20代、30代、40代、年代別の住宅ローン資金計画のポイント

住宅を購入するきっかけは、結婚をしたから、子どもが大きくなり手狭になったから、両親と同居をするからなど、さまざまであると同時に、住宅を購入する年齢も人それぞれです。ここでは、年代別という観点から住宅購入の資金計画のポイントを見てみましょう。

20代はライフプランの変化に対応できる資金計画を考える

「時間のメリット」を最大限に活用し、家計支出の変化に対応できる資金計画を

20代は結婚、出産、転職や退職など、将来の不確定要素が一番多い時期です。住宅ローンを組む段階では、返済できる自信があったとしても、将来の支出の変化に対応できるよう毎月の返済額を抑えておくことが大切です。
同じ金額と金利の借り入れであれば、返済期間が長いほど、毎月の返済額は抑えることが可能です。もちろん、返済期間が短い方が総返済負担額は少なくなりますが、なるべく長い期間のローンを組み、シングル時代や共働き時代、子どもがいない時期に多く返済することで、その後の家計変化や金利上昇に備えましょう。

夫婦で住宅ローンを組むなら、配偶者の退職も視野に入れておく

これは年代にかかわらず言えることですが、夫婦で住宅ローンを組む際には、配偶者が仕事をいつまで続けるのかによって、家計が大きく変化する可能性があります。配偶者が退職をしても、ローンの返済に支障がないように計画をしておくことが大切ですね。

特に、ローンを組んだ当初は「出産後も働く予定」であったとしても、実際に出産後には、仕事を続けることができずに結果的に退職をする、という事態も十分に考えられます。

夫婦でローンを組む際は、

・ペアローンで組んだ場合は、子どもがいない家計に余裕があるうちに、妻のローン残高を繰り上げ返済で減らしておく
・収入合算で組んだ場合は、子どもがいない家計に余裕があるうちに、返済額軽減型の繰り上げ返済をしておき、毎月の返済額を軽減しておく
・将来、配偶者が退職した場合でも、家計に支障をきたさないよう貯蓄しておく
・出産と同時に退職する予定ならば、夫のみで組んでおき、妻の収入を繰り上げ返済に充当したり、貯蓄にまわしておく

などの工夫も必要かもしれません。

また、当初は夫婦でローンを組み、借り換え時に配偶者が退職していたために、収入の面で審査に通らず、結果的に借り換えができなかった、という例もあるので、要注意ですね。

シングルは結婚後に二重ローンになる可能性があることに注意

これは20代のみに限られる話ではありませんが、最近では、シングル時代に住宅ローンを組んで、ワンルームマンションを購入する女性も増加しています。将来、結婚して夫婦の新居として住宅を購入する場合には、シングル時代のローンと、新居のローンの二重のローンを家計として抱えるといった可能性もあるので、注意が必要です。

結婚時にワンルームマンションを売却した場合でも、手元に資金が残るように資金計画を考える、賃貸に出した場合に賃料でローンが返済できるような範囲でローンを組んでおくなど、工夫をしましょう。

なお、転職した場合は要注意です。20代はキャリアアップによる転職であっても、前職の勤続年数が少ないために、転職直後では借り入れが制限されるケースも考えられます。また、クレジットカードのキャッシングや自動車ローンの返済、携帯電話の分割払いなど、その他の借り入れが多い場合や年収が低い場合には、予定金額を借り入れることができないこともありえます。住宅購入時までに完済するなど、住宅ローンを借りやすい環境づくりも忘れずに。

30代は起こりうる家計の変化を織り込んで返済計画を考える

今後のライフプランを具体的にイメージする

まず、住宅予算を考える前に、具体的に今後のライフプランをイメージすることが大切です。シングルであれば、いつくらいに結婚する予定か、子どもはいつ、何人くらい欲しいか。既に子どもがいれば、進路は私立・公立どちらか、子どもがやりたいことやお稽古事にはどの程度お金を使う予定か。いずれにしても、できる限り具体的にイメージしておくと役に立ちます。

子どもがいる場合には、教育費の増加分も含めて計画する

これから子どもが生まれる、近いうちに産む予定、あるいはまだ子どもが小さいといったケースでは、子どものおおよその進路も踏まえたうえで、教育費や生活費が増えても家計に支障のないように、計画をしておく必要があります。特に、高校入学から大学卒業の時期にかけては、教育費はピークを迎えます。今の時点では公立と思っていても、子どもが私立に行きたいというケースも多いに考えられます。将来どちらでも選択できるように、ある程度余裕をもった資金計画をたてましょう。

ポイントは以下の通りです。

・特に教育費がかかる大学時期に家計負担を抑えるため、子ども1人につき、月2万円程度、教育費の積立ができるような返済計画を立てる
・高校入学から大学卒業までの教育費がかかる時期には、返済額の上昇を避けるために、金利が固定されるタイプのものを選ぶ

<教育資金の目安>

  幼稚園
3年
小学校
6年
中学校
3年
高等学校
3年
大学
4年
国公立 69万円 183万円 135万円 116万円 244万円
私立 146万円 853万円 389万円 290万円 446万円

※幼稚園~高校:文部科学省「平成24年度子供の学習費調査」
※国立大学:文部科学省「平成22年国立大学等の授業料、入学料および検定料の調査結果」
※私立大学:文部科学省「私立大学等の平成25年度入学者に係る学生納付金等調査結果」

定年退職時にはローンの完済が可能となる資金計画も大切

30代になると家計支出の見通しも立てやすくなります。今後の収支変化を考慮した資金計画を立てると良いでしょう。共働き世帯については、出産で配偶者が退職するのか、働き続ける場合でも、短時間勤務にする必要がありそうかなども考えておき、世帯収入が減る可能性があるのであれば、減額後の収入を基準に購入予算を考えると安心ですね。
一方、今は働いていなくても、子どもが成長することで、パートタイム、フルタイムで働き、世帯収入が増えることも期待できます。このように、住宅ローンは購入時の家計収支だけでなく、将来の収支を予想しながら借入金額を決めることが重要といえます。

30代で35年間のローンを組んだ場合には、退職後も住宅ローンの返済が残ります。2025年には65歳までは希望すれば働ける環境になるとはいえ、60歳以降には収入が大幅に減る可能性もあります。
その場合は、

・教育費の負担が少ない、子どもが小学生のうちに繰り上げ返済をして残額を減らしておく
・子どもが独立したあとの返済ペースを早くする
・あらかじめ、定年までの期間のローンと35年間のローンと返済期間を分けた2つのローン立てで組む(定年後は1本のローンしか残らないので返済が楽になる)

などといった工夫が必要ですね。

40代は現在の収支と老後も踏まえた資金計画を考える

教育資金と住宅ローン返済のバランスを図ることが大切 

40代からの10~15年は収入も増える可能性がありますが、教育費を中心に家計支出が増える時期です。収入が増えている分、住宅ローンは借りやすくはなっていますが、教育資金と住宅ローン返済のバランスを図って、予算オーバーをしないようにすることが大切といえます。

ポイントは以下の通りです。

・住宅購入時点である程度貯蓄ができていれば、頭金を多く入れて借入金額を抑えることができるが、貯蓄をつぎ込んでしまうと教育費が不足する可能性があるので、見極めが必要。
・貯蓄が少ない場合は、住宅ローンの返済と教育費の積立を同時にする必要があるので、借入金額を抑えるなどの工夫をする。
・退職時で完済を目指す場合、返済期間を短くすると毎月の返済負担が大きくなる。返済期間を長く組んでおき、退職金で完済したり、教育費の負担が軽くなった後、毎月少しずつ期間短縮型の繰り上げ返済をして徐々に返済期間を短くする、などの工夫が必要。

老後の資金準備も忘れずに

住宅購入時にはとかく目の前の生活のみに目が行き、老後のことを忘れがちです。住宅ローンの返済は終わったけれど、老後の生活資金が不足するのでは本末転倒ですから、老後の資金準備も含めた資金計画を立てることが必要です。
例えば、住宅ローンの返済が早く終了すれば、リタイアまでの間に集中的に貯蓄をすることも可能ですし、住宅ローンを返済しつつも貯蓄ができる借入金額にして、毎月積立をしておくことも対策のひとつといえます。

老後の生活資金は、「公的年金」、「企業の退職給付金」、これでも不足する部分について「自助努力」でまかなっていきます。公的年金だけでは、老後の生活資金は不足するのが一般的なので、退職金で完済する場合には、【60歳時点でのローン残高<退職一時金】となっていることを確認すると同時に、老後の生活資金に支障がないかもチェックしておくことを忘れずに。

また、老後の生活資金に不安がある場合は、定年退職後も働くことも考えてみましょう。配偶者も働けるのであれば、夫婦で収入を得ることで、繰り上げ返済の資金や老後の生活資金としても役立てることができますね。

どんなに将来の予測を立ててローンを組んだとしても、将来にどんな変化があるかはわかりません。貯蓄があることで変化にも対応しやすくなりますので、余裕のある返済額に抑え、住宅ローン返済をしながらも貯蓄ができるように、資金計画を立てることをおすすめします。

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(最終更新日:2019.10.05)
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