マンションを購入する前に知りたい、騒音・防音対策で住み心地を高める方法

国土交通省の平成25年度マンション総合調査によると、マンションで最も多いトラブルが「居住者間のマナー問題」(※)。特に、違法駐車や生活音、ペットの飼育などが問題となっています。中でも騒音問題は、誰もが被害者にも、加害者にもなってしまう可能性があります。小さなお子様がいればなおさらでしょう。そこで、マンションを購入する前にチェックしたいポイントと、自分でできる騒音対策をまとめました。

マンションの騒音対策1:遮音性と防音性、床の軽量衝撃音は仕上げ材で決まる

生活をする以上、全く音を全く立てずに過ごすことはできません。椅子の移動音や物を落とした時のような高音域の音「軽量衝撃音」の遮音等級は床材に左右されるところが大きく、カーペットや畳のようにクッション性があるやわらかい素材であれば、高い遮音性能が期待できます。

しかし、マンションで最もよく見かけるのは、フローリングの床材でしょう。掃除の手間が掛からずメンテナンスも楽ですが、遮音性能の観点で見ると、物を落とした音が響きやすい側面も。畳やカーペットの部屋をフローリングに張り替え、リフォームをした途端、階下に足音が響くようになってしまった事例も多数あります。

マンションを購入後、フローリングに張り替える場合は、マンションの管理規約を確認して遮音性能の基準を満たした床材を選びましょう。無垢材を張りたい場合は特に、遮音用にゴムマットを敷いてから施工するなどの工夫が必要です。

古いマンションでしたら、推定L値等級でLL40、LL45といった基準が定められており、数字が小さいほど高い遮音性能があります。新しいマンションの場合はJIS(日本工業規格)で定められた測定方法による⊿(デルタ)L等級で、⊿LL(Ⅱ)-3といった記載があるはず。こちらは数字が大きいほど高性能です。

マンションの騒音対策2:床の重量衝撃音はコンクリートスラブ厚と構造がポイント

床の防音性能は仕上げ材だけでなく、スラブ厚(コンクリートの厚さ)や床の構造によっても変わってきます。走り回ったり飛び跳ねたりといった低音域の音「重量衝撃音」に影響する床のスラブ厚は200mmが標準程度と言われ、厚いほど遮音性が高いことを意味します。ただし、スラブに円筒状の穴をあけて中空にすることで小梁をなくしながら強度を保つ「ボイドスラブ工法」の場合は一般的に、通常のスラブ(ベタスラブ)の80%程度の遮音性と判断します。つまり250mmで通常のスラブ200mmと同程度です。また、ボイド(中空)部分にどのような遮音材が入っているかによっても性能が変わってきます。

床の構造は主に、床スラブの上に支持ボルトを立ててその上に下地材やフローリングなどを張る「二重床」と、床スラブの上に直接フローリングなどを敷設する「直床」に分類されます。「二重床」は給排水・ガス・電気などの配管を隠避しやすく、点検や交換もスムーズに行えるメリットがあります。ただし、防音性能の観点で考えると、床スラブと仕上げ材の間で音が反響してしまう「太鼓現象」が発生するケースも。マンションを購入する前に、スラブ厚と床の構造を確認しておくと良いでしょう。

マンションの騒音対策3:戸境壁や天井の厚み、工法が遮音性能を左右する

賃貸アパートなどで暮らした経験から、壁の厚さを気にしている方も多いかもしれません。隣住戸から漏れ聞こえる音は基本的に、戸境壁が厚いほど低減されます。壁の厚さが180mm以上であれば、一定の遮音性を期待できるでしょう。

ただし、戸境壁がコンクリート以外で作られていることや、隙間(構造スリット)を設けていることがあり、こうした場合は音が漏れやすくなります。スイッチボックスをコンクリートに埋め込んでいる場合など、壁の一部がくり抜かれている場合も同様の現象が起こりえます。

また、コンクリートにクロスを貼る「直貼り工法」と、戸堺壁(界壁)に枠組みをつくり石膏ボードなどの下地材を張ってからクロスを貼る「二重壁工法」でも遮音性が異なります。「二重床工法」のコンクリートと石膏ボードの間に吸音材を入れることで、前述の「太鼓現象」を防止。遮音性能を高めるケースもあります。「直天井」「二重天井」も同様です。

もし、実際に暮らし始めてから騒音が気になる場合は、天井や壁の下地にロックウールやグラスウールといった吸音材と遮音シートを入れる防音工事が一般的です。

マンションの騒音対策4:外部の騒音が気になるなら窓の対策が必要

マンションの騒音は、住戸の中にとどまりません。車の走行音、外ではしゃぐ子供たちの声など、外部の騒音が気になることもあるでしょう。その原因は、窓にあるかもしれません。

サッシの性能は、JISが定めた遮音性能等級、T-値である程度判断できます。T1、T2、T3、T4の4等級で、T4が最も遮音性に優れています。

新しいマンションでは複層ガラスを採用しているケースが増えてきましたが、かつては単板ガラスとアルミサッシの組み合わせが当たり前でした。遮音性能が低く、周辺環境によっては音に悩まされるケースもあるようです。

しかし、サッシはマンションの共用部にあたるため、基本的には個人で交換することができません。今ある窓の内側にもう1つ窓を取り付けるリフォームを行い、二重窓にすることで遮音性能を高めましょう。断熱性能も高まり冷暖房効率が上がりますし、床や壁、天井をリフォームするよりも小規模・簡単な工事で施工できるため、費用は数万円~と手頃です。

マンションの騒音対策5:リフォームをしなくても、手軽に防音対策

日々の騒音は、実際に暮らしてみて初めて気づく方が多いと思います。新生活を始めたばかりのタイミングで防音リフォームをするのは、なかなあ難しいと諦めている方も多いのではないでしょうか。そんな時には、コルクマットやカーペットを敷く、戸境壁に本棚などの家具を設置する、カーテンを防音仕様にするといった工夫で、音を軽減することができます。

また、近隣住人から騒音問題で注意を受けてしまった場合は、室内ではスリッパを履くようにする、椅子の足裏にはフエルトを貼って引きずる音が出ないようにする、壁の近くに音が鳴る物を置かないといった工夫をするだけで、状況が改善する可能性があります。皆さんも、できることから始めてみてはいかがでしょうか。

国土交通省 平成25年度マンション総合調査(P9)

(最終更新日:2019.10.05)
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