収入合算をして住宅ローンを借りるとき、申し込み方には3つの形があります。「連帯債務」「連帯保証」「ペアローン」のどれを選ぶかによって、返済の責任や住宅ローン控除、団体信用生命保険の適用などが違ってきます。ここでは、それぞれの違いと注意点をお伝えしていきます。
そもそも収入合算とは?
まずは、収入合算がどういうものか、その意味や条件をおさえておきましょう。
収入合算とは?
住宅ローンの借入可能額は、収入が基準になり決定されます。とはいえ、借り入れする本人の収入だけでは、借入希望額に満たないこともあるでしょう。
このような場合には、配偶者など(※)の収入を加えた年収で、借入可能額を計算することができます。これを「収入合算」といいます。たとえば、夫の収入に合算者である妻の収入を足して借入可能額を増やすといったイメージです。
いくらまで合算できる?
収入合算できる金額は、金融機関ごとに違いがあり、本人の収入の2分の1まで、合算者の収入の2分の1まで、合算者の収入全部などのように決められています。
正社員としての収入が基本ですが、安定したパート収入なども合算できる場合もあります。条件や審査のポイントは、金融機関によってさまざまです。どこまで合算してもらえるのか、あらかじめ確認するようにしましょう。
<図表1 収入合算すると借入金額はどう増える?>
年収:夫500万円 妻300万円のケース
・審査金利3% 借入期間30年 元利均等返済 返済負担率35%までで計算
・妻の年収の2分の1まで合算可の場合で計算
・住宅ローン以外のその他の借り入れは無いものとします。
収入合算には「連帯債務」と「連帯保証」の2つがある
よく似た言葉ですが、2つの性質は大きく違います。特徴をしっかり確認していきましょう。
いずれも収入を合算して借り入れをしますが、借り入れそのものは1本の住宅ローンです。夫と妻のどちらの名義で借りるかは、それぞれの年収や働き方を考えて決めましょう。
ここでは、債務者の夫が、妻の収入を合算して借り入れをするケースで説明していきます。
「連帯債務」とは?
1つの債務に対して、夫も妻もそれぞれが全額の債務を負うのが連帯債務です。たとえば、夫が主たる債務者で3,000万円の借り入れをしたのなら、連帯債務者の妻も3,000万円の返済義務を負い、共に返済することになります。
妻も夫と同じ責任を負っているため、金融機関からは夫に対するのと同様に返済を求められます。連帯債務の形で申し込みができる代表的な住宅ローンは【フラット35】です。一部の民間の住宅ローンでも連帯債務の取り扱いはありますが、数は多くありません。
「連帯保証」とは?
夫が債務者で妻が連帯保証人だとすると、妻は夫が返済しなかった場合に、夫に返済能力があるか否かにかかわらず、夫に代わり返済する責任を負います。
ただし、金融機関に対しては、夫のみが債務者です。連帯債務が夫婦2人の住宅ローンであるのに対して、連帯保証はあくまでも夫1人の住宅ローンです。
民間の金融機関では、多くが連帯保証のみの取り扱いになっています。連帯債務で借り入れしたい場合は、取り扱いのある金融機関を前もって調べておきましょう。
<図表2 連帯債務と連帯保証の違い>
夫婦で別々「ペアローン」
「ペアローン」は、夫婦それぞれが別の住宅ローンを組むものです。
つまり、夫も妻もそれぞれ本人が債務者です。「ペアローン」の場合、妻は夫の借り入れに対し、また夫は妻の借り入れに対して、お互いが連帯保証人になることが求められ、本人が返済できない場合には返済の責任を負います。
どちらか一方の名義1本で借り入れする「連帯債務」や「連帯保証」の場合と違い、住宅ローンは2本になります。そのため、通常住宅ローンの事務手数料や契約の印紙代はそれぞれにかかります。
<図表3 ペアローンのイメージ>
【例】夫婦で3,000万円借り入れするケース
では、つぎに「連帯債務」「連帯保証」「ペアローン」それぞれにおいて、住宅ローン控除や団体信用生命保険の適用がどうなるのかをお伝えしていきます。
住宅ローン控除はどうなる?
夫婦で働いている場合、2人とも住宅ローン控除を受けたいというケースが多いでしょう。
「連帯債務」「連帯保証」「ペアローン」、それぞれ住宅ローン控除は適用されるのでしょうか? 後になって「しまった」とならないよう仕組みを知っておきましょう。
連帯債務の場合
住宅ローン控除を受けるには、自身が債務者になっている必要があります。連帯債務は夫も妻も債務者なので、2人とも住宅ローン控除を受けることができます。
借入金額のうち、いくらずつ返済を負担するかは、夫婦内で自由に決めることができます。ただし、住宅ローン控除の対象となる金額の割合は、最初に登記する持分割合によって決まってしまうため注意が必要です。
たとえば、物件価格が4,000万円、このうち頭金が800万円(夫500万円、妻300万円)で、住宅ローンの借入金額が3,200万円だとします。仮に、持分割合を夫2分の1、妻2分の1として登記した場合、それぞれが購入するために負担した額は2,000万円ずつです。
夫は頭金500万円を出しているので、住宅ローン負担分は1,500万円。妻は頭金300万円なので、住宅ローン負担分は1,700万円です。
つまり、3,200万円のうち、夫は約46.9%(1500万円÷3,200万円)、妻は約53.1%(1,700万円÷3,200万円)の返済負担をしていることになります。
それぞれの住宅ローン控除の対象額は、年末の住宅ローン残高にこれら負担割合を掛けて算出した額となります。このように、最初の登記割合が大きなポイントになってくることがわかります。
以下、図に整理しました。確認してみましょう。
<図表4>
連帯保証の場合
連帯保証の場合、債務者は夫のみで、妻は夫の連帯保証人にすぎません。つまり、妻自身に借り入れがあるわけではないため、妻は住宅ローン控除を受けることができません。
2人とも住宅ローン控除を受けたいと考えている人は、連帯保証では債務者本人しか受けられないので、連帯債務の形になっているか、申し込み時にしっかり確認しましょう。
ペアローンの場合
ペアローンの場合は、夫婦それぞれが債務者です。言うまでもなく、夫・妻共に住宅ローン控除を受けることができます。控除額はそれぞれの年末の住宅ローン残高をもとに計算されます。
団体信用生命保険はどうなる?
連帯債務・連帯保証の場合
団体信用生命保険は、一般的に「主たる債務者」が保険の対象です。主たる債務者が夫の場合、妻に万一のことがあったとしても、保険金はおりず、夫は残りの返済を続けることになります。
妻の収入があってこそ返済できていたという場合には、返済が厳しくなることも考えられます。団体信用生命保険の対象にならない人には、他の生命保険をかけておくなどの備えも検討しましょう。
このような事態に備える手段として、【フラット35】にかかる機構団体信用生命保険特約制度の「デュエット(夫婦連生団信)」(※)のように、夫婦2人共対象となる団体信用生命保険もあります。デュエットの特約料は、2人分の保障が受けられるため、1人加入の場合の約1.56倍と高めですが、夫婦のどちらかに万一のことがあれば、借入残高はゼロになるので安心感はあるでしょう。
一部の民間金融機関でも、同様の保険を取り扱っています。
ペアローンの場合
ペアローンは、夫も妻も債務者本人として、それぞれ団体信用生命保険に加入します。そのため、妻に万一のことがあったときには、妻の住宅ローンは全額完済されます。また逆のケースも同じです。
ただし、遺された一方の人の債務はそのまま残ります。ここまで「連帯債務」「連帯保証」「ペアローン」の違いは理解いただけましたか?要点を簡単に図表にまとめてみました。
<図表5 「連帯債務」「連帯保証」「ペアローン」の性質>
夫婦で借り入れ、その他の注意ポイントは?
持分の登記は正確に
夫婦で住宅ローンを借りたときは、マイホームは2人の「共有」になります。「共有名義」といって、お互いの「持分」を登記することになります。
注意したいのは、持分の割合です。それぞれが出した頭金や住宅ローンの負担額に見合った割合で、正しく登記するようにしましょう。
後になって、「夫から妻、または妻から夫への贈与があった」とみなされないためです。よくわからないときは、税理士などの専門家に確認するようにしましょう。
将来の収入は減らないか、十分な検討を
収入合算で借り入れする場合、一番困るのは合算者の収入が減ってしまうことです。たとえば、正社員だった妻が、育児のため休職や退職するといったケースなどです。ずっと働くつもりでいても、やむを得ず働けなくこともあるでしょう。
夫1人の収入でも返済できるのか、働き続けられる環境にあるのかなど、先を見越して考えることが大事です。その上で、借り入れする金額を決めましょう。
お互いの働き方と協力がミソ
「連帯債務」「連帯保証」「ペアローン」3つの違いを整理できましたか?どれがベストかは、将来に渡る2人の働き方で決まります。まずは、ここを話し合うところから始めてみてください。住宅ローンの返済は長期に渡るので、お互いの協力と思いやりの心も忘れずに。
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(最終更新日:2019.10.05)