住宅ローンは“全期間固定金利型が”いい4つの理由。金利推移は歴史的低水準

住宅ローンを借りる際、金利タイプ選びは最も悩むところではないでしょうか。金利タイプごとの特徴を知って自分に合ったタイプを選ぶべきですが、現在の金利環境などを勘案すると、超低金利の今なら全期間固定金利型を選択するのがいいといえるでしょう。その理由を見ていきましょう。

金利タイプの種類と特徴

住宅ローンの主な金利タイプとしては、全期間固定金利型、変動金利(半年型)、当初固定金利型があります。今、なぜ全期間固定金利型がいいのかを知る前に、まずはそれぞれの金利タイプの特徴やメリット、注意点などを確認しておきましょう。

全期間固定金利型

【フラット35】に代表される全期間固定金利型は、契約時に適用された金利が完済まで変わらないタイプです。金利が固定されるため借入期間中の返済額が変わらず、金利上昇リスクがありません。そのため家計の見通しが立てやすく、安心感が大きいといえます。教育費などで将来の家計負担が大きくなりそうな場合など、金利上昇リスクを取れない人に向く金利タイプです。

全期間固定金利は10年物の国債利回りなどに連動しますが、通常は当初固定金利型や変動金利(半年型)より高めに設定されます。低金利期や金利が上昇トレンドにある時には、このタイプを選択するのが合理的とされます。

変動金利(半年型)

変動金利(半年型)は、銀行の貸し出し金利の基準である「短期プライムレート」に連動しているものが一般的です。適用金利は半年ごとに見直されます。適用金利が変わっても毎回の返済額は5年間は変わりません(例外商品あり)。5年経過後に返済額が見直される時には、従前の毎回の返済額の1.25倍が上限というルールもあります。金利の状況を見ながら当初固定金利型に切り替えられるのも特徴です。

変動金利(半年型)で注意が必要なのは、適用金利が上がると毎回の返済額に占める元金と利息の割合が見直され、急激な金利上昇が続いた場合に、毎回の返済額のほとんどが利息になったり、「未払利息」が生じる可能性があることです。
金利下降局面にはメリットを享受できますが、逆に金利上昇局面では避けたい金利タイプです。返済額が小さかったり短期での借り入れだったり、あるいは家計にゆとりがあって金利上昇リスクを取れる人にはいいですが、そうでない人には避けた方がいい金利タイプと言えます。

当初固定金利型

当初固定金利型は、借り入れ当初の一定期間(3、5、10、20年など)の金利を固定するタイプです。固定金利期間中は金利や毎回の返済額は変わりません。固定金利期間が終了すると原則として変動金利(半年型)になりますが、金融機関によっては再度、当初固定金利型にすることもできます。適用される金利はその時点のものになります。

当然ですが、固定金利期間終了時に適用金利が上がっていれば、毎回の返済額もアップします。しかも、変動金利(半年型)と違って返済額の変化に制限はなく、適用金利が上がれば毎回の返済額にもストレートに影響が出ます。

金利タイプの特徴やメリット、注意点等を整理すると下表のようになります。

<表1 金利タイプの特徴等>

金利タイプ 特徴 メリット 注意点
全期間
固定金利型
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最後まで適用金利が変わらない
  • ・金利上昇リスクがない
  • ・借り入れの段階で総返済額が決まる
  • ・通常、変動金利より金利が高い
  • ・高金利期や金利下降期に借りると損になる場合もある
変動金利
(半年型)
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半年ごとに適用金利が見直されるが、毎回の返済額は5年間変わらない。変わるのも従前の1.25倍まで
  • ・通常は固定金利より金利が低い
  • ・高金利期や金利下降期に有利
  • ・金利が上がると返済額がアップする
  • ・総返済額は返し終わらないとわからない
  • ・金利が大きく上昇を続けると、未払利息が発生する場合もある
当初固定金利型
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一定期間、適用金利が固定される
  • ・一定期間の返済額が固定され、固定金利期間中は変動金利(半年型)より家計管理しやすい
  • ・金利が上がると返済額がアップする
  • ・総返済額は返し終わらないとわからない
  • ・固定金利期間終了時に適用金利が上昇すると、青天井で毎回の返済額が増える

金利トレンドと金利タイプ

ようやく本題です。3つの金利タイプの違いなどを見てきましたが、これから住宅ローンを利用する際に、金利タイプはどう選んだらいいでしょうか?

選択の際にまず考慮すべきことは、今後の金利の動向をどう考えるかです。金利のトレンドによって選択する金利タイプは違ってきます(表2)。候補となる金利タイプが複数ある場合は、さらに借入期間の長さや借入額の多寡、家計のゆとり、ライフプランなどによって金利タイプを絞り込む作業も行います。

<表2 金利トレンドと金利タイプ選びの考え方の例>

金利トレンド  選ぶべき金利タイプ  
全期間固定金利型 10年固定金利型 変動金利型
上昇気配
上昇期
×
低位横ばい 

今後金利は上昇すると思わない…○

今後金利は上昇すると思う…△ 

今後金利は上昇すると思わない…○

今後金利は上昇すると思う…× 

下落気配 ×  △  ○ 
高位横ばい  ×  △  ○ 

2015年1月も【フラット35】の金利が史上最低を更新しましたが(表3)、金利はもはや大底と言っても過言ではないでしょう。例えばARUHI【フラット35】S※(返済期間20年以下、融資比率9割以下、Aプランの場合)では、当初10年間が年0.90%、11年目以降も1.20%と非常に低い金利を打ち出しています。当初10年間だけの金利引き下げとはいえ、全期間固定金利型のローンが1%前後で借りられると話題になりました。金利引き下げが適用にならない物件でも、同社【フラット35】は35年間1.47%(団信別、事務手数料有り)で借りることができます。

※【フラット35】S …【フラット35】が利用できる住宅の中で省エネルギー性や耐震性などに優れた住宅が対象。Aプランは当初10年間、Bプランは当初5年間、金利が引き下げられる。

ここまで低金利の全期間固定金利型が出てきたことも踏まえると、迷ったときは「全期間固定金利型で借りる」という判断に舵を切ってもいいのではないでしょうか。

<表3 住宅ローンの金利推移>

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(「日銀の金融経済統計月報」および住宅金融支援機構発表資料より筆者作成)

今、全期間固定金利型がいい理由とは?

これから借りるなら全期間固定金利型がいいと思われる理由を整理してみます。

その1・全期間固定金利型は歴史的な低金利

前述の通りですが、住宅ローンの金利はこれ以上下がりようがないほどの最低水準にあり、特にこのところの全期間固定金利型の金利の低さは目を引きます。そんな状況下であれば、金利上昇リスクを負って変動金利(半年型)を利用するよりも、初めから全期間固定金利型を利用するのも一法でしょう。

その2・金利は上がる?

解散総選挙後の安倍政権は、実質成長率平均3%の国内総生産を目標に「持続的な経済成長」の実現を掲げています。日本銀行も2%のインフレを目指し、通貨の量を増やして金利を下げる大規模な金融緩和策を取ると方針を打ち出しています。

金融緩和策は金利を下げるために行っているため、「しばらく金利は上がらない」と見る向きもあるようですが、景気が良くなれば金利は上がっていきます。アベノミクスが「成功する」と考えるのであれば、金利上昇にも備えるべく、住宅ローンは全期間固定金利型にしておくといいでしょう。「成功しない」と考える人は答えが違ってきます。もちろん、金利の動きは「神のみぞ知る」ところなので、本当に上がるかどうかは誰にもわかりません。

その3・生活コストが上がる中、変動要因を増やさない

2014年10月の消費者物価指数は、総合で前年同月比2.9%増、食料及びエネルギーを除くと2.2%増でした。一部食品の値上げもあって物価上昇の影響を実感していることでしょう(原油価格の急落で少しラクになるかもしれません)。賃金が同程度に上がっていけば問題はないのですが、まだ追いついていない人の方が多いようです。

消費税の再増税は2017年4月に延期になったとはいえ、家計に影響します。長期的に見れば、超高齢化で社会保険料も上がり、医療・介護の利用者負担も増えるでしょう。公的年金は減る傾向にあり、現役時代に自力で老後資金を準備する必要があります。中長期的に生活コストが上がるという前提に立てば、返済額が変わらない全期間固定金利型の方が家計管理をしやすいのではないでしょうか。

その4・変動金利⇒固定金利への変更は大変

現在の変動金利(半年型)の金利がとても低いので、変動金利(半年型)で借り入れし、「金利が上昇し始めたら当初固定金利型に変更する」つもりという人もいます。ですが、実際には変更するタイミングを見極めるのはなかなか難しいものです。たとえば、金利が上がり始めたら変動金利(半年型)から10年固定に切り替える予定でいるのであれば、10年固定金利の動きをずっと追わなくてはなりません。変動金利(半年型)よりも10年固定や全期間固定金利型など固定期間が長いものの方が、金利が先に上昇する傾向があるためです。

借りた当初は金利のチェックなど簡単だと思っていても、多忙で意識が回らなくなってしまう人もいます。「いずれ乗り換える」と考えているなら初めから全期間固定金利型を選んだ方が無難な場合もあります。うっかりしている間に金利が上がり、最初から全期間固定金利型で借りた方が有利だったということにもなりかねません。

返し終わるまで続く付き合い

住宅ローンは、無事に完済できるまで続く長い付き合いです。多少の損得を追いかけてストレスを貯め込んだり、結果的に大きな損を生むかもしれないリスクを取るよりも、どっしりと計画的に返せる方がいいのではないでしょうか。あなたはどう思われますか?

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(最終更新日:2019.10.05)
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