前回、住宅ローンを選ぶときには、金利だけでなく、諸費用にも目を向けてしっかりと比較検討した方がいいという話をしました。そして、住宅ローンに付随する諸費用の種類とその内容をご紹介し、特に金融機関によって違いのある諸費用は、「事務手数料」、「保証料」、「団体信用生命保険特約料」の3つであることを述べました。 今回は、その3つの諸費用に配慮した住宅ローンの選び方を具体的にご紹介したいと思います。
前回記事はこちら:住宅ローン選びのポイントは、金利だけではなく“諸費用”。その種類と内容を解説
住宅ローンは、金融機関の前に金利タイプを選ぶ!
住宅ローンのおおよその借入額が決まったら、金融機関を決める前に、まずは「金利タイプ」を絞り込みます。金利タイプには、「変動金利(半年型)」と「当初固定金利型」、「全期固定金利型」の3種類がありますが、それぞれの特徴を踏まえ、金利動向や今後のライフプランに応じて決定します。もちろん、シミュレーションの結果によっては、あらためて金利タイプを変更しても構いません。
金利上昇のリスクを排除し、毎月の返済額を固定したいなら、全期固定金利型が適しています。特に借り入れるときの市場金利が低く、将来は金利が上昇すると予想される場合は、市場金利が上昇しても返済額がアップしないので、ライフプランを変更しなくてすみます。
一方、家計にゆとりがあり、金利が上昇して返済額がアップしても繰上返済などをすることで十分に対応できそうな場合は、変動金利(半年型)や当初固定金利型でも構いません。ただし、長期に渡る住宅ローンの返済は、目先の金利や返済額の低さだけで決めず、将来の子供の教育費負担や夫婦の老後資金の準備に、返済額のアップが影響を与えないように配慮することが肝要です。
いずれにしても、まずは金利タイプを決めます。当初固定金利型の場合は、固定金利の期間も2年なのか、3年なのか、あるいは5年、10年なのかを決定します。
同じ金利タイプで複数の金融機関の商品を比較する!
金利タイプを決めたあとに、その金利タイプを住宅ローン商品のラインナップに持つ金融機関をいくつか選びます。
金融機関 | 取り扱い金利タイプ | 諸費用等のおもな特徴 |
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メガバンク 地方銀行 信用金庫 JAバンク など |
変動金利(半年型) 当初固定金利型 全期固定金利型 |
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ネット銀行 流通系の銀行 など |
変動金利(半年型) 当初固定金利型 全期固定金利型 |
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【フラット35】を取り扱っている金融機関 (メガバンク、地方銀行、信用金庫、JAバンク、ノンバンクなど) |
全期固定金利型 |
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住宅ローン商品を提供している金融機関は、その特徴によって大きく3種類に分けることができます。
ひとつは昔からある金融機関で、メガバンク、地方銀行、信用金庫、JAバンクなどはそれぞれ独自の住宅ローン商品を販売しています。住まいや職場の近所にあり、給与振込口座や生活資金口座を持っている方も多く、馴染みの深い金融機関です。これらの金融機関が販売する住宅ローンは、一般的に保証料がかかります。団体信用生命保険特約料もかかるのが特徴ですが、中にはかからずに金利に含まれている金融機関もあります。
近年になって新しく現れたネット銀行や流通系の銀行も住宅ローンを販売しています。これらの住宅ローンの特徴は、一般的に保証料も団体信用生命保険特約料もかからないことです。
【フラット35】は、金融機関ではなく住宅ローン商品です。この住宅ローンは、独立行政法人住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して提供している商品で、メガバンクや地方銀行、JAバンク、ノンバンクなど様々な金融機関が取り扱っています。【フラット35】の特徴は、保証料はかかりませんが、団体信用生命保険特約料がかかります。なお、【フラット35】は、同じ商品でも取り扱っている金融機関によって金利や事務手数料が異なることも選ぶ上で注意すべき点のひとつです。
これらの中から気になる金融機関をいくつか選択します。ポイントは金利の低さ、諸費用の低さ、その他特典などがあれば、それらも参考にしてピックアップします。
具体的にシミュレーションをして選ぶ!
実際に、3つの金融機関の住宅ローンを、諸費用含めてシミュレーションして比較してみましょう。
<事例>
借入額:3,000万円
返済期間:35年
金利タイプ:全期固定金利型
元利均等返済・ボーナス返済なし
<シミュレーション:3つの金融機関の比較>
金融機関 | 金利 | 事務手数料(A) | 保証料(B) | 団信特約料(C) | 総返済額(D) | 総支払額(A+B+C+D) |
メガバンクA | 2.09% | 定額タイプ:3万2,400円 | 約60万円 | 0円 | 4,232万3,153円 | 4,295万5,553円 |
ネット銀行B | 1.942% | 定額タイプ:4万3,200円 | 0円 | 0円 | 4,136万4,775円 | 4,140万7,975円 |
【フラット35】C | 1.47% | 定率タイプ(2.16%):64万8,000円 | 0円 | 207万9,800円 | 3,839万4,080円 | 4,112万1,880円 |
上の事例の場合、Cの金融機関が提供している【フラット35】が、諸費用込みの総支払額では最も負担が小さく、有利だということがわかります。ただし、返済中に繰上返済などをする場合には結果が異なる場合があります。たとえば、借り入れたあとに毎年100万円の繰上返済を10年間行う場合、Bの総支払額は3,592万9,262円(事務手数料:4万3,200円、総返済額:3,588万6,062円)ですが、Cの住宅ローンの総支払額は3,618万5,973円(事務手数料:64万8,000円、団信特約料:111万1,600円、総返済額:3,442万6,373円)となり、Bの方が有利になってしまいます。
以上のように、住宅ローンは金利水準の高低だけで選ぶのではなく、おもな諸費用も含めて比較検討する必要があります。その上で、その他の特典や手続きのしやすさなどを加味して決めるのがよいでしょう。
住宅ローンを借りる金融機関は、ハウスメーカーや工務店、マンションデベロッパーから紹介された中から選ばないといけないわけではありません。住宅ローンを借りる当事者は自分なのですから、自分にとって有利で気に入った金融機関を自分で探せばよいのです。借りたあとには長い返済が控えています。自分でじっくり検討し、納得できる金融機関、住宅ローンを選択してください。
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(最終更新日:2019.10.05)