まず考えることは「どれが得なの?」だと思います。将来の金利の見通しを考慮することは重要ですが、あくまで見通しは「予測」で、どれが得であったかは完済後にわかることです。金利変動による損得勘定より、家族のライフプランを踏まえて「無理なく安心して返済できるか?」を念頭に考えましょう。
変動金利(半年型)の住宅ローンを選ぶ際には、金利上昇リスクにご用心!
住宅ローンは、借入全期間の金利が変わらない全期間固定金利型、半年ごとに金利が見直される変動金利(半年型)、一定期間の金利が固定される当初固定金利型の3タイプに分かれます。当初固定金利型は、固定金利期間が終了するとその時点での金利が適用されるので、広義の意味で変動金利型に分類されます。当初の金利水準から見た場合、ゼロ金利が続く現時点では変動金利(半年型)や短期間の当初固定金利型が有利ですが、金利は変動しますし、家計の状況もライフプランに合わせて変化します。金利上昇により毎月の返済額が上昇した結果、教育費やその他の支出をまかなえなくなっては困りますので、目先の返済額だけではなく、将来のキャッシュフローも踏まえて金利タイプを選択することが大切です。
<借り入れ条件> (A銀行 2015年1月時点の金利水準で試算)
借入金額3,000万円、借入期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なし
変動金利(半年型)、金利0.775%(全期間1.7%金利優遇)
当初 | 6年目 | 11年目 | 16年目 | |
---|---|---|---|---|
金利 | 0.775% | 1.775% | 2.775% | 3.775% |
月返済額 | 8万1,576円 | 9万3,904円 | 10万5,183円 | 11万5,014円 |
返済増加額 | - | 1万2,328円 | 2万3,607円 | 3万3,438円 |
このケースで見ると、返済増加額がライフプランも踏まえた家計のキャッシュフロー上厳しいのであれば、借入金額を減らす、金利が上昇した際に元金を減らすために繰上返済資金を少しずつ貯蓄しておく、など工夫が必要となります。もちろん金利が必ず上昇するとは限りませんが、「現在の低金利は官製である」「物価上昇2%を目指す政策は継続される」ことを考慮すると、「変動金利(半年型)だから借りることができる」ではなく「全期間固定金利型でも借りられるけど、あえて変動金利(半年型)で借りておく(そして金利上昇時のリスクはヘッジできるようにしておく)」というスタンスが大事ですね。
安易にミックスローンを選択することには要注意!
「将来の金利上昇リスクは抑えたい、でも変動金利(半年型)の低金利も捨てがたい」という人にとって魅力的に感じるのが変動金利(半年型)と固定金利型を組み合わせたミックス型です。「いいとこ取り」のように見えますが、リスクがなくなったわけではない点には要注意です。
<借り入れ条件> (A銀行 2015年1月時点の金利水準で試算)
借入金額3,000万円、借入期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なし
ミックスプラン(変動金利(半年型)50%:金利0.775%(全期間1.7%金利優遇)、全期間固定金利型 50%:金利1.78%)
6年目の金利上昇 | 0% | 1% | 2% | 3% |
---|---|---|---|---|
変動金利(半年型)の月返済額 | 8万1,576円 | 9万3,904円 | 10万1,970円★ | 10万1,970円★ |
11年目以降の最大月返済額 | 10万8,871円 |
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ミックスローンの月返済額 | 8万8,880円 | 9万4,964円 | 9万8,997円 | 9万8,997円 |
11年目以降の最大月返済額 | 102,448円 |
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【フラット35】の月返済額 | 9万1,415円 |
このケースで見ると、変動金利(半年型)やミックス型で組んだ場合には、当初の毎月の返済額は非常に安く魅力的ですが、6年目に金利が1%上昇した時点で【フラット35】の毎月の返済額を上回ってしまうことがわかります。さらに、6年目で金利が2%以上上昇した場合には、変動金利(半年型)では2万7,000円~で4万7,000円ほど、ミックス型でも1万3,000~で2万3,000円ほど毎月のキャッシュフローが増加します。
総務省の家計調査(平成25年度 家計収支編)によると、ローンを借りてから6年目、11年目を迎える40~49歳、50~59歳の平均貯蓄率は各々16.5%、11.4%です。平均貯蓄率が手取り収入の約10~15%程度ということを考えると、上記のようなキャッシュフローの増加が教育費やその他の支出がかさむ時期と重なった場合、家計収支が赤字になってしまう可能性もあります。ミックスローンを組む場合には、変動金利型と固定金利型の内訳をどうするかも含めて、しっかりと試算をしてから判断しましょう。
なお、複数の金利種類を組み合わせた場合には、各々の金利種類ごとに手数料がかかるケースや、ローンが2本立てとなって印紙代や登記手数料などが多くかかるケースもあるので、その点も忘れないでおきましょう。
変動金利(半年型)・当初固定金利型・全期間固定金利型を比較する際には、返済額の推移に家計のキャッシュフローが耐えられるかもしっかりチェックする!
では、Aさんのケースでは、どの金利タイプが効果的か考えてみます。
<Aさん(38歳 妻35歳(専業主婦)子ども3歳)の家計の状況>
・住宅購入前
年収:600万円、現在の住宅関連費用:月12万円、教育費の積立:月3万円、住宅取得のための積立:月5万円、その他の借り入れはなし
・住宅購入後
固定資産税・都市計画税:月1万円、マンションの管理費・修繕費:月2万円、教育費の積立:月3万円、家計の余裕:月3万円程度を残す
<借り入れ条件> (2015年1月時点の金利水準で試算)
借入金額3,000万円、借入期間30年、元利均等返済、ボーナス返済なし
変動金利(半年型)、金利0.775%(全期間1.7%金利優遇)
ミックスプラン(変動金利(半年型)50%:金利0.775%(全期間1.7%金利優遇)、全期間固定金利型 50%:金利1.78%)
【フラット35】:1.47% (融資比率9割以下)
まず、家計の状況からみると、Aさんが住宅ローンの返済に回すことが可能な費用は、単純に考えると「現在の住宅関連費用12万円+住宅取得のための貯蓄5万円」から住宅を購入することで増加する「固定資産税・都市計画税:月1万円+管理費・積立修繕費などの月2万円」を控除した月14万円です。
ただし、将来の教育費などの支出増加を考え、年収の5%程度(月3万円)を家計のノリシロとして残しておくとすると、実際に住宅ローンの返済に回せる金額は月11万円程度になります。
6年目の金利上昇 | 0% | 1% | 2% | 3% |
---|---|---|---|---|
変動金利(半年型)の月返済額 | 9万3,422円 | 10万5,193円 | 11万6,777円★ | 11万6,777円★ |
11年目以降の最大月返済額 | 11万8,195円 | 13万6,993円 | ||
ミックスローンの月返済額 | 10万518円 | 10万6,703円 | 11万2,195円 | 11万2,195円 |
11年目以降の最大月返済額 | 11万2,904円 | 12万2,303円 | ||
【フラット35】の月返済額 | 10万3,104円 |
仮に6年目に金利が1%上昇した場合、「変動金利(半年型)・ミックスローン」と「【フラット35】」の毎月の返済額が逆転します。さらに、6年目の金利上昇が2%以上となった場合、変動金利(半年型)・ミックスローンを組んでいたケースでは、家計のノリシロを住宅ローン返済が食いつぶしていくので、家計支出の状況によっては、家計が赤字になる可能性もありますね。
つまり、変動金利(半年型)やミックスローンで組む場合には、家計の余裕分については、教育費や支出負担が実際に増えるまでは繰上返済に回すなど、元金を減らして金利上昇リスクに備えておくことが必須となります。ここで大切なのは、「金利が2%以上上昇する」と言っているわけではなく、もし金利が上昇した場合に、家計収支に大きな影響を及ぼす可能性があるという点です。
次に、総返済額の観点から見てみましょう。
6年目の金利上昇 | 0% | 1% | 2% | 3% |
---|---|---|---|---|
変動金利(半年型)総返済額 | 約3,424万円 | 約3,777万円 | 約4,159万円 | 約4,610万円 |
ミックスローン総返済額 | 約3,680万円 | 約3,856万円 | 約4,047万円 | 約4,273万円 |
【フラット35】総返済額 | 約3,953万円 |
6年目に金利が2%以上上昇した場合には、【フラット35】で組んだケースが総返済負担額でも有利となることがわかります。
つまり、まとめると以下のようなことが言えます。
・今のように全期間固定金利型が史上最低といえるほどに低い金利水準であれば、あえて金利上昇リスクをとりにいく必要性はない。
・返済額の上昇の恐れがない状態を確保しつつ、繰上返済や返済方法の変更等の工夫をして総返済負担額を減らすことは可能。
・物価上昇2%を目指す政策が継続される中、6年目でその物価上昇率と同程度の2%以上金利が上昇すると、総返済負担額の観点からも家計キャッシュフローの観点からも全期間固定金利型が有利。
・教育費やその他の支出増、セカンドライフのための貯蓄も踏まえると、将来的に無理なく返済が可能な金額は11万円程度。
以上のことから、このケースでは全期間固定金利型に軍配!
もちろん、最終的に住宅ローンを選択する際には、諸費用なども含めて総合的に判断することも忘れずに!
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(最終更新日:2019.10.05)