住宅ローンで、当初の金利が低い変動金利(半年型)とずっと同じ金利で安心な全期間固定金利型。両方を組み合わせてみてはどうでしょう、というのがミックスローンです。いいとこ取りに見えるミックスローンですが、メリットの裏返しはそのままデメリットになることも。 ミックスローンのメリットや注意点、どんな人に向くのかなどについて考えてみましょう。
住宅ローンを変動金利(半年型)と全期間固定金利型をミックスするメリットは?
ミックスローンについて考える前に、まずは金利の種類と特徴について確認しておきましょう。
<住宅ローンの金利の種類と特徴>
金利の種類 | 変動金利(半年型) | 当初固定金利型 | 全期間固定金利型 |
---|---|---|---|
特徴 | 半年ごとに金利見直し。 | 当初10年など一定期間金利が固定されている。 | 完済までずっと同じ金利。 |
メリット | 金利が低い。借り入れ当初から元本を多く返せる。 | 一定期間、金利が固定される安心感が得られる。 | 完済まで返済額が変わらず安心。返済計画が立てやすい。 |
デメリット | 金利が上昇すると返済額がアップ。家計を圧迫。 | 固定金利の期間終了後、急に返済額が上がる可能性がある。 | 金利が高い。利息の支払いが多くなる。 |
向いている人 | 収入に余裕があるか、返済期間が短い人。または借入金額が少ない人。 | 一定期間後に家計に余裕ができる予定の人。金利上昇に対応できる人。 | 家計の余裕が少ない人や、安心して将来設計したい人。 |
以上の3つの金利タイプから複数の金利タイプを組み合わせて、金利変動のリスクを分散するのがミックスローンです。
たとえば借入金額3,000万円、返済期間35年、元利均等、ボーナス返済なしで借り入れした場合、変動金利(半年型)0.775%で借りれば当初の返済額は81,576円です。ところが全期間固定金利型2.0%なら毎月の返済額は9万9,378円となり、毎月の返済額は約1万8,000円近く増えてしまいます。
そこで、半分は変動金利(半年型)、半分は全期間固定金利型で1,500万円ずつ借りると当初の返済額はあわせて9万477円となります。変動金利(半年型)との差は約8,900円となります。上記の例では、当初の返済額の低さとずっと返済額が変わらない安心を半分ずつ享受することができます。
「ミックスローン」3つの注意点
低金利と安心という両方のメリットがあるミックスローンですが、逆にそのメリットがデメリットになることもあります。ミックスローンの3つの注意点をまとめてみました。
(1)金利上昇のリスクは和らぐが金利の負担は大きくなる
上記の例で、6年目に金利が2%上昇したとすると、変動金利(半年型)だけで借りていれば利息分の支払いは毎月60,578円になりますが、ミックスローンは5万2,693円に抑えることができます。金利タイプをミックスすることで利息の増加を抑えられます。
しかし、当初の利息の負担を見てみると変動金利(半年型)に比べミックスローンは1万5,312円多くなっています。金利上昇のリスクを抑えることはできても、当初の利息の負担が大きいことがわかります。
<3,000万円を返済期間35年で借りたときの当初返済額と利息の比較>
全期間固定金利型 2.0% |
変動金利(半年型) 0.775% |
ミックス 1/2ずつ |
|
---|---|---|---|
毎月の返済額 | 9万9,378円 | 8万1,576円 | 9万477円 |
うち利息(初回) | 5万円 | 1万9,375円 | 3万4,687円 |
<6年目に2%金利が上昇した場合の返済額と利息の比較>
全期間固定金利型 2.0% |
変動金利(半年型) 2.775% |
ミックス 1/2ずつ |
|
---|---|---|---|
毎月の返済額 | 9万9,378円 | 10万1,970円 | 10万674円 |
うち利息(61回目) | 4万4,811円 | 6万578円 | 5万2,693円 |
(2)金融機関によって力を入れている金利の種類はまちまち
変動金利(半年型)なら金融機関A、当初固定金利型(固定金利期間10年)か全期間固定金利型なら金融機関Dというように、各金融機関により低く設定している金利の種類はまちまちです。住宅ローンは基本的には同じ金融機関で借りることが前提となりますので、変動金利(半年型)が最も低い金融機関Aと当初固定金利型(固定金利期間10年)が最も低い金融機関Dというベストな組み合わせはできません。総合的に考えて、どの金融機関がよいかの判断が必要になります。
<金融機関ごとに有利な金利タイプは異なる>
金利タイプ | 金融機関A | 金融機関B | 金融機関C | 金融機関D |
---|---|---|---|---|
変動金利(半年型) | 0.588% | 0.839% | 0.775% | 0.675% |
当初10年固定金利型 | 0.86% | 1.077% | 1.2% | 0.8% |
全期間固定金利型 | 1.71% | 1.904% | 1.93% | 1.55% |
(3)返済額の管理が煩雑になる
手元に送られてくる返済予定表が2つや3つに分かれることで、全体の返済額や利息の内訳などの把握が煩雑になります。借りる前に繰り上げ返済の順番などを決めておくことが大切です。また、金融機関によっては複数のローンを申し込むことで手数料などの諸費用がアップすることもあります。事前に確認しておきましょう。
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ミックスローンの具体的活用法
ミックスローンの特徴とメリット・デメリットについてみてきましたが、次に、どのような人がどのような組み合わせで借りればミックスローンのメリットをより享受できるのか、考えてみましょう。
(1)10年後に教育費のめどがつく家庭
たとえば、お子さんの教育費がかかる10年間の返済額を抑えたい場合、変動金利(半年型)と当初固定金利型(固定金利期間10年)の組み合わせが考えられます。以下の表では変動金利(半年型)0.775%を借入金額1,000万円、返済期間20年、当初固定金利型(固定金利期間10年)1.2%を借入金額2,000万円、返済期間35年(ともに元利均等返済、ボーナス併用なし)に設定しています。
この場合6年目と11年目に1%ずつ金利が上昇しても、10年間の返済額はほぼ横ばいとなり、教育費の負担が大きい時期を安心して乗り越えられそうです。また、変動金利(半年型)を20年と短く設定したことで、60歳で完済でき、老後の住宅ローンの負担が軽くなります。60歳時点でのローン残高は1,000万円、退職金にゆとりがあれば繰上返済で完済することも可能でしょう。
ただし、金融機関によっては返済期間が異なるミックスローンが組めない場合もあるので、事前に確認が必要です。
<Aさん40歳 妻38歳 子ども14歳と12歳の場合>
ローンの種類 | 借入金額 | 借入期間 | 金利 | 毎月返済額 |
---|---|---|---|---|
変動金利(半年型) | 1,000万円 | 20年 | 当初5年間 0.775% | 4万4,992円 |
6年目以降 1.775% | 4万8,397円 | |||
11年目以降 2.775% | 5万799円 | |||
当初固定金利型 (固定金利期間10年) |
2,000万円 | 35年 | 当初10年間 1.2% | 5万8,340円 |
11年目以降 2.775% | 6万9,917円 |
(2)夫婦共働きの家庭
夫婦共働きなら、それぞれが1本ずつローンを組むペアローンが考えられます。たとえば夫は全期間固定金利型1.59%で借入金額2,000万円、返済期間35年、妻は変動金利(半年型)0.775%で借入金額1,000万円、返済期間15年(ともに元利均等返済、ボーナス併用なし)とし、繰上返済は妻に集中させる、という方法です。下記の例では上の子どもが高校生になる教育費のピークを前に、妻の変動金利(半年型)分のローンを完済させ、その後は全期間固定金利型で安心して返済を続けられるようにします。夫婦共働きの場合は各々が自分の役割を決め、ローンを管理していくこともできるので、返済額の管理の負担も少なくなるでしょう。
<Bさん30歳、妻30歳、子ども4歳と1歳>
ローンの種類 | 借入金額 | 借入期間 | 金利 | 毎月返済額 |
---|---|---|---|---|
変動金利(半年型) | 1,000万円 | 15年 | 当初5年間 0.775% | 5万8,865円 |
6年目以降 1.775% | 6万1,839円 | |||
11年目以降 2.775% | 6万3,399円 | |||
全期間固定金利型 | 2,000万円 | 35年 | 1.59% | 6万2,122円 |
以上のように、ミックスローンは教育費の負担が大きい時期など、家計に余裕がない時期を安心して乗り越えるために有効です。
目先の金利が低いだけでは安心して返済を続けることはできません。自身のライフプランに合わせて金利の種類や返済期間を組み合わせ、住宅購入以外の家族の夢も実現できる返済計画を立てましょう。
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(最終更新日:2024.04.19)