住宅ローンの一括返済の利息削減効果を検証。その手続きやすべきタイミングを解説

住宅ローンは何千万円ものお金を30年とか35年といった長期で借りるものですが、手元に資金があれば、返済期間の途中でも一括で返済することができます。住宅ローンを一括返済すれば利息の負担を軽くすることができますが、現在の低い金利水準でも一括返済はお得と言えるでしょうか。一括返済の手続き方法などを見ながら、その効果と一括返済すべきタイミングなどについて考えてみましょう。

住宅ローンの一括返済とは?

住宅ローンの一括返済とは、「全額繰り上げ返済」ともいい、金融機関から融資を受けている借入金を一度に完済してしまうことです。

一括返済をするのは、主に2つのケースがあります。

 (ケース1)
利息を含めた残債すべてを退職金などで用意して、融資を受けている金融機関に支払い、住宅ローンを完済するケース

(ケース2)
住宅ローンの借り換えをする場合。たとえば、A銀行からB銀行に住宅ローンを借り換えたほうが得になるのであれば、B銀行で融資を受けてA銀行の残債を一括返済するケース

2つのケースのうち、本稿では、ケース1の場合についてお話ししていきましょう。

住宅ローンを“一括返済”するメリットは?

住宅ローンを一括返済をするメリットとしては、借入金を完済しますので、一括返済しなかった場合よりも金利の負担が小さくなることです。よく繰り上げ返済について、「期間短縮型」と「返済額軽減型」のどちらが有利かという話を聞きますが、一括返済は残債を一度に支払ってしまうので、金利削減効果は最も大きいと言えます。

【メリット】住宅ローンの一括返済は、繰り上げ返済よりも、金利削減効果が大きい

たとえば、35年固定ローンで、金利が1.0%、3,000万円の融資を受けた場合、35年間で返済をすれば、返済総額は約3,556万円になり、そのうち利息は約556万円です。

一方、この住宅ローンを、期間の途中で一括返済をした場合の返済額を計算してみましょう。

仮に、返済開始から15年後、180回目の支払い後に一括返済した場合を考えてみましょう。この時点までに支払った元本は約1,841万円、利息は約365万円です。

元本については、未払い分である1,159万円(3,000万円−1,841万円)を一括で返済することになります。しかし利息については、元本がゼロになるため、これ以上支払う必要はありません。つまり、35年間分の利息総額である約556万円から、この時点までに支払った365万円を差し引いた金額である、191万円の利息が軽減されることになります。これが一括返済をした時のメリットです。

<金利1.0%、借入金額3,000万円、返済期間35年のケース>
【35年間で返済した場合】:返済総額3,556万円(うち利息は約556万円)
【返済開始から15年後に一括返済した場合】:3,365万円(うち利息は約365万円)⇒191万円の利息が軽減

なお、実際には、金融機関によって利息分の計算方法が異なりますし、手数料が加算される金融機関もありますので、融資を受けている金融機関に問い合わせてみてください。

一括返済のデメリット、手持ちの現金と生命保険を考慮する

次に、一括返済のデメリットについて考えてみましょう。

最大のデメリットといえるのは、やはり「手持ちの現金が大きく減ってしまうこと」でしょう。

手持ちの現金を使ってしまうと、何らかの事情で急に現金が必要となった場合に新たに借金をすることになるかもしれません。また、将来に必要な子どもの教育費、老後資金などの確保できなくなる可能性があります。

そうしたリスクを避けるためには、一括返済をした後にも十分な現金が手元に残るようにしなければなりません。また、一括返済後には毎月のローン返済分だけ出費がなくなるわけですから、その分のお金をどのように運用するのか、十分に検討して具体的な運用計画を立てておくことも大切です。

また、「生命保険」についても検討しなければなりません。

【フラット35】は任意加入ですが、通常、金融機関で住宅ローンを借りる時には団体信用生命保険(団信)に加入しますが、一括返済をすることで、契約は終了となります。したがって、団信以外の生命保険に入っていない場合には、新たに生命保険などに加入することを検討する必要もあるでしょう。

住宅ローン減税の扱いはどうなる?

一括返済を検討する場合に、忘れてはいけないのが「住宅ローン減税」です。

ご存知の通り、住宅ローン減税は、住宅購入後10年間、毎年末の住宅ローン残高の1%が、収めた所得税額から控除される制度です。10年間で最大400万円までの控除を受けることができます。

購入後10年以内に一括返済をしてしまうと、ローン残高がなくなるため、当然、この制度は利用できなくなります。

そこで、購入後10年以内に一括返済をしようとする場合は、「一括返済をしなかった場合に控除される税金の総額」と、「一括返済をした場合に軽減される利息額」を比較してみましょう。また、借りている住宅ローンの金利が1%未満の場合は、その金利とローン減税1%の差益も計算してみましょう。

その上で、すぐに一括返済をすべきか、それとも住宅ローン控除の控除期間が終了してからのほうが有利かを見極めることが必要です。

一括返済の手続きと手数料は?

一括返済の手続きはどのようになっているのか、その流れを【フラット35】を例に見ていきましょう。なお、【フラット35】でも、融資を受けている金融機関によって手続方法が異なる場合がありますので、詳細は必ず金融機関に問い合わせてみてください。

一括返済することを決めたら、通常、一括返済をする日の 1ヶ月前までの営業日に、契約者本人が電話、インターネットまたは窓口で金融機関にその旨を連絡します。連絡を受けた金融機関から手続きのための書類が送られてきますので、その書類に必要事項を記入して、期限までに返送してください。

手続きに当たっては、住宅ローン返済口座の通帳や、取引印鑑、運転免許証などの本人確認書類を求められることが多いです。

そして、一括返済をする日に金融機関の案内通り、指定口座に振り込み、口座振替をするか、現金を直接金融機関の窓口に持参して支払いを済ませれば完了となります。

一括返済の手数料についてですが、【フラット35】では手数料はかかりません。ただし、それ以外の住宅ローンの場合、金融機関によって取り扱いが異なりますので、直接問い合わせをしてください。

また、【フラット35】では、団信の加入は任意ですが、加入していた場合は、すでに支払っている特約料のうち未経過の保障月数相当分が返金されます。

なお、契約時に保証料を一括前払いしている場合には、保証料が返金されることもありますので、こちらも金融機関に確認しておきましょう。

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一括返済後には抵当権抹消登記を忘れずに

住宅ローンを一括返済した後には、融資を受けた時に自宅に設定した抵当権を抹消する登記を忘れずに行いましょう。

借り入れするときの抵当権設定登記については、通常、金融機関が手続きをしますが、抹消登記は借り主が行うことが原則となっています。具体的には、融資を受けていた金融機関から必要書類を受け取り、所轄の法務局で手続きをします。

抵当権抹消登記にかかる費用(登録免許税)は、不動産1物件につき1,000円です。たとえば、戸建て住宅の場合、土地1筆の上に、建物が1棟あれば、登録免許税は2,000円です。

登記の手続きを司法書士に依頼すると、1〜2万円の手数料が必要になりますが、法務局の相談窓口でやり方を教えてもらって自分で手続きをすることも可能です。その場合は、登録免許税のみの負担ですみますので、時間と手間を割ける方はご自分で手続きをしてみてはいかがでしょうか。

抵当権抹消登記が終われば、住宅は名実ともにご自身のものとなります。

残債がいくらになったら一括返済するべき?

先ほど、一括返済を検討する場合には、住宅ローン控除との兼ね合いを考えるべきとご説明しましたが、それ以外に一括返済に有利なタイミングというのはあるのでしょうか?

ローンの残債がいくらになったら一括返済をすればいいのかについては、それぞれの家庭の家計状況や家族構成により異なります。一括返済後の家計収支をシミュレーションして、完済後に残る現金をもとに運用や貯蓄をしていけば、その後のライフイベントに必要な資金、具体的には子どもの教育資金や老後資金を確保することができる場合には、その時点での残債が一括返済する額であり、一括返済していいタイミングだと言えるでしょう。

そのタイミングがいつになるのか具体的に申し上げるとすれば、一般的には、子どもが小学校を卒業するまで(子どもに比較的お金のかからない時期です)と、子どもが独立して、ご自身が定年退職するまでの間というケースが多いようです。

ただ、現在は住宅ローンの金利が非常に低くなっていますから、一括返済をしても軽減できる金利はそれほど大きな額にはならないと言えるでしょう。

逆に、手元の資金を一括返済に充てるのでなく、金融商品などで運用することで、住宅ローンの金利以上の収益を上げることができれば、それも理に適った資産形成と言えます。

一括返済をするかどうかについては、住宅ローン減税との兼ね合いだけでなく、資金を運用に回した場合に予想される収益と利息軽減効果を比較するなど、慎重に検討されることをおすすめします。

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(最終更新日:2024.04.19)
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