働きでそろって制度を活用する場合には、世帯の中で投資する資産がかぶらないように商品を選択することも大切です。

40代のパート勤務の場合

この時期は子どもに手がかからなくなって家計の収入を増やすためにパート勤務に出るというケースも多いでしょう。

第3号被保険者に該当するパート勤務主婦の場合には、年間27万6,000円まで「iDeCo」に加入することができます。これまでは配偶者控除を受けるために収入を103万円以下に調整して働く、という人も多かったと思いますが、2018年からは配偶者控除・配偶者特別控除の制度が変更されて、103万円+27.6万円=130万6,000円まで働いたとしても38万円の配偶者控除を受けられます(夫の合計所得金額が一定金額以下の場合)。

さらに、「iDeCo」の掛け金は全額所得控除が受けられるので本人にも所得税がかかりません。「iDeCo」を活用することで、目先の家計を変えずに、老後資金を増やすことができますね。

なお、将来、「iDeCo」の資金を受け取る際には一時金で受け取れば退職所得控除内であれば、税金がかかりませんので、退職所得控除内に抑える範囲での金額を活用する、という考え方もあります。

例えば、40歳~60歳まで加入期間20年と仮定すると退職所得控除は800万円、この金額の範囲内に収まるような運用を考えれば、積立時には所得控除、運用時にも非課税、受給時にも税金をかけずに老後資金の準備をすることも可能です。

50代からの積み立て

50代から「iDeCo」に加入をする際には加入時年齢によって受取開始が60歳から遅れるため、注意が必要です。具体的には、「iDeCo」を含めた確定拠出年金の加入期間が10年に満たない場合には60歳から資金を受け取ることができません。

【通算加入期間と受給開始年齢】

 通算加入期間  受給開始年齢
 10年以上  満60歳
 8年以上10年未満  満61歳
 6年以上8年未満  満62歳
 4年以上6年未満  満63歳
 2年以上4年未満  満64歳
 1ヶ月以上2年未満  満65歳

積み立てができず運用だけ行う「運用指図者」の期間は所得控除のメリットが受けられずに口座管理手数料などのコストは支払い続ける必要があります。積立金額が少ない場合や、定期や保険商品、国内債券など利回りの低い商品で運用する場合には、節税メリットや運用収益よりもコストの方が高くなる場合もあるため注意しましょう。

まず、自分が何歳から受給資格があるのかをチェックし、受けられる所得控除メリットと口座管理手数料などのコストが見合っているかどうかを確認しておき、掛け金額を多く設定する、収益が期待できるような積極的な運用するなど工夫を考えることも大切ですね。

iDeCoをうまく活用して公的年金を増やすこともできる

将来的に公的年金が減ることが予想されるなか、少しでも老後の収入を増やしたいと考える人も多いでしょう。「iDeCo」を活用したセカンドライフの収支改善策のひとつに、終身年金の公的年金の受給開始年齢を繰り下げてその分毎年の年金額を増やし、定年以降公的年金が支給されない期間には「iDeCo」の資産を受け取る方法があります。

例えば、本来65歳から受給できる公的年金を70歳からの受け取りに繰り下げると、年金額は40%超に増え、その額を一生涯受け取ることができます。

一方で、60歳の定年退職後、公的年金を受け取り始める70歳までの10年間は、それまで「iDeCo」で運用していた資産を受け取って公的年金の空白期間をカバーするという考え方です。もちろん、予想外に早く亡くなってしまった場合には、逆に損をすることになるので、繰り下げるリスクはありますが、特に女性が長生きリスクに備え、老後の収入を増やすためには効果的な手段のひとつといえますね。

まとめ

積立制度を活用する際には、単に節税などのメリットだけを考えるのではなく、目的、金額、運用期間を考えて上手に使い分けることが大切です。

なお、「iDeCo」と「つみたてNISA」や「NISA」を併用する場合には、活用できる商品の種類も制度ごとに異なるので、資金ニーズのタイミングを踏まえてバランスよく商品を選択しましょう。

また、最近では福利厚生制度のひとつとして企業が賞与や給与を原資として掛け金を拠出する賞与(給与)DCを導入するケースも増えています。一般的には、税制削減効果に加えて社会保険料の削減効果も期待でき、コストも企業が負担する賞与(給与)DCのほうが有利ですが、社会保険料が削減できる代わりに傷病手当や出産手当、育児休業手当金、失業手当なども減るため、近い将来、退職する予定や育児休業をとるなどの予定がある場合には、賞与(給与)DCを活用しない方が良いケースもあるので、会社の制度やライフプラン変化も踏まえた活用を考えることも忘れずに!

(最終更新日:2019.10.05)
~こんな記事も読まれています~