住宅ローン完済時に必要な手続きは? みんな何年で完済するのか?

住宅ローンの完済時にはどんな手続きが必要になるのでしょうか。必ず行うべき手続きとしては「抵当権抹消手続き」がありますが、その他にも必要に応じて行う手続きとして、「全額繰り上げ返済手続き」「火災保険の質権消滅手続き」の2つがあげられます。それぞれの手続きの内容や注意点について見ていきましょう。特に、なぜ抵当権抹消手続きが必要かについてはしっかり理解をしておいてください。

住宅ローンの完済時にはどんな手続きが必要?

金融機関のホームページなどを見てみると、住宅ローン完済後の手続きとして、「抵当権の抹消手続きが必要です」と書かれています。ここでは抵当権の抹消手続きを含めた3つの手続きについてご説明していきましょう。3つの手続きは以下の通りです。

[1]全額繰り上げ返済の手続き
[2]抵当権の抹消手続き
[3]火災保険の質権消滅手続き

このうち、必ず手続きしなければならないのは、「[2]抵当権の抹消手続き」です。他の2つについては必要に応じて手続きをすると考えてください。

住宅ローンの完済時にはどんな手続きが必要?

住宅ローンの残債が少なくなり、完済が近づいてきたタイミングで、繰り上げ返済をして残債を一括で返済する人もいます。この時の手続きが、全額繰り上げ返済の手続きです。

手順としては、まず、融資を受けている金融機関に連絡を入れて、全額繰り上げ返済をしたい旨を伝えます。金融機関側では書類の用意や内部の手続きなどが必要になってきますので、連絡したからといって、その日のうちに全額返済や、翌日に全額返済という対応を求めるのは難しいところです。完済したいと考えている日の1ヶ月前くらいまでには連絡することをおすすめします。

通常通り、毎月の返済を続けて完済する場合には、金融機関に連絡を入れる必要は特にないでしょう。

実際に住宅ローンの返済がすべて終了、つまり完済した後には、住宅ローンを借りたときに金融機関が設定した抵当権を抹消する手続きが必要になります。

また、あまり一般的ではありませんが、火災保険に質権が設定されている場合には、その解除の手続きが必要になります。

ここで注意していただきたいのですが、これらの手続きは住宅ローンを借りた人、つまり、みなさん自身が行う必要があります。住宅ローンの残債を金融機関に支払っただけでは、手続きが終わらないということだけは忘れないでください。

完済するために手数料はかかる?

金融機関による違いもありますが、繰り上げ返済に手数料がかかる場合があります。手数料は、定額制と定率制の2つの方式があり、どちらを採用しているかは金融機関によって異なります。

たとえば、5万円+消費税といったように返済金額にかかわらず一律の手数料がかかるのが定額制で、たとえば返済金額の1%+消費税といったように一定の割合で手数料がかかるのが定率制です。

手数料の方式と金額については、ご自身が融資を受けている金融機関に確認してください。なお、【フラット35】は繰り上げ返済手数料が無料です。また、ネット銀行の中にも繰り上げ返済手数料が無料のところが多くあります。

(関連記事:住宅ローンの一括返済の利息削減効果を検証。その手続きやすべきタイミングを解説

抵当権抹消手続きとは? 必要書類は? 自分でできる?

次に、抵当権抹消手続きについて見てみましょう。

抵当権とは、金融機関がお金を貸すときに、万が一、貸したお金を回収できなくなったときに、担保として確保した家や不動産を処分してお金を回収するための権利です。

みなさんが住宅ローンを借りる際にも、金融機関はみなさんが購入した家や土地に抵当権を設定しています。万が一、返済が続けられなくなった場合には、金融機関は家や土地を処分して、その売却代金を回収するのです。

ですが、無事に住宅ローンを完済すれば、もうそのような心配はありません。そこで、住宅ローン完済後には、設定された抵当権を外す手続き(抵当権抹消手続き)を行うのです。抵当権を設定する場合には、登記(抵当権設定登記)を行う必要がありますが、抵当権を抹消する際にも、登記(抵当権抹消登記)を行うことになります。

抵当権抹消登記の流れとしては、まず、金融機関から下記の書類が送られてきます。

・抵当権設定契約証書
・抵当権解除証書(登記原因証明情報)
・代表者事項証明書または登記事項証明書
・抵当権抹消についての委任状

これらの書類が揃ったら、みなさん自身がお持ちの「登記識別情報(権利証)」を持って、管轄の法務局で抵当権抹消の申請を行います。

マイホームを売却する場合には、所有権の移転が絡むため司法書士に手続きを依頼するケースが多いですが、そうでなければ、抵当権の抹消登記は、ご自身でもできてしまう手続きです。法務局のホームページに申請書のひな形が掲載されていますし法務局で相談しながら作成することもできるので、費用をかけたくない人にはおすすめです。

ご自身で抵当権抹消登記の手続きする場合は、実費のみがかかります。土地一筆と建物の抵当権抹消手続きの場合で2,000円です。司法書士のような専門家に依頼した場合、この実費に加えて、報酬として約1万5,000~2万円がかかることになります。

(関連記事:住宅ローンと抵当権設定について。また費用っていくらかかる?

抵当権抹消の手続きをしないとどうなる?

では、もし抵当権の抹消登記を忘れてしまった場合はどうなるのでしょうか。その場合のデメリットとしては、将来的に引っ越しなどでマイホームを売却したいという場合に、住宅ローンを完済していることを客観的に示せなくなることがあげられます。

仮に、前の所有者の抵当権が残ったままの住宅を購入した場合、前の持ち主がローン返済を滞らせてしまうと、抵当権が実行されて家を競売にかけられてしまうこともあり得ます。そのため、普通に考えれば、抵当権が残ったままの家を購入する人はまずいません。

いくら住宅ローンの返済は終わっていると口頭で説明しても、公的な証明書類である登記簿謄本に抵当権が残っている以上、買い主側としては安心して購入ができないのです。

先ほど、抵当権抹消手続に必要な書類が金融機関から送られてくるとご説明しましたが、これらの書類の有効期限は、おおむね3ヶ月となっています。将来のことも考えて、住宅ローン完済後、3ヶ月以内には抵当権の抹消手続しておくことを強くおすすめします。

火災保険の質権消滅手続きとは?

次に、火災保険の質権消滅手続きを見てみましょう。

あまり一般的ではありませんが、金融機関が火災保険に質権を設定している場合があります。質権設定とはどういうことかご説明しておきましょう。

前述した通り、金融機関は住宅ローンの契約者が購入した住宅に抵当権を設定しますが、もし、建物が火災で焼失してしまえば、抵当権を行使することはできなくなってしまいます。しかし、火災保険に質権設定をしておけば、家の持ち主より金融機関が優先して保険金を受け取る権利を得ることができるのです。そのため、火災保険に質権設定されている場合には、住宅ローン完済後、直ちに質権を消滅させる手続きを取る必要があります。

金融機関から「質権消滅承認請求書」が送られてきますので、ご自身で保険会社へ連絡を入れて手続きを行いましょう。火災保険自体は、引き続き加入していられるので、追加で保険料を支払うような必要はありません。

(関連記事:住宅ローンを組んだ際の火災保険は自由に選べるの? 選ぶ際のポイントと注意点

住宅ローンは何年くらいで完済する人が多い?

住宅ローンを完済するまでの期間については、それぞれの経済状況に加えて、意識や考え方による違いがあるため、何年で返すのが正解ということはありません。ただ、データを見ると(※1)、おおむね7割くらいの人が、借り入れから15年以内で完済している傾向があります。 住宅ローン借り入れの際には、20~35年でローンを組む人が8割くらいを占めていることを考えると、早期返済を意識して、繰り上げ返済をしている人が多いと言えるでしょう。

※1 住宅金融支援機構「民間住宅ローンの貸出動向調査」

完済までの期間による金利、返済額の違いは?

繰り上げ一括返済をして返済期間を短くすると、総支払額としてどのくらい違いが出てくるのでしょうか。実際にシミュレーションをしてみましょう。

金利は、2018年1月の「ARUHIフラット35」で団体信用生命保険に加入した場合(借り入れ9割超10割以下)の金利を適用します。

●借入条件[1] 借入金額:3,000万円、借入期間:35年間、金利:1.80%
●借入条件[2] 借入金額:3,000万円、借入期間:20年間、金利:1.74%
※[1][2]ともに手数料などは考慮しません

※金利は「ARUHIフラット35」の2018年1月のもの

条件[1][2]のそれぞれについて、まったく繰り上げ返済をせずに完済した場合と、借り入れから10年後に繰り上げ一括返済をした場合を比較してみましょう。

【繰り上げ返済なしと繰り上げ一括返済した場合の比較】

   金利 借入期間  繰り上げ返済なしの場合  繰り上げ一括返済した場合  利息軽減額
 条件[1]  1.80% 35年間  4,045万7,340円  約3,481万6,362円  約5,64万978円
 条件[2]  1.74% 20年間  3,554万3,520円  約3,407万2,514円  約1,47万1,006円

[1]の場合、繰り上げ返済をまったくせずに、35年間で完済した時の総返済額は4,045万7,340円です。これに対して、借り入れから10年後にその時点での残債である約2,325万円を繰り上げ一括返済すると、総返済額は約3,481万円となります。

また、[2]の場合、繰り上げ返済をせずに20年間で完済した時の総返済額は、3,554万3,520円です。一方、借り入れから10年後に残債の約1,630万円を繰り上げ一括返済すると、総返済額は約3,407万円になります。

数千万円単位のお金を一括返済するという、やや極端な例ではありますが、繰り上げ返済をすることで利息が軽減されて、総返済額を抑えられることをおわかりいただけることでしょう。総返済額を抑えるために、繰り上げ返済は有効な手段と言えます。

無理な繰り上げ返済は禁物、無理のない返済をしよう

ただし、繰り上げ返済にはリスクもあります。

まず、繰り上げ返済にばかり意識が向いてしまい、そのためにお金を貯めることが中心になり、日々の生活の潤いがなくなってしまっては本末転倒です。繰り上げ返済のために日々の生活が切り詰められて、楽しさや幸せを感じられなくなってしまうのでは、マイホームを手に入れた目的を見失ってしまうことにもなりかねません。

そして何よりも、繰り上げ返済を急ぐあまり、手元の現金がなくなってしまうことには大きなリスクがあります。あってはならないことですが、リストラや勤務先の業績悪化で収入が減ってしまう可能性は誰にでもあります。そんなときにたとえば子どもが私立の学校に行くことになったり、介護で予定外のお金が必要になったりしたらどうでしょうか。

住宅ローンは、他のローンと比べても最も金利の低いローンです。そのローンの返済を急いだために、他の金利の高いローンを借りることになってしまってはなりません。

無理な繰り上げ返済は避けて、生活の潤いと将来のリスクを考えたうえで、繰り上げ返済は計画的に無理なく行うことが一番大切だと私は考えます。

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(最終更新日:2023.07.24)
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