個人の貸借対照表の作り方
では実際に、この表の作成方法をお話ししましょう。
まず資産の欄です。「預金」は、作成日時点の通帳残高を記入します。
「株式投資」の欄には、直近の時価をインターネットなどで調べてみましょう。購入した時の価格ではありません。この表にはありませんが、投資信託を持っている場合は時価を、外貨預金を持っている場合は、記入時点の為替のレートで計算した金額をいれましょう。
「保険」は、掛捨てではく、終身保険、養老保険や個人年金保険といった貯蓄性の保険が対象です。記入する時点で解約した場合に支払われる解約返戻金の金額を記入します。将来、保険金として受け取れる額ではありません。
解約返戻金がいくらかは、各保険会社から送付される契約内容書面を確認したり、カスタマーセンターに問い合わせてみたりして確認してください。
「自宅」や「自動車」も買った時の金額ではなく、記入時点で売った場合の金額、時価を入れます。自宅は近隣の中古のマンションや戸建ての売り出し価格を、自動車は同車種の中古価格をネットなどで調べてみてくだい。厳密に調べるのは難しいですからおおよその金額でかまいません。
次に負債の欄を記入します。住宅ローンや自動車ローンなどは、借入先が発行する「償還予定表」から、その月現在の元本残高を記入しましょう。
また、カードの分割払いやリボ払いもあれば、その残高も記入してください。
借入可能額や毎月の返済額をチェック!
個人用貸借対照表(バランスシート)から分かること
Aさんの場合は、資産の合計は3,470万円でも、負債が3,150万円あるため、純資産は320万円です。
一概には言えませんが、貯蓄額が320万円で賃貸住宅に住んでいる借金のない方と、Aさんと純資産額では同じとも言えます。
また、Aさんの場合、自宅の価値よりも住宅ローンの返済額の方が多い状態です。自宅の資産価値は今後ますます下落することが予想され、債務超過に陥る可能性を否定できません。
こうした状態は、住宅ローン返済中は起こり得ることですが、今後収入の減少など想定外のことが起きた場合には、家計支出の見直しや、住宅ローンの返済方法の変更を金融機関に相談するなどして、早急に対策を打つことが必要です。
負債を減らすには、繰り上げ返済も選択肢のひとつです。しかし、繰り上げ返済をすることで預金が減ってしまうと、資産が減ってしまうわけですから、負債の改善にはなりません。
となれば、資産を増やすか支出を減らす、またはその2つを同時に行うことです。資産を増やすには少しでも利息が高いネット銀行などに預金をする、支出を減らすには現在加入中の保険の見直すなどの工夫をしてみましょう。
個人用貸借対照表(バランスシート)は相続の準備にも使える
この個人用貸借対照表(バランスシート)は、文字通り、資産を計算するものですから、相続の準備にも使えます。夫婦間や親子間に資産を渡すと、原則、相続税や贈与税がかかります。
Aさんのケースでいえば相続税の心配はないと思います。
しかし、相続税の心配はないと思っていた方が、この表を作成して、資産に相続税がかかる可能性があることがわかり、子どもの代まで残しても意味のない資産を売却するきっかけとなった例もあります。
また、たとえ相続税はかからない相続であっても、相続人に資産を平等に渡す資料としても活用できます。
一家の総純資産を把握し、時には家計の改善が必要かチェックするためにも、この個人用貸借対照表(バランスシート)を作成してみてはいかがでしょう
(最終更新日:2024.05.13)