住宅購入を検討する人の多くが「頭金を支払うか?いくらにするか?」で悩むようです。頭金なしで購入した場合の住宅ローン返済例が載った住宅販売チラシも少なくありません。しかし、頭金なしで本当に大丈夫なのでしょうか?頭金がどのような意味を持つのか理解しておきましょう。
どのくらいの頭金を準備すれば良い?
頭金は物件価額の2割を目標に、などとも言われますが、例えば、3,500万円の住宅を購入しようとした場合には700万円の頭金が必要なのでしょうか?
答えは、「300万円でも良い人もいれば、1,000万円必要な人もいる」です。
住宅購入の予算を考える際に最も重要なのは、住宅ローンの借入金額は無理のないものかどうかということです。金融機関が融資金額を算出するときには、返済負担率(※)を年収の25~35%とすることが多いようですが、将来の収入が減少したり教育費の負担が増えたりした場合などに備え、貯蓄するゆとりを残しつつ返済することを考えると、年収の20%までが概ね妥当だと考えます。では、年間返済額を年収の20%とすると、いくらぐらい借り入れできるでしょうか?
<年収別 返済負担率20%のときの借入金額>
年収 | 年収の20% | 毎月返済額の目安 | 返済負担率20%にするときの借入金額 |
---|---|---|---|
400万円 | 80万円 | 約6万7,000円 | 2,160万円 |
500万円 | 100万円 | 約8万3,000円 | 2,700万円 |
600万円 | 120万円 | 約10万円 | 3,240万円 |
700万円 | 140万円 | 約11万7,000円 | 3,780万円 |
上記の例では、年収500万円の人だと、年間の返済額が年収の20%程度になる借入金額は2,700万円です。つまり、年収500万円の人が3,500万円の物件を購入しようとした場合、頭金を800万円準備することで、年収の20%程度の返済額に抑えられる、ということがわかります。一方で、年収700万円の人が3,500万円の物件を購入するならば、頭金なしで全額借り入れをしても、年収の20%以下に抑えられます。
頭金が多いほど家計にゆとりができる
同じ金額の物件を購入するのなら、当然ですが、頭金が多いほど住宅ローンの借入金額は少なくてすみます。年収500万円の人が3,500万円の物件を購入する例で見てみると、2割の700万円を頭金として入れて残りの2,800万円を住宅ローンで借り入れた場合、年収に対する年間の返済額は約21%、1,000万円を頭金として入れて残りの2,500万円を住宅ローンで借り入れた場合では約18%です。
<頭金の金額別 年収に対する年間返済額の比率>
頭金 | 住宅ローンの借入金額 | 上段:毎月返済額 下段:年間返済額 |
年収に対する年間返済額の比率 |
---|---|---|---|
100万円 | 3,400万円 | 10万4,770円 | 約25% |
約126万円 | |||
300万円 | 3,200万円 | 9万8,607円 | 約24% |
約118万円 | |||
500万円 | 3,000万円 | 9万2,444円 | 約22% |
約111万円 | |||
700万円 | 2,800万円 | 8万6,281円 | 約21% |
約104万円 | |||
1,000万円 | 2,500万円 | 7万7,036円 | 約18% |
約92万円 |
頭金を多めに入れることで住宅ローンの返済額が抑えられれば、毎月の家計にゆとりが生まれますので、頭金は多い方が良いといえるでしょう。
頭金が貯められないまま家を買うときの注意点
頭金は多いほど良いとはいえ、頭金に充てる資金は貯まっていないけれども、できれば子どもの小学校入学前には家を買いたい、返済年数を考えて30代のうちに住宅ローンを組んでおきたいなど、それぞれの事情や希望もあるでしょう。上記のとおり、「頭金は物件価額の●%必要」という決まりはありませんから、住宅ローンの借入金額が適正であれば、頭金が少ないことに大きな問題はありません。ただし、次のような点がデメリットとして考えられます。
金利が不利になることも
例えば、住宅金融支援機構の全期間固定金利の住宅ローン【フラット35】では、物件価額の全額を借り入れできますが、融資比率が物件価額の9割を超える場合、9割以下の場合よりも金利が高くなります。また民間の住宅ローンでも自己資金(頭金)の割合で金利が異なることがあります。
将来の借り換えや売却に影響する可能性あり
頭金なしで住宅を購入すると、それだけ借入金額が大きくなり、毎月の住宅ローンの返済額がアップして、家計のやりくりが厳しくなりがちです。また、頭金が少ないと、将来物件の担保価値が住宅ローン残高を下回る可能性が大きくなります。そうすると、低い金利の住宅ローンに借り換えたい場合に、購入物件の担保価値が住宅ローン残高を下回り、審査に通らず借り換えできないことがあります。また将来売却を考えた際に、売却したくても現金を補填しないと、抵当権を設定している金融機関が承諾してくれず、売却がしにくくなるというケースも考えられます。
住宅購入後の貯蓄は重要
頭金なしで家を買う場合は、「物件予算を下げる」など住宅ローンの借入金額を抑えて、毎月の返済額をなるべく少なくし、住宅購入後も家計を引き締め、早く貯蓄を増やすことを心がけましょう。また他のライフイベントの支出との関係もありますが、頭金なしで住宅ローンを借り入れる場合は、できるだけ繰上返済を行い、早く残高を減らすことで、将来の借り換えや売却の際に起こりうるリスクに備えましょう。
頭金は多い方が良いとはいえ、頭金と手持ち資金のバランスをとることは大切です。手持ち資金をギリギリまで減らし、頭金を増やすのも一長一短です。住宅ローンの借り入れ後、突発的な支出が重なり、他から借金することになっては本末転倒です。頭金をいくらにするかをきっかけに、無理のない購入金額、無理のない借入金額、そして無理のない返済をぜひ考えてみてください。
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