2016年4月に発生した熊本地震をキッカケに、あらためて地震保険に注目が集まっています。地震保険から払われる保険金は十分な額にはなりませんが、生活再建費用や住宅ローン返済に役立てることができます。いつどこで起こるかわからない地震だけに、万が一の事態に備えて地震保険には加入しておきたいものです。
地震でマイホームが倒壊しても、火災保険だけでは保険金が支払われない!
火災保険は、火災をはじめとするさまざまな災害や日常生活の思わぬリスクに備え、大切な建物や家財の損害を補償する保険で、一般的にマイホームを取得した方は建物と家財、賃貸住宅の方は家財の火災保険への加入が必須となっています。
災害・盗難・事故など | 内容 | |
災害等 | 火災 | 失火やもらい火などの火災の損害が補償されます |
落雷 | 落雷による損害が補償されます | |
破裂・爆発 | ガス漏れなどによる破裂や爆発による損害が補償されます | |
風災・ひょう災・雪災 | 台風、旋風、竜巻、暴風等の風災、ひょう災、豪雪や雪崩等の雪災による損害が補償されます | |
水災 | 台風、暴風雨、豪雪等による洪水、融雪洪水、高潮、土砂崩れ・落石等の水災(床上浸水等)による損害が補償されます | |
盗難・事故等 | 建物の外部からの物体の落下・飛来・衝突等 | 自動車の飛び込みなどによる損害が補償されます |
漏水などによる水漏れ | 給排水設備の事故や他人の戸室で生じた事故に伴う漏水や水漏れの損害が補償されます | |
騒擾(そうじょう)・集団行動等に伴う暴力行為 | 暴力・破壊行為による損害が補償されます | |
盗難による盗取・損傷・汚損 | 盗難による盗取・損傷・汚損などの損害が補償されます | |
不測かつ突発的な事故(破損・汚損など) | 誤って自宅の壁を壊した場合などの偶然な事故による損害が補償されます |
火災保険の契約をすると、上記の損害を被ったときに、契約時に建物と家財それぞれに設定した「保険金額」の範囲内で、損害の程度に応じて「保険金」が支払われます。
ただ、損害の原因が地震や噴火、津波の場合には、保険金は支払われません。たとえば、地震が原因で自宅が燃えても火災保険によっては補償されないのです。なぜなら、地震や噴火、津波の被害は広範囲で甚大になる可能性が高いため、民間の損害保険の枠組みでは運営ができないからです。そのため、これらを原因とする損害の補償を受けるには、火災保険に加えて、政府が関与する地震保険に加入する必要があります。
地震保険の保険金の額は不十分でも、生活再建や住宅ローンの返済に活用できる!
地震保険は単独で契約することはできません。火災保険契約がなければ地震保険の契約はできない仕組みになっています。近年は新規に火災保険を契約する際、地震保険が原則として自動セットされるようになっており、2014年度中の契約では約6割に地震保険がセットされています。ただ、全国の世帯数に対する地震保険契約の割合(世帯加入率)は、年々上昇しつつあるとはいえ、28.8%にとどまっています(2014年度)。
なお、既に火災保険の契約をしていれば、地震保険は途中からでも契約をすることができます。
地震保険から支払われる保険金は十分な額にはなりません。なぜなら、火災保険の保険金額の一定割合までしか保険金額を設定することができず、さらに限度額が設けられているからです。
<地震保険の契約上の制約>
保険の対象 | 居住用の建物および家財 ※事務所や工場などの事業用は対象外 | |
保険金額 | 建物 | 火災保険で設定した保険金額の30%~50%の範囲(限度額5,000万円) |
家財 | 火災保険で設定した保険金額の30%~50%の範囲(限度額1,000万円) | |
保険金の支払い(建物・家財)※注 | 全損 | 保険金額の100%(時価が限度) |
半損 | 保険金額の50%(時価の50%相当が限度) | |
一部損 | 保険金額の5%(時価の5%相当が限度) |
たとえば、火災保険契約において、建物の保険金額を3,000万円、家財の保険金額を1,000万円とした場合、地震保険ではそれぞれの50%の建物1,500万円、家財500万円までしか保険金額を設定できません。したがって、地震等以外で全損した場合は、受け取る保険金で建物の建て替えや家財の買い替えができても、地震で全損した場合の保険金ではそれができないのです。
しかし、それでも地震保険に入る意味は十分にあります。地震の被災者になると、自宅に住めなくなったり、しばらくの間仕事ができなくなるケースが出てきます。それでも生活をしていくにはお金が必要です。住宅ローンの債務があれば、引き続き返済をしなければなりません。金融機関から住宅ローン返済を一定期間猶予してもらったり、返済期間を延長してもらうなどの対応を受けることができても、返済が免除されるわけではありません。自然災害によって生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対する公的な「被災者生活再建支援制度」も設けられていますが、支援金の額は最大でも300万円です。
このような状況の中で、地震保険から払われる保険金は、生活再建費用や住宅ローンの返済に充当することができます。
災難に遭って精神的に打ちひしがれているとき、お金は心の支えにもなります。それだけに、火災保険に加入する際は、地震保険の建物、家財にもしっかりと保険金額を設定して万が一の事態に備えたいものです。
◆豆知識
なお、火災保険と地震保険に加入する場合の保険期間は、火災保険が1年から最長10年まで、地震保険は1年から最長5年までの契約ができるようになっています。また、保険料の支払い方法には「月払」「年払」「一括払」があります。支払う保険料の総額は、保険期間が長いほど、かつ、まとめて支払うほど安くなるため、家計にゆとりがあれば、長期一括払いにするとよいでしょう。
地震保険には、加入を促すために「地震保険料控除」という税制優遇が設けられており、年間の保険料の一定額まで所得が控除され、所得税・住民税が軽減されます。