賢く住宅ローン返済! 繰り上げ返済を上手に行う方法とは?

返済中の住宅ローンの見直し方法に「繰り上げ返済」があります。「繰り上げ返済」は元金の一部、または全部をまとめて返済することによって、以後の返済負担を大きく軽減することができますが、実施するタイミングややり方によって効果が異なります。また、注意すべき点もあります。

繰り上げ返済は早ければ早いほど、金額は多ければ多いほどメリットは大きい!

住宅ローンをうまく返済する方法として第一に思い浮かぶことは「繰り上げ返済」でしょう。
繰り上げ返済についてまず認識しておきたいことは、一般的に「早ければ早いほど、金額は多ければ多いほど利息削減効果が大きい」ということです。実現の可否はともかく、このことを家族できちんと共有できれば、日頃のお金の使い方が変わります。「家族で協力して、できるだけムダを削減して繰り上げ返済のために使おう」と思えたり、車など大きな買い物をする時にも「少し予算を削って浮いたお金を繰り上げ返済に充てよう」という意識が生まれ、家計が引き締まるはずです。

繰り上げ返済の効果

<事例>

借入金額:3,000万円
金利:2.0%
返済期間:35年
元利均等返済方式
ボーナス返済なし

※繰り上げ返済は期間短縮型

■時期が早いほど効果が大きい

繰り上げ返済額 時期 利息削減効果 期間短縮効果
100万円 2年経過後(25ヶ月目) 約▲90万円 ▲1年7ヶ月
5年経過後(61ヶ月目) 約▲79万円 ▲1年6ヶ月
10年経過後(121ヶ月目) 約▲61万円 ▲1年4ヶ月
20年経過後(241ヶ月目) 約▲32万円 ▲1年1ヶ月
30年経過後(361ヶ月目) 約▲10万円 ▲11ヶ月

同じ100万円でも、2年経過後に行えば、以後、約90万円の利息を払わなくてすみますが、30年経過後だと、わずか10万円しか効果はありません。

■金額が多いほど効果が大きい

繰り上げ返済時期 返済額 利息削減効果 期間短縮効果
5年経過後(61ヶ月目) 50万円 約▲40万円 ▲9ヶ月
100万円 約▲79万円 ▲1年6ヶ月
150万円 約▲114万円 ▲2年2ヶ月
200万円 約▲151万円 ▲2年11ヶ月
250万円 約▲188万円 ▲3年8ヶ月

繰り上げ返済額が250万円と50万円では、利息削減効果の差が約150万円にもなります。このように、元金を減らせば減らすほど、その後に支払うべき利息が減額され、支出が抑えられるのです。

ライフイベントにかかる費用や緊急予備金を確保した上で繰り上げ返済を行う

繰り上げ返済は早ければ早いほど、多ければ多いほど効果が大きいとはいえ、手元の貯蓄が少なくなって予定していたことができなくなっては困ります。繰り上げ返済したお金は戻ってきません。それだけにライフイベントにかかる費用を考えて、慎重に行いたいものです。
具体的には、以下のことを実行していただきたいと思います。

(1)病気やケガなどが原因で一時的に必要になる緊急予備費用(生活費の2〜3ヶ月分)を確保する
(2)今後の子供の教育費のうち、毎年の収入の範囲ではまかないきれない費用(大学入学・進学のための費用など)を見積もり、優先的に積み立てるプランを作る
(3)車や家具・家電などの耐久消費財の購入、リフォーム、家族の旅行・レジャーなど一時的に多額の費用がかかる予定と予算を見積もって、優先的に積み立てるプランを作る

これら(1)〜(3)を実行し、これらのライフプランが実現してもなお、ゆとりのお金が生まれる場合、それを繰り上げ返済の原資と考えます。

子供が小さくまだ塾などの費用がかからない時期や、子供が成長したら妻も仕事を始めて収入を得る場合、定年前に子供が自立する場合などは、繰り上げ返済の原資を生み出しやすいでしょう。これらを活用して「できるだけ早く、できるだけ多く」繰り上げ返済をするのです。

なお、住宅ローンの完済年齢が定年年齢を超えている場合は、定年時のローン残高と退職金の予定額を確認しておく必要があります。退職金を繰り上げ返済に使ってもローン残高がなくならない場合、あるいは、完済できても、残る退職金が少なくて老後の生活資金が不安になりそうな場合は、今のうちから、思い描いたライフプランを多少犠牲にするか、妻の収入を増やす手立てを講じるなどして、定年までにできるだけ繰り上げ返済を実行し、元金を少なくしていくようにする方がいいでしょう。

繰り上げ返済は年末に行うより、年始に行う方がいい!?

テクニカルな話になりますが、住宅ローン減税制度の適用を受けている間は、繰り上げ返済を年末に行うよりも年始に行った方がお得になります。
住宅ローン減税は、最初の10年の間、年末時点のローン残高の1%相当の所得税(および住民税の一部)が還付される制度です。そのため、同額の繰り上げ返済を行うなら、年末に行うより年明けに行った方が年末時点のローン残高が多い分、還付される税金が多くなってお得なのです。
ただ、繰り上げ返済を延期した分だけ利息の支払い額が多くなります。たとえば、12月に100万円の繰り上げ返済をするのと、1月に同額の繰り上げ返済をするのとでは、1月に行う方が税金の面では1万円お得ですが、1ヶ月延期した分だけ少し利息負担が多くなります。

繰り上げ返済の結果、返済期間が10年未満になると、住宅ローン減税が打ち切られる!

現在の住宅ローン減税制度の適用期間は、返済を始めてから10年間です。繰り上げ返済を行った結果、返済開始から返済終了までの期間が10年を切ると、減税の適用を受けられなくなるので注意が必要です。
たとえば、借入金額1,500万円、金利2.0%、返済期間12年、元利均等返済方式、ボーナス返済なしで、6年経過後に300万円の繰り上げ返済をすると、返済期間が2年4ヶ月短縮され、返済期間は10年未満となり、その年から住宅ローン減税制度の適用を受けられなくなります。
このような場合には、「返済額軽減型」の繰り上げ返済を検討しましょう。繰り上げ返済の方法には、以後の毎月返済額が変わらない代わりに返済期間が短くなる「期間短縮型」と、返済期間が変わらずに毎月返済額が少なくなる「返済額軽減型」の2種類があります。
利息削減効果がより大きくなる「期間短縮型」を使うのが一般的ですが、場合によっては「返済額軽減型」の活用も検討しましょう。

繰り上げ返済:「期間短縮型」と「返済額軽減型」の違い

<前提条件>

借入金額:1,500万円
金利:2.0%
返済期間:12年
元利均等返済
ボーナス返済なし
繰り上げ返済:6年経過後(61ヶ月目)に300万円

? 毎月返済額 返済額軽減効果 返済期間 期間短縮効果 利息削減効果
繰り上げ返済なし 117,252円 12年 ? ?
期間短縮型 117,252円 9年8ヶ月 ▲2年4ヶ月 ▲約30万円
返済額軽減型 73,001円 ▲44,251円 12年 ▲約19万円

「返済額軽減型」の繰り上げ返済は、今後の家計が厳しくなるようなときの活用も効果的です。
たとえば、今後しばらくの間、毎年の子供の教育費がこれまでよりもかかるとき、子供が生まれて何年か妻が働けなくなるときなど、家計にゆとりがなくなる可能性があるとあらかじめわかっていて、なおかつ、余裕資金がある場合、繰り上げ返済をして毎月の返済額を少なくしておくのです。

住宅ローンを賢く返済するには、まず、夫婦でライフプランを考え、将来のライフイベントの費用は確保しつつ、ゆとりのお金があれば「できるだけ早く、できるだけ多く」繰り上げ返済することがポイントです。その上で、家計の状況に適したタイミングや繰り上げ返済の方式を選択するようにしましょう。

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(最終更新日:2019.10.05)
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