住宅ローンというと、とかく“金利”ばかりに話題が集まりがちですが、実際に住宅ローンを選ぶときには、“諸費用”にも目を向ける必要があります。住宅ローンを組む際にかかる諸費用にはどのようなものがあるのかをまずは把握し、その中でも住宅ローンを選ぶときに配慮すべき諸費用について理解しましょう。
住宅ローン選びの検討材料に加えるべき主な“諸費用”は3つ
住宅ローンを選ぶとき、金利タイプを「固定にするか変動にするか」と、金利水準が「高いか低いか」ということばかりが気になってしまいがちです。しかし、金利さえ有利なものを選べばいいというわけではありません。
住宅ローンには諸費用もかかります。低い金利の住宅ローンを選んでも、諸費用を含めて考えるとトータルでは不利になる場合があるので注意が必要です。
住宅ローンに付随する主な諸費用の種類とその内容は次の通りです。
費目 | 内容 |
---|---|
印紙税 | 金銭消費貸借契約証書等の契約書類に貼付する収入印紙代 |
登録免許税 | 不動産を担保にして融資を受ける際に行う抵当権設定登記にかかる支払う税金 |
登記手数料 | 抵当権設定登記は一般的に司法書士に手続きを依頼して行うことが多く、司法書士に支払う手数料 |
事務手数料 | ローンを借りるときに金融機関に支払う手数料 |
保証料 | 連帯保証人の代わりに保証会社の信用保証をつけるために支払う費用 |
団体信用生命保険特約料 | 住宅ローンの返済中に、ローン契約者が死亡または高度障害になった場合、ローン契約者に代わって生命保険会社がその時点のローン残高を支払い、ローンが完済となる制度の特約料 |
この中で、住宅ローンを組む金融機関によって特に大きな違いがあるのは、「事務手数料」・「保証料」・「団体信用生命保険特約料」の3つです。
これらは、金融機関によってかかる場合やかからない場合があり、また、かかる場合も料金体系が異なるため、住宅ローンを選ぶときには、金利とともによく比較検討をする必要があります。
事務手数料には「定額タイプ」と「定率タイプ」がある!
住宅ローンを借りる際に金融機関に支払う事務手数料には、「定額タイプ」と「定率タイプ」があります。
定額タイプは、いくら借りても料金が変わりません。消費税抜きで、3万円、4万円、5万円、10万円などと、金融機関がそれぞれ独自に決めています。
一方、定率タイプは、借入金額に一定の割合を乗じて求めます。これも金融機関ごとに、消費税抜きで借入金額×1%、借入金額×2%などと決められています。
同じ金額を借りる場合でも、定額タイプと定率タイプでは事務手数料の金額がまったく異なります。たとえば、借入金額が3,000万円の場合、定額タイプなら3万円(消費税抜き)ですむところ、定率タイプ(2%)なら60万円(消費税抜き)もかかることになります。
一見、定率タイプの方が高い料金なので不利なように思えますが、定率タイプを採用している金融機関は、定額タイプよりも住宅ローン金利を低く設定しています。つまり、一般的に定額タイプは最初にかかる負担を小さくする分毎月の返済額を高くし、定率タイプは最初の負担を重くして返済中の負担を軽くしているのです。
同じ金融機関で両方のタイプを提供しているところもあります。事務手数料は、基本的には自己資金で負担するものなので、定額タイプは自己資金の少ない人向け、定率タイプは自己資金が多い人向けなどの使い分けが考えられます。
保証料は、かかる金融機関とかからない金融機関がある!
保証料は、住宅ローンを借りるときに、連帯保証人の代わりに信用保証会社の保証をつけるために支払う費用です。住宅ローンを貸し出す金融機関の貸し倒れリスクをなくすためのもので、住宅ローンを借りる人たちを守るためのものではありません。
保証料のかかる住宅ローンは、メガバンク、地銀、信用金庫など一般的な銀行で多く見られます。支払方法には、最初に一括で支払うタイプと、住宅ローン金利に0.2%程度上乗せして毎月の返済額とともに支払うタイプの2種類があります。
最初に一括で支払うタイプの保証料水準は、金融機関によって異なりますが、大体の目安は、借入金額1,000万円、返済期間35年のときに20万円程度です。3,000万円を35年返済で借りる場合、約60万円かかることになりますから、かなりの金額になります。
一方で、通常なら負担が重いこの保証料を「無料!」と謳って、諸費用がかららないことを“ウリ”にしている金融機関もあります。ソニー銀行、住信SBIネット銀行、新生銀行、イオン銀行などが代表的です。
また、メガバンクや地銀、信用金庫、ノンバンクなど、たくさんの金融機関が取り扱っている【フラット35】も保証料がかからないことが大きな特徴となっています。
【フラット35】の団体信用生命保険は、別途特約料がかかる!
団体信用生命保険(通称「団信」)は、住宅ローンの返済中に死亡・高度障害状態になったとき、住宅ローン残高と同額の保険金が金融機関に支払われる生命保険です。この保険金で住宅ローン残高がなくなるため、住宅ローンを借りた人の家族は、その後返済負担のないマイホームを相続することができて助かります。住宅ローンを貸す金融機関にとっても、住宅ローン契約者が死亡・高度障害状態になったときの貸し倒れを防ぐことができます。
ほとんどの民間金融機関は、団信加入を住宅ローンの借入条件にしています。つまり、健康状態が悪く団信に加入できない人は住宅ローンを借りることができません。しかし、加入できる健康状態でさえあれば、加入しても、別途特約料を負担する必要はありません。
なお、近年では、死亡・高度障害よりも広い範囲の保障にも対応した団信も提供されています。たとえば、がん・急性心筋梗塞・脳卒中にも対応した「3大疾病保障付団信」や、生活習慣病にまで保障範囲を広げた「7大疾病保障付団信」、「8大疾病保障付団信」などです。これら保障範囲の広い団信に加入する場合は、0.3%程度住宅ローン金利が上乗せになったり、別途特約料が必要になるケースが多いようです。
一方で、【フラット35】は、団信への加入が任意となっており、加入する場合は特約料を別途支払わなければなりません。毎年一度、住宅ローン残高に応じて支払う必要があります。加入が任意となっているメリットは、過去の病歴等で団信に入ることができない人も住宅ローンを借りることができることや、加入している一般の生命保険の死亡・高度障害保険金で万が一のときに住宅ローン残高が整理できる場合は、団信に加入しない選択ができることなどがあります。
住宅金融支援機構のサイトでは、特約料をシミュレーションすることができます。
ちなみに、借入金額3,000万円、返済35年、金利1.6%、元利均等返済の場合の支払特約料総額は、約210万円になります(3大疾病保障なし、デュエット(夫婦連生団信)利用なし)。ただし、繰上返済や借り換えを行った場合は、その後の特約料も変わるのでご注意ください。
その他の費用もご確認を!
「印紙税」・「登録免許税」は税金なので、基本的には住宅ローンを借りる金融機関にかかわらず同額です。ただし、「登記手数料」は司法書士や借り入れ時の状況によって10~20万円程度異なる場合があります。具体的な金額は司法書士に確認をするようにしましょう。司法書士は、不動産事業者や金融機関に指定される場合が多いですが、自分で探したり金額の調整を交渉したりするのも価値があるかもしれません。
以上のように、住宅ローンに付随する諸費用は、金融機関やローン商品によってかかる場合とかからない場合があり、かかる場合はかかり方や支払方法が異なります。住宅ローンは、何と言ってもバカにならない金額ですので、金利だけに注目するのではなく、諸費用にも十分配慮して選んでほしいものです。
→続編の「3つの諸費用(事務手数料、保証料、団体信用生命保険特約料)に配慮した住宅ローンの選び方」へ
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(最終更新日:2019.10.05)