住宅ローンで家を買えば税金でメリットも! 住宅ローン控除の基礎知識

住宅ローンを組んで家を購入(新築)した場合、一定の条件を満たしていれば、住宅ローン控除によって、10年間で最大400万円(長期優良住宅などは500万円)の減税を受けることができます。ここでは住宅ローン控除の基礎知識をお伝えすると同時に、その恩恵がどれくらいのものになるのかを検証します。また、住宅購入時に受けることのできる住宅ローン控除以外の減税措置についてもご紹介します。

住宅ローン控除を受ければ最大控除額は10年間で400万〜500万円

住宅ローン控除とは、住宅ローンを借りてマイホームを購入(新築)した場合に、一定の要件を満たしていれば、10年間にわたって減税を受けることができる制度です。具体的には、年末の住宅ローン残高の1%が納めた税金から還付されることになります。

一般の住宅の場合、年末残高4,000万円を限度額として、毎年の控除額は最大で40万円、10年間で最大400万円の控除が受けられます。 また、一定の条件を満たした認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の場合、年末残高の限度額は5,000万円まで引き上げられます。そのため毎年の控除額は最大で50万円、10年間で最大500万円の控除が受けられることになります。

たとえば、年末の住宅ローン残高が4,500万円だった場合、一般の住宅であれば、そのうちの4,000万円が住宅ローン控除の対象となり、その年の控除額は40万円となります。もし、その年に所得税が40万円未満だった場合、控除しきれなかった金額は住民税から控除できることになっています。

【住宅ローン控除の概要】

 住宅の種類  住宅ローンの年末残高の限度額  毎年の控除限度額  10年間の最大控除額
 一般の住宅  4,000万円  40万円  400万円
 認定住宅  5,000万円  50万円  500万円

住宅ローン控除による減税で現金購入よりも得をするケースもある?

住宅ローンには金利がかかるので、現金購入できるのであればそのほうが得と考えている方もいるでしょう。ですが、住宅ローン控除を活用すれば、現金で購入するよりも得になるケースもあり得ます。

超低金利時代といわれている現在、変動金利型の住宅ローンであれば1%未満の金利で借り入れをすることができます。たとえば、住信SBIネット銀行の金利は0.457%~、楽天銀行の金利は0.527%~と非常に低い水準になっています(2018年7月現在)。

もちろん変動金利型の住宅ローンには金利上昇リスクがありますが、仮に借り入れ当初から10年間は金利上昇がなかった場合、金利の支払額よりも住宅ローン控除で還付される金額のほうが多いということもあり得ます。

そこで、楽天銀行の優遇金利0.527%で3,000万円を返済期間35年で借り入れた場合に、10年間で支払う金利の額と住宅ローン控除の還付額を比較してみましょう。ここでは、計算の都合上、2018年1月から返済を開始し、10年間は金利変動がないものとして考えます。

【10年間の支払利息と最大控除額】

   返済回数  支払利息合計  借入残高  最大控除額
 1年目  12  15万6,207円  2,921万7,399円  29万2,100円
 2年目  24  30万8,278円  2,843万622円  28万4,300円
 3年目  36  45万6,194円  2,763万9,770円  27万6,300円
 4年目  48  59万9,932円  2,684万4,700円  26万8,400円
 5年目  60  73万9,469円  2,604万5,429円  26万400円
 6年目  72  87万4,783円  2,524万1,935円  25万2,400円
 7年目  84  100万5,852円  2,443万4,196円  24万4,300円
 8年目  96  113万2,655円  2,362万2,191円  23万6,200円
 9年目  108  125万5,169円  2,280万5,897円  22万8,000円
 10年目  120  137万3,369円  2,198万5,289円  21万9,800円
  256万2,200円

住宅金融支援機構:返済プラン比較シミュレーションにて試算

このケースでは、10年間の支払利息額は約137万円、最大控除額は約256万円となり、収支は約119万円のプラスという結果になりました。仮に、11年目の最初の返済でローンの残債を全額繰り上げ返済したとすると、住宅ローンを借りたことで逆にお金が増えたことになります。つまり、現金で一括購入するよりも得をすることになるのです。

ただし、住宅ローン控除の金額はあくまでも最大控除額であって、納めた税金の額がこれよりも少なければ控除額は小さくなってしまいます。また、住宅ローンの借り入れにかかる諸費用や金利変動リスクは考慮していないため、実際にはこのシミュレーション通りにはならないということに留意しておいてください。

ここで知っておいていただきたいのは、もともとメリットが多い制度である住宅ローン控除が、超低金利時代においては、さらに有利に活用することができるということです。

住宅ローン控除を受けるには確定申告が必要

住宅ローン控除を受けるには、初年度は確定申告が必要です。まずは、住宅を購入した年の10月〜1月にかけて必要な書類を集めましょう。住宅ローン控除の確定申告に必要な「住宅ローン残高証明書」は概ね10月に、金融機関から郵送されてきます。ただし、借入時期が9月以降だった場合には、初年度分のみ翌1月に発送されます(発送時期は金融機関によって異なります)。また12月もしくは1月には勤務先から源泉徴収票が発行されます。その他、住民票の写しや、住宅や土地の登記事項証明書など必要な書類は早めに準備しておきましょう。

例年2月16日から3月15日が確定申告の受付期間です。作成した確定申告書に必要書類を添付して、居住地を管轄する税務署に提出します。確定申告期間中には、税務署や特設会場で、税務署員が確定申告書の作成方法を教えてくれます。確定申告書の書き方がわからない場合は利用してみてはいかがでしょうか。なお、住宅ローン控除の還付金は、確定申告を行った後、だいたい1ヶ月から1ヶ月半後に支払われます。

(参考記事:【税理士監修】はじめての住宅ローン控除と確定申告に必要な書類とは?

住宅ローン控除の恩恵はどれくらい? 計算してみよう

前で述べたように、住宅ローンの年末残高の1%が控除額の上限になります。年末残高が3,000万円だった場合、30万円が控除額の上限です。この30万円という金額は、あくまでも控除額の上限であって、全額が控除されるとは限りません。仮に、その年に納めた所得税が30万円以上であれば、控除額の30万円全額が還付されることになります。逆に所得税が30万円未満であれば、控除しきれない金額は住民税から控除できることになっています(上限あり)。そして、それでも控除しきれない金額がある場合には、その分については還付を受けることはできないのです。

源泉徴収票を見ながら確認してみましょう。たとえば、給与所得金額(源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」)が500万円で所得控除の合計額(源泉徴収票の「所得控除の額の合計額」)が250万円だった場合、課税所得金額は250万円(500万円−250万円)です。課税所得250万円に対する所得税率は10%、控除額は9万7,500円なので、所得税額は15万2,500円となりますが、住宅ローン控除額が30万円あるので、所得税は全額還付されます。残りの住宅ローン控除額である14万7,500円については、住民税から控除されますが、ここでも上限があるため、必ずしも全額が控除されるわけではありません。

住民税から差し引くことができる住宅ローン控除の限度額は、「前年分の所得税の課税総所得金額等の7%で13万6,500円が限度」となっているので、このケースでは、13万6,500円が住民税から控除されることとなります。

住宅ローンを利用せず自己資金で購入した人のための投資型減税とは?

住宅ローンを利用せずに、自己資金だけで住宅を取得した場合、住宅ローン控除を受けることはできません。この場合、取得した住宅が長期優良住宅や低炭素住宅といった耐久性や省エネルギー性に優れた住宅であれば、「投資型減税」制度によって所得税が控除されます。 具体的には、住宅の性能を上げるためにかかった費用(掛かり増し費用)の10%が所得税から控除(上限あり)されます。また、居住した年だけで控除しきれなければ翌年の所得税からも控除を受けることができます。

この「投資型減税」制度の適用を受けるには確定申告をする必要があります。また、投資型減税と住宅ローン控除を一人の人が併用することはできません。詳しくは、国土交通省:すまい給付金のページなどで確認してください。

住宅購入時には他にもさまざまな減税を受けられる

住宅を取得した時には、すでにご紹介した住宅ローン控除、「投資型減税」制度の他にも税金の軽減措置を受けることができます。

・登録免許税の軽減措置

住宅を取得した時には、通常、登記を行うことになります。新築建物であれば所有権の保存登記を、土地・建物を購入した場合には所有権の移転登記を行います。また、住宅ローンを借り入れた場合には、抵当権の設定登記を行います。この登記を行う際にかかるのが登録免許税で、次のような軽減措置があります。

【登録免許税の軽減措置】

   本則税率  軽減税率
 土地の所有権移転  2%  1.5%
 新築建物の所有権の保存登記  0.4%  0.15%
 中古建物の所有権の移転登記  2%  0.3%
 住宅ローン抵当権の設定登記  0.4%  0.1%

土地所有権の移転登記については、年3月31日まで、建物の所有権保存登記、所有権移転登記、抵当権設定登記については、2020年3月31日までに取得・居住する場合に適用されます。また、長期優良住宅や認定炭素住宅、リフォーム済みの中古住宅を購入する場合、建物の所有権保存登記、所有権移転登記の税率が0.1%に軽減されます。

なお、建物について軽減措置を受けるためには、床面積が50平方メートル以上であることなど、一定の要件を満たす必要があります。

・不動産取得税の軽減措置

不動産取得税とは、家や土地など不動産を取得した時にかかる税金です。不動産取得税の税額は、土地・建物の課税標準額(固定資産税評価額)に税率4%(2021年3月31日までは3%に軽減)をかけて算出します。

建物については、一定の条件を満たす新築住宅について課税標準額から1,200万円(認定長期優良住宅は2020年3月31日まで1,300万円)を上限に控除されます。中古住宅についても控除が受けられますが、建築時期によって控除が異なるため詳しくは市区町村に問い合わせてください。

また、土地についても軽減措置があり、2021年3月31日までに購入した場合、課税標準額が「固定資産税評価額の2分の1」に軽減されます。

・固定資産税・都市計画税

固定資産税・都市計画税は、土地や家などの不動産を所有している人にかけられる税金です。毎年1月1日時点の所有者に課税されます。税額は、固定資産税評価額に税率(固定資産税は1.4%、都市計画税は0.3%が標準)をかけて算出します。

新築住宅については一定の条件を満たせば、床面積120平方メートルまでの部分について、固定資産税額が2分の1に軽減される措置があります。軽減措置を受けられる期間は、3階以上の耐火・準耐火建築物の場合は当初5年間(認定長期優良住宅に該当すれば7年間)、それ以外の住宅の場合は当初3年間(認定長期優良住宅に該当すれば5年間)となっています。また、土地については、税額計算のもとになる固定資産税評価額が軽減される措置があります。

まとめ

ここまで見てきたように、住宅を取得する際には、いろいろな減税が受けられます。その代表が、住宅ローンを組んで家を購入した場合に受けられる、住宅ローン控除といえるでしょう。その他にも、登録免許税や不動産取得税、固定資産税といった税金の軽減措置を受けることもできます。

家を購入する際には、これらの減税措置を上手に活用して、少しでも家計の負担を軽減していただきたいと思います。

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(最終更新日:2019.10.05)
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