賃貸マンションやアパートに住んだことがある方の中には「鍵をなくして、管理人さんにスペアキーを貸してもらった」といった経験をされたことのある方がいるかもしれません。もしくは「留守中、管理人が勝手に部屋に入っていた」という信じられない体験をした方も。それでは、分譲マンションの場合はどうなのでしょうか?
賃貸マンションの鍵は管理人が持っている? 勝手に入ってもいいの?
まず大前提として、入居者の許可なく鍵を開けて家の中に入るのは、刑法第130条の住居侵入罪に該当するため違法です。管理人はもちろん、賃貸マンションの所有者である大家さんであっても、入居者の承諾なく家の中に入ることはできません。
ただし、契約時に特別な契約を交わしていた場合や、「正当な理由」がある場合はこの限りではなく、事件や事故、ガス漏れや水漏れ、火災のような緊急性があり、そのままにしておけば他の入居者に迷惑が掛かる場合は家の中に入ることもあります。
前述のような緊急時のため、基本的には管理会社やオーナーが、スペアキーもしくは全住戸の鍵が開くマスターキーを持っています。昨今は個人情報に対する意識が高まっているため、家の中に入ってしまうケースは減少していますし、最近は管理人どころか管理会社や大家さんも、鍵を敢えて所有しないケースも増えてきました。
ただし、少数派ながら「正当な理由」を拡大解釈してしまう大家さんや管理人も、未だ存在するようです。
分譲マンションの鍵を管理人が持っているケースはあるの?
分譲マンションでも、20~30年ほど前までは緊急時のために、マスターキーを管理人室で管理しているケースがありました。しかし、現在は全ての鍵を、住戸の所有者自ら管理をするのが基本です。
ただし例外として、管理組合の規約で合鍵の提出が義務付けられている場合や、セキュリティサービスに契約して警備会社に鍵を預けるケースはあります。鍵を預けることに抵抗がある方は念のため、マンションを購入する前に規約を確認した方が良いでしょう。
分譲マンションの鍵は共用部? 専有部? 自分で付け替えてもいいの?
マンションは、共用部と専有部に分けることができます。エントランスやエレベーターは共用部、各住戸は専有部というのは、何となく想像が付くのではないでしょうか? それでは、その境界線に位置する住戸の扉は、共用部と専有部のどちらにあたるのでしょうか?
共用部と専有部は、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)で定められています。詳細は各マンションの管理規約を確認する必要がありますが、国土交通省が定めた「マンション標準管理規約」は、多くのマンションが管理規約を作成する参考としているためひとつの目安になります。
こちらの第7条(※)によると、「玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専有部分とする」とあります。例えば、「玄関扉の内側を自分の好きな色に塗装する」「玄関扉の内側に手すりを設置する」といったことは許容されますが、「玄関扉そのものを交換する」「玄関扉の外側を塗装する」といったことはできません。そして肝心の鍵については、鍵を専有部分と定めている文面を見ると、鍵の交換は自由に出来そうに思えます。
しかし、最近の鍵はオートロックの鍵と連動していることが多く、実質的には許可なく交換できないという認識でいた方が良いでしょう。鍵の交換を希望する場合は、管理会社や管理組合に相談し、交換の申請を出すようにしましょう。
中古マンションを購入した場合は、鍵を取り換えるべし!
中古マンションを購入した場合も、鍵は全て自分で管理をします。ただし、新築マンションと異なり、前の居住者が全ての鍵を引き渡しているか不透明です。家族や恋人、友人などに合鍵を預けたままになっている可能性や、スペアキーを1本失くしてしまったのに、隠している可能性もあります。中古マンションを購入したら、鍵は取り換えた方が安心して暮らせるでしょう。もし、入居前にリノベーションを予定している場合は、リノベーションが終わって業者の出入りがなくなったところで交換しましょう。
分譲マンションはもちろん、賃貸マンションでも、最近は管理人や管理会社が鍵を預かるケースが減ってきました。「管理人が勝手に部屋の中に入ってきた」というトラブルも稀な話ですから、極度に心配する必要はないでしょう。
ただし、全ての鍵を自分で管理するということは、紛失や悪用された場合のリスクも自分で負うということです。鍵を紛失して交換費用が発生しても、空き巣に入られても、鍵をなくして犯罪に悪用されても自己責任であることを念頭に、鍵は慎重に管理しましょう。また、マンションを購入して入居する前に、そのマンションが鍵をどのように扱っているのか、管理規約を確認してみてはいかがでしょうか?
(最終更新日:2019.10.05)